2019 Fiscal Year Research-status Report
初等中等教育における管理職とジェンダーに関する研究――教頭の職位に着目して
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19K02578
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Research Institution | National Women's Education Center |
Principal Investigator |
飯島 絵理 独立行政法人国立女性教育会館, 研究国際室, 研究員 (70415355)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
朴木 佳緒留 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 名誉教授 (60106010)
野依 智子 福岡女子大学, 国際文理学部, 教授 (40467882)
中野 洋惠 独立行政法人国立女性教育会館, 事業課, 客員研究員 (60155786)
島 直子 独立行政法人国立女性教育会館, 研究国際室, 研究員 (90630856)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ジェンダー / 学校教育 / 男女共同参画 / 女性管理職 / 女性のキャリア形成 / 教員 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、初等中等教育において、教員全体に占める女性教員の割合に比べ、管理職に占める女性の割合はかなり低く、意思決定過程への参画に男女格差があることや、児童生徒に対して不均衡なリーダーモデルを提供していること等を問題の所在とする。これらの問題に対して、教員のキャリア形成のプロセスを辿り、教員の管理職志向を促進/阻害する環境要因や転機、態度・姿勢等について、ジェンダーの視点から検討するとともに、女性の管理職登用が促進され得る学校運営や人材育成等、教育組織の在り方について考究することを目的とする。 本研究に先立って実施した小中学校の教員を対象とした量的調査では、管理職を志向する女性教員の割合は極めて低く、その要因として、仕事と家事・育児の両立困難や、力量不足と認識していることなどが明らかになった。一方、特に教頭の勤務時間は長く、教頭の働き方や仕事のあり方が、女性教員の管理職志向と深くかかわっている可能性が示唆されたため、教頭の職位に着目することとした。 1年目には、これまでの量的・質的調査を踏まえ、女性教員の管理職志向を促進/阻害する環境要因等について、仮説を立てるための検討を行った。その上で、全国公立小・中学校女性校長会の協力により、各都道府県の女性校長会等の取組について情報収集を行うとともに、了承を得た2地域において、女性管理職や管理職候補等を対象とした4回のグループインタビューを実施した。また、これらの結果を踏まえ、環境要因や研究の視座・焦点等の再検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
教員を対象とした質的調査について、研究開始当初は個人インタビューのみを考えていたが、地域性や職位ごとの現状・課題等をより効果的に掘り起こし理解するために、個人インタビューに先立ち、グループインタビューを行うことにした。了承を得られた2つの地域において、小中学校長(2グループ)、教頭・主幹教諭・指導主事、養護教諭出身の校長・教頭の4回のグループインタビューを実施した(すべて女性・計17名)。 グループインタビューでは、女性教員が育児や介護等の家庭生活の役割を一手に担いつつ、教員としてのキャリアを形成するために奮闘していることや、管理職志向は強くないものの上司に強く勧められたことが管理職になるきっかけになったことなどが多く語られ、量的調査の結果を裏づけるような実態が明らかになった。一方で、女性が家庭生活の役割を担うことを当然だと受け止めていたり、女性の管理職率の低さについて問題意識を持っていなかったりといった課題も浮き彫りになった。また、養護教諭出身の管理職のインタビューからは、これからの学校現場に必要であると考えられるリーダーの多様性を阻む様々な環境要因があることも示唆された。 研究代表者は、本科研費研究と同時に、本務の調査研究事業としても、学校教育におけるジェンダー平等を進めるための研究を進めており、先進的な取組を行う教育委員会や学校等のインタビュー調査を実施している。令和元年度には、研究成果をもとにした冊子『学校における女性管理職登用の促進に向けて――なぜ少ないか、なぜ増やすことが必要か、促進のために何ができるか』を作成した。これらの過程で得られた知見を本科研費研究にも活かすことで、学校教育の分野の現状・課題等について、より俯瞰して考察を行うことが可能となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、個人を焦点とするインタビュー調査および教育委員会等の組織を焦点とするインタビュー調査を進めるとともに、量的調査の再分析を行う予定である。 コロナ禍により、インタビュー調査が中断されることとなり、今後も、調査対象である学校現場が混乱していること等から、今年度の調査が予定通りには遂行されないことが予想される。インタビュー対象者の選定方法や研究全体の方向性の再検討を行い、柔軟な対応を工夫しつつ、研究を進めたい。
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Causes of Carryover |
質的調査のためにかかる旅費が、調査地の場所や実施数、同行する人数によって大きく前後する可能性があるため、初年度に購入予定としていたモバイルPC等の購入を控えて状況を見ることとした。また、所属が全国に広がる研究代表者・分担者・協力者による研究会を、オンラインによって複数回開催にしたことにより、旅費や会場借料等の経費が抑えられた。次年度には、引き続き計画的に質的調査や研究会を実施するとともに、状況を見て研究に必要な設備備品の購入にも使用したい。
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Research Products
(7 results)