2019 Fiscal Year Research-status Report
熟達保育者の個と集団への関わりの可視化と保育者の育成に向けた教材開発
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19K02607
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Research Institution | Sapporp International Junior College |
Principal Investigator |
岡部 祐子 札幌国際大学短期大学部, 幼児教育保育学科, 准教授 (80597899)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中野 茂 札幌国際大学, 人文学部, 教授 (90183516)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 保育の質 / 個と集団の育ち / 熟達保育者の経験知 / 保育者育成の教材開発 / VideoInteractionGuidance |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、質の高い保育を実践する力、中でも保育者の個と集団の育ちを支える力を培うことを目的に、①熟達保育者らの人権を尊重し成長を見通した過不足のない援助を可視化した保育者育成のための教材を作成し、その教材の効果の検証のために②Video Interaction Guidance(Kennedy, et al, 2011) (以下VIG)の実施を計画している。 2019年度上半期は、教材作成にむけた調査・資料収集・資料の整理と分析に注力した。予備調査として、研究計画全般にわたる研究デザイン・方法論・必要機材について、文献研究・現場踏査・スーパーバイズ・技術指導によって検討を重ねた。 下半期は(1)熟達保育者の環境構成や個と集団へのポジティブな関わりを撮影するとともに、映像を見ながら保育の意図について確認した。さらに対象である熟達保育者へのインタビュー調査を実施し(2)熟達保育者が有する高次の中心概念を半構造化面接調査およびSCAT分析によって明らかにした。その結果、対象者は「園の理念・方針」と「保育者の中心概念」を土台に、「2歳児の理解」と「保育するうえで大切にしたいこと」を枠組みとして、「目前の子どもの見取り」と「保育の目標・計画」の往還によって「2歳児クラスの遊びと生活」をデザインしていることがわかった。収集した映像データは、(1)(2)の調査結果やピアレビューとスーパーバイズを行うとともに、施設長や対象者および子どもの保護者の了承を得て編集がなされた。現在、目的②VIGへの適用手続きについて検討を重ねている途上にある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要で述べたように、2019年度の調査の対象者は2歳児クラスの担任であった。研究協力園は、幼稚園から移行した認定こども園で、その初年次に展開された熟達保育者の保育映像は、非常に価値のある教材となった。想定した通り熟達保育者の保育は、2歳児の人権・個の育ちが大切にされるとともに、子どもの主体的な遊びや生活を引き出す環境構成がなされていた。また、わらべ歌でのリズム同期や絵本等の児童文化を共有していくことによって緩やかな集団形成がなされていることは十分に伝わってくる。 その一方、本研究のテーマである「個」と「集団」への関わり、なかでも「集団を形成していくプロセス」は、年齢的なことからからも十分に抽出できなかった。 2020年度は、2019年度の教材によるVIGの調査を進めながら、3歳以上児のクラスで映像記録・保育の意図の聞き取り・インタビュー調査を進める必要が生じている。2019年度計画した事業は進捗したと言えるが、上記の様な補足の調査の必要性が出てきたことから、やや遅れているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
当初2020年度は、①2019年度の研究成果を発表すること、②収集したデータと修正メッセージの検討を行い教材の完成を目指すこと、③完成した教材を用いたVIGを実施し効果の検証を行うことを計画していた。さらに2019年度の調査結果から熟達保育者の3歳以上児への保育映像も収集する必要性が生じている。 一方、新型コロナ感染拡大の影響によって、保育現場での調査、学生や保育者への対面でのVIGの実施、さらなる保育映像収集が難しい状況にある。現時点で可能な方法を探り研究を進捗していくことが求められる。 幸い2019年度に様々な倫理的な課題をクリアし完成した映像の教材は、手続きに則って送付・共有できる状態にある。研究の根幹・枠組みを踏まえながら柔軟に実施しデータ収集に努めるつもりである。
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Causes of Carryover |
2~3月の間に、VIGの手法による第一人者である研究者を訪問し、オンラインでのやり取りができないデータ等の開示や、具体的な手法についてレクチャーを受ける予定であった。しかし、コロナ感染拡大の影響から、関東圏の大学は早くから立ち入り禁止等の対応がとられ指導がかなわなかった。 また、3歳以上児のクラスでの撮影を準備していたが、札幌圏は、全国に先駆けて、休園の措置が取られ、見通しが立たなかった。 上記2つの理由から、次年度使用額が生じた。
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