2020 Fiscal Year Research-status Report
戦時中の文部省推薦図書(絵本)にみる幼児教育観―皇国民としての道徳心をめぐって―
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19K02608
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Research Institution | Osaka University of Arts Junior College |
Principal Investigator |
森岡 伸枝 大阪芸術大学短期大学部, その他部局, 准教授 (20448187)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 文部省推薦図書委員 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は昨年度の研究内容を進展させるために、2019年度まで収集した資料を基に文部省推薦絵本の指定図書のリストアップを昭和14年から昭和18年までを対象として行い、その著者や出版元、価格などをみてきた。また、その一方で、文部省推薦図書委員のメンバーをできる限り明らかにし、それぞれの委員の属性や論文をいくつか調べ、それぞれの思考の特徴をつかんでいった。そして、文部省推薦絵本の中身の検討も、手元にあるものに限定して着手しつつある状況である。 その結果、文部省推薦図書推薦制度が学校教育や社会教育政策と関連しながら進められており、子どもの理解や発達にふさわしく、家庭への経済負担を書けないような絵本を出版できるように国家が働きかけていることが分かった。また、それと同時に学校の教員も動員され、子どもたちが推薦絵本の何を読もうとしていたのかをきっちり調査していたことも明らかとなった。ゆえに文部省推薦図書は、単なる図書出版の政策ではなく、学校・家庭・図書館・出版社に関係する者たちが政策に協力してすすめられた国策であったことがわかった。
ただ、昨年度からの新型コロナウィルス感染症の流行ゆえ、調査研究についてはほぼ全くと言っていいほどにできにくい状況にあるのが事実である。調査研究に行くことで新たな知見を得たり、アイデアを得たりできることも多いので、各地に残っている絵本の調査研究を通じて人間を理解しようとする私にとっては、とても苦戦した一年であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
昨年度からの新型コロナウィルス感染症の流行により、研究調査ができにくい状況となった。たとえば予定していた調査先が蔓延防止策の一環で休館となったりと、絵本を調査していくことに制限がかかってしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
状況が改善次第、すぐに調査に行けるように、これまで収集した資料の分類などをして準備をしている状況である。今年度に関しても、府県をまたぐ移動はできにくい状況にあったので、この状況の改善を待っている状況である。また、アメリカでの調査研究も考えていたので、その点も海外情勢をみながら準備をしたいと考えている。以上のことから、まずは現実的には、まずは国内移動の可能性を伺っていきたい。たとえば国内のどこまでの移動ができるのか、研究倫理あるいは職業倫理に照らし合わせながら慎重に考えたいと思う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の流行ゆえ、調査出張ができず、旅費がほぼ手つかずであったため、次年度の使用額が生じることになった。よって次年度に調査出張が再開できると予定し、そちらに旅費として使用させていただきたい。
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