2021 Fiscal Year Research-status Report
戦時中の文部省推薦図書(絵本)にみる幼児教育観―皇国民としての道徳心をめぐって―
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19K02608
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Research Institution | Osaka University of Arts Junior College |
Principal Investigator |
森岡 伸枝 大阪芸術大学短期大学部, その他部局, 准教授 (20448187)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 戦時 / 幼児 / 絵本 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は文部省図書推薦事業に選定された絵本の内容を分析することにし、文章に関するキーワードを分析したり、また絵の特徴を一覧表に作成していった。その結果、昭和14年から昭和18年までにかけて、幼児の皇国民としての在り方が世界情勢や教育政策の変化とも関わって変化していることが推測された。具体的には、絵本における幼児の描き方が、明るさや元気はつらつとした姿が強調されていったことが明らかとなった。これらは戦局を迎えていくなかで、錬成を目的とした国民学校令といった学校教育政策の変化と密接にかかわっていることが推測された。なお、これらの研究成果については学会において口頭発表を行い、フロアーの方々から貴重な意見をいただくことができた。例えば「文部省図書推薦政策と絵本-戦時中の『教育』観に着目して-」という題目で日本社会教育学会第68回研究大会において2021年8月11日に口頭発表を行うことで、小尾などの社会教育政策者の思想と関連して幼児の絵本がどう取り扱われたのか、など研究を進める上で重要な質問をいただくことができた。このほか、日本児童文学学会大会では、2021年11月21日に「文部省図書推薦事業における絵本の教育観―読書指導に着目して―」という題目で口頭発表を行い、ジェンダーの視点でみていくことの意義を確認した。本発表に関しては、文学者が戦時中に文部省にどう対応したのか、などの質問をいただいた。今後はこれらの発表から得た知見をもとに、より深い視点で考察・分析したいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
今年度も新型コロナの影響を受け、遠方への調査研究は困難であった。当初は東京やアメリカなどに調査へいくよていであったが情勢により、困難を極めた。ゆえにこれまで収集した資料に不足している部分を近隣の公共図書館などで資料収集を行うことにとどまっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、新型コロナの全国の感染状況をみながら、積極的に遠方への調査を行っていきたい。特に、推薦図書事業に関わった、内務省の佐伯郁郎などの人物の調査を行い、幼児を絵本を通してどのように育成しようと考えていたのか、その思想背景をふみこんで調査していきたいと考える。
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Causes of Carryover |
今年度は、新型コロナウィルスの影響を受け、遠隔地への調査研究が全くできなかった。ゆえに、その旅費として使用する予定であった研究費を次年度へ繰り越すことで、次年度への旅費として調査研究へ赴きたいと考える。
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