2019 Fiscal Year Research-status Report
子どもの生活と学びをつなぐ「預かり保育」の絵本カリキュラムの開発
Project/Area Number |
19K02613
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Research Institution | Nara University of Education |
Principal Investigator |
横山 真貴子 奈良教育大学, 学校教育講座, 教授 (60346301)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 預かり保育 / 絵本 / 幼稚園 / カリキュラム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、幼稚園教育要領(2017)において作成が求められている幼稚園の「預かり保育」のカリキュラムを、絵本に着目して開発することである。「預かり保育」は、実施形態も利用する園児の実態も多様であるため、カリキュラムの作成は容易ではない。そこで本研究では、子どもの生活の場のどこにでもある絵本に着目し、①縦断調査で子どもの生活全般(家庭、幼稚園の正規の教育時間、預かり保育)を取り上げ、子どもと絵本との関わりの発達的変化を学びを中心に描き出しながら、②横断調査で先進園を訪問調査し、③「預かり保育」の絵本カリキュラムを開発することを目指す。 2019年度は、①縦断調査において、3歳新入園児1クラス26名(男女各13名)を対象に、協力園の預かり保育の実施状況を把握することに重点を置いた。協力園の預かり保育は、週3日、9カ月間(8,3月を除く)にのべ84回実施されていた。3歳児の利用者はのべ143人、20回以上3人、11~20回以上2人、2~6回9人、1回・0回各6人、1日の平均利用者1.7人だった。環境は、カーペット張りの1部屋で異年齢の子どもが一緒に過ごし、保育室とは異なる玩具が置かれていた。絵本は、絵や仕掛けを楽しむ絵本が多く、読んでもらうのではなく、自分で開くものとして機能していた。預かり保育と3歳児クラスの教育時間の保育内容等との関連はほとんど見出せなかった。これらの結果より、協力園の3歳児の預かり保育は、教育時間とは独立した活動であり、子どもにとって特別な経験であるように考察された。安心して過ごす居場所としての機能が重要であり、絵本の選書も興味を引きやすく文字が読めなくても楽しめる仕掛け絵本は有効だった。ただし、年齢が上がり環境に慣れてくると、絵本に求められる機能が変化することも推察され、預かり保育全般のカリキュラムと共に年齢ごとのカリキュラムの必要性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2019年度は、年度末の3月に実施を予定していた、以下の2点を遂行することができなかった。第1に、保護者アンケートの実施である。縦断調査で、子どもの生活全般を取り上げるため、家庭での絵本体験についての保護者へのアンケートを1学期に実施予定であった。しかし、入園後、1年間の園生活を経験して子どもの絵本体験がどのように変化したかを合わせて問う方が有効であると考え、調査時期を年度末の3月に変更していた。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、協力園が休園となったため、実施できなかった。 第2に、預かり保育先進園への訪問調査である。横断調査で、先進園への視察を、1年間の保育の振り返りを行い、カリキュラム・マネージメントを進める時期として、3月に予定していた。しかし、3月は訪問予定園も休園となり実施できなかった。 特に、保護者へのアンケートが実施できなかったことで、3歳児の生活全般における絵本との関りを描き出すことができず、次年度に繰り越すこととなった。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、2019年度に得られた3歳児の縦断研究の結果を踏まえ、4歳児の縦断研究を実施する。また横断調査として、預かり保育先進園への視察調査を実施する。 (1)縦断研究では、進級した4歳児を対象に、①幼稚園の正規の教育時間については、コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言解除後、6月より預かり保育実施日に実施し、以下4点について観察する。(a)絵本との関わり、(b)絵本環境、(c)絵本に関わる活動、(d)学び。場面は、写真撮影とともにビデオ録画し、フィールドノーツに記録する。加えて保育者へのインタビューを行い、保育者の保育観や絵本の位置づけなどについて尋ねる。②幼稚園の預かり保育については、6月から預かり保育日に①同様、4点について観察する。預かり保育の部屋全体を録画できるようにビデオカメラを設置し、写真撮影、フィールドノーツへの記録も実施する。保育者へのインタビューも実施する。①②は、研究結果を保育者、預かり保育担当者と振り返り、絵本環境の再構成を行うアクション・リサーチの手法をとる。③家庭に関しては、学年末3月に、保護者に対象児の(a)家庭での絵本との関わり、(b)絵本環境、(c)絵本に関わる活動、(d)学びについて問うアンケート調査を実施する。この調査は、全学年を対象とする。 (2)横断研究として、「預かり保育」のカリキュラムを作成、実施している先進的園を訪問調査する。そのため,まず候補地のカリキュラムを(a)絵本との関わり、(b)絵本環境、(c)絵本に関わる活動、(d)学びに着目して分析する。 研究結果は、国内の所属学会(日本乳幼児教育学会:名古屋11月,日本発達心理学会:2021年3月)に参加し、成果を発表する。研究をまとめ、発表し、他の研究者と意見交流を行うことで、研究の軌道修正を図る。また学会参加により、関連領域の最新の研究動向と情報を収集する。
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Causes of Carryover |
主な理由は、人件費・謝金の未使用である。人件費として、観察の録画データの文字化と3月実施予定であった保護者へのアンケート結果の入力を計上していたが、これらを次年度に繰り越した。観察の録画データの分析に関しては、教育時間と預かり保育の観察データにほとんど直接的な関連が見られなかったため、質的分析に備え行動を丁寧に文字化するのか、特定行動の出現頻度のカウントか、処理方法を確定することができなかった。分析方法決定のためには、4歳児の観察結果も見ながら学年をまたいでの比較検討が必要だと判断した。そのため次年度は、4歳児の観察結果を見ながら研究方法を確定し、アンケートの調査結果の入力とともに2年分の録画データの分析を依頼する。 次年度は、1,190,000円の予算を使用予定である。(a)縦断研究にかかわって、900,000円。内訳は物品費400,000円(データ保存用HD100,000円、書籍等100,000円、インクトナー等200,000円)、人件費500,000円。(b)横断研究にかかわって290,000円。内訳は2箇所の視察調査の旅費として100,000円(横浜・東京各1泊2日)。その他旅費として、学会及び研修会参加等のための交通費130,000円(名古屋30,000円:11月1泊2日、東京での研究会参加費100,000円)、学会等参加費60,000円の使用を計画している。
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