2019 Fiscal Year Research-status Report
困難を抱える子どもを包摂する多重感覚発達支援環境の実証的研究:日英米の環境比較
Project/Area Number |
19K02614
|
Research Institution | Naruto University of Education |
Principal Investigator |
高橋 眞琴 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (30706966)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 淳一 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (00212035)
牛込 彰彦 帝京平成大学, ヒューマンケア学部, 教授 (80528331)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 多重感覚環境 / 発達支援 / 発達障害 / 特別な教育的ニーズ / 情緒不安 / 行動障害 / 脳機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
国内外の多重感覚環境(Multisensory environments、以下、多重感覚環境)に係る文献を収集し蓄積しつつある。これまでの多重感覚環境の1つであるスヌーズレン実践についての研究成果について、実践場面の情報収集を行い、発達支援に関連する学会シンポジウムにおいて、指定討論者として参画した。 遺伝的および生後環境に起因する発達障害は脳の機能低下や不具合により生じ、貧困や虐待など子どもを取り巻く様々な要因もまた同様な結果をもたらし、情緒不安や行動異常を引き起こす。この様な子どもたちの支援をより効率的に実施するためには脳機能について知ることが役立つと考え、体内環境の変化の感受から伝達、行動発現まで、分子レベルでの解析を試みた。末梢の液性情報が受容される血液―脳関門が欠如している脳弓下器官(SFO)は、中枢神経系を介する情報とが統合される部位である。SFOは、グルコース感受、免疫機能、体液量調節、血圧調節 血漿浸透圧調節、緊張による口渇に関与しており、血圧、睡眠、体温、求愛行動に関与している正中視索前核(MnPO)と密接な相互連絡を持ち、特にSFOからMnPOに投射するグルタミン酸(Glu)作動性神経が重要な働きを担っていることを明確に示した。また、この作用はMnPOにおけるN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)型 および非NMDA(カイニン酸およびキスカル酸)型受容体機構を介して行われることを明らかにした(Exp. Brain Res., 2020; J. Physiol. Sci., Vol. 70, Suppl. 1, S109, S161, 2020)。 国外では、2019年10月に、米国カリフォルニア州において、多重感覚発達支援環境の情報収集を行った。多重感覚環境とヨーロッパ発祥のスヌーズレンとは、同一の意味ではないという示唆が研究者から得られた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、研究計画に即して、予定通り、国内外の多重感覚環境に係る情報収集を行った。子どもの脳の発達に関して神経系の可塑性の解明は極めて重要な課題である。感情、思考、記憶、認知などを司る前頭葉において、環境が神経系の可塑性に影響を与えることは周知の事実である。そこで、これらの高次脳機能に必須であるGlu、γ-アミノ酪酸(GABA), アセチルコリン(ACh) 作動性神経系のうち認知・記憶に関与しているAChおよびBABA作動性神経に注目し、前頭前皮質における両神経系の活動調節機構について検討した。前脳基底部(特にマイネルト基底核)から前頭前皮質へ投射するAChニューロン活動に対しGABA作動性は抑制的に作用していること、この作用はGABAAおよびGABAB受容体を介して行われるが、GABAA受容体が優位であることを解明した(The 8th Int.Neural Microcit. Conf., Abst. 51, 2020)。 多重感覚発達支援環境の効果測定を行う予定の事業所についても、情報収集や研究協力について打診の上、承諾を得ており、研究協力者が同意の上、対象となる子ども同士の社会的相互作用に係る研究には着手し、分析に入っている。これまでの関連する研究成果については、学会発表や論文等で広く一般に公開するように留意している。
|
Strategy for Future Research Activity |
2020年3月に、所属研究機関の臨床研究倫理審査委員会に多重感覚発達支援環境時の生理学的指標を用いた効果測定について、申請し審議済である。既に、研究協力について承諾を得た複数の事業所については、効果測定について着手できる状況になっているが、新型コロナウイルス感染症防止の観点での各種自粛要請等に伴い、効果測定が延期になっている現状がある。第2次の国外調査についても、渡航や入出国が困難な状況となっている。今後は、新型コロナウイルス感染症予防に係る政府や所属研究機関のガイドラインに沿って、研究を進めていく予定にしている。
|
Causes of Carryover |
2020年3月末から英国の通常学校、コミュニティスクール、研究協力機関での海外調査を予定していたが、政府からの新型コロナウイルス感染症防止に係る入出国制限に伴い、研究協力先との協議により延期となっているため、旅費の部分で次年度使用額が生じている。政府や所属研究機関のガイドラインに沿って、再度、英国の研究協力先に打診・協議の上、調査を進め使用する予定にしている。
|
Research Products
(14 results)