2020 Fiscal Year Research-status Report
乳幼児健診で母子の関係性を捉える方法の検討~縦断研究の知見を活かす~
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19K02618
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Research Institution | Hakuoh University |
Principal Investigator |
伊崎 純子 白鴎大学, 教育学部, 教授 (00341769)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 母子相互作用 / 縦断的観察研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
乳幼児健診において母子の関係性を捉える視点を提供する基礎データの収集を目的に、日本の母子の相互交流を0歳から5歳まで追跡調査を行っている。本研究で収集された基礎データは愛着障害と発達障害の早期スクリーニングと予防を可能にする、関係性をチェックする項目の精緻化のための資料となる。 2020年度(令和2年度)は、マスク等感染対策を施して新型コロナウィルスへの感染不安に配慮しながら、継続撮影中の15名の乳幼児とその保護者を対象に、発達のターニングポイントとなる月齢で延べ19回撮影を行なった。新規の撮影協力者は2名である。研究参加者を募る積極的なチラシの配布は行わなかったが、知人等を介して研究に参加を希望された。うち、1名は生後2か月から観察を開始し、追跡中である。もう1名は出産直後に染色体異常が判明し、大学病院へ転院、現在もNICUで生活している。参加取りやめも含めて保護者と相談した結果、予定されていた研究参加に前向きであったことに加え、NICUでの撮影を医療機関・保護者ともに許可してくれたため、当初の予定から遅れて生後4か月から撮影を開始するに至った。この事例は、今後、統計的な検討とは別に分析することを保護者にも説明し、同意を得ている。これまでに、中断ケースを含め、総勢25名の赤ちゃんとその保護者がこの研究に参加している。 2020年度は、研究計画当初想定していなかった点が大きく2点ある。1つは、感染防止を目的に不要不急の外出を自粛したため、5~6月撮影予定だった1歳半の撮影と第3子出産と重なった2歳児の撮影は断念したこと、2つ目は、国際学会への発表申請がリジェクトされ、さらに国際学会・運営と発表で参加予定だった国内学会自体が延期されたことが挙げられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は、外出自粛中の5~6月の撮影と参加者の都合により撮影できなかった2歳児の撮影を除き、延べ19回の撮影を概ね予定通りに遂行した。また、研究者、研究協力者それぞれの所属先を通じて行われたYouTube配信やWEBフォーラムで本研究での学びを一部披露することができた。さらに、栃木県内の母子医療に関心の高い児童精神科医や心理職等とオンライン勉強会での繋がりが新たにできた。そこではM.Mahlarの「乳幼児の心理的誕生」の精読を行なっており、県内の専門家ネットワークは増えている。 一方で、コロナ禍で映像資料の収集とその後の映像共有が課題となった。対面ではない状況で、長時間の映像を共有しながら協議することが難しく、「DVD化」に向けた作業が遅れている。また、6月に開催予定だったオーストラリア・ブリスベンで世界乳幼児精神保健学会で発表を予定していたが、発表申し込みがリジェクトされ、その後コロナで学会自体も中止・延期となった。発表をリジェクトされた理由は研究協力者とも協議したが問題点が掴めていない。2021年度にハイブリッド開催される当学会にはオンラインで参加予定であり、発表予定だった内容については別の機会を探る予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、0歳から5歳まで、発達のターニングポイントでの撮影を延べ16回と、NICUで過ごしている赤ちゃんと保護者については状況に応じた撮影を計画している。母子ともに初対面時の観察結果と事前に複数回面識を持った後の観察結果に関する生後4ヶ月時点の比較検討も予定通り行う。 日本版『DC:0-5(2016)』に資する研修用DVD作成に向けた作業が遅れており、対面での協議を模索しつつ、並行してオンラインで共有できる時間まで映像資料を短く編集できるよう、精査と場面の選定に着手する。また、2020年度にできなかった国内学会の学会誌での発表と冊子化についても検討したい。
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Causes of Carryover |
(次年度使用額が生じた理由) 国際学会が中止・延期となり、オンライン開催への参加を決めたため、旅費の未使用額が大きくなった。 (使用計画) 未使用額については引き続き、ビデオ分析に伴う研究補助者に対する謝礼として使用することを計画している。また、次年度は、これまでの結果を総括し、論文執筆やDVD化を目指し、最低でも冊子化する。
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Remarks |
研究協力者の小林が矢板市の保健師と協働し、#ふぁみはぐ「赤ちゃんへの声かけ編」の動画作成を行った。https://youtu.be/IZ0zjhhHvdk 研究者の伊崎は白鴎大学WEBフォーラム(9/27)の指定討論者として、新型コロナの感染予防のために乳幼児期の母子間の接触が葛藤につながっていることを指摘した。https://hakuoh.jp/about/about_12_12.html
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