2020 Fiscal Year Research-status Report
幼児の体格・運動能力の年代変化 ー愛知県における50年間の調査からー
Project/Area Number |
19K02629
|
Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
酒井 俊郎 中部大学, 生命健康科学部, 教授 (80249242)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 勝紀 愛知工業大学, 経営学部, 教授 (10165326)
浦野 忍 藤田医科大学, 医学部, 客員助教 (20839328)
田中 望 東海学園大学, スポーツ健康科学部, 准教授 (50387635)
石垣 享 愛知県立芸術大学, 美術学部, 教授 (60347391)
早川 健太郎 名古屋経営短期大学, 子ども学科, 准教授 (70740421)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 幼児 / 体力・運動能力 / 体格 / 身体活動 / 遊び / 生活習慣 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで穐丸等および我々が行ってきた1969年、1979年、1989年、1999年、2009年の幼児の体力・運動能力、身体活動、遊び内容、生活習慣調査に引き続き、同様の項目・種目について愛知県を中心に2019年度測定・調査を行った(3歳~6歳・約3000名の幼児を対象)。2020年度はこれらの結果を集計分析し複数の学会発表を行う一方、報告書としてまとめ協力園はじめ関係各所に配布した。(以下、調査結果の要旨】 1.体格の年代変化:男児の体格について、6歳児は50年前(1969年)に比べて身長が0.67㎝、体重が0.90㎏増大した。女児は、身長が0.86㎝小さくなり、体重は0.57㎏増大した。体格の年代による比較では1989年を境に身長が低下する傾向であった。体重も同様の傾向が認められた。 2.定量的運動能力について:項目により向上傾向を示すものもあるが(1969年との比較を除くと)、2019年の記録の多くは低下傾向を示し、体力・運動能力の総合的な低下が確認された。 3.定性的運動能力について:運動能力測定項目のうち、「できた」「できない」で評価される定性的運動能力の「できた」比率(以下、成就率とする)を2009年、1999年、1989年、1979年、1969年のそれぞれの記録と比較した。「転がりボール蹴り」「逆上がり」「開脚とび」では過去の記録と比較して向上している年齢もあったが、「転がりボール蹴り」「テニスボールの両手受け」「でんぐり返り」では総じて成就率は低下していると考えられた。2019年の記録は過去50年と比較して総じて低下傾向が確認された。向上し続けている項目はなかった。また、定量的な運動能力のうち、体格の影響を受けているものや成熟に従って向上するような、自己の身体重心をコントロールしながら素早く動く能力、粘り強く運動を継続する能力、道具操作の能力の低下も確認された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度に愛知県下全地域(名古屋市、西三河、東三河、尾張地区)の幼稚園・保育所・こども園に協力頂き、以下の測定・アンケート収集を行った。 体力・運動能力テスト【定量的な測定項目】1)20m走、2)立ち幅跳び、3)テニスボール投げ、4)反復横跳び、5)けんけん跳び、6)縄跳び、7)懸垂、8)片足立ち、9)ボールつき、10)跳び越しくぐり。【定性的な測定項目】1)逆上がり(低鉄棒)、2)テニスボールの的当て(硬式テニスボール使用、直径60cmの的に当てる)、3)転がりボール蹴り(周径50cm程度のボール使用)、4)テニスボールの両手受け(硬式テニスボール使用)、5)でんぐり返し(マット使用)、6)開脚とび(幼児用跳び箱)。 【アンケート調査(幼児の保護者を対象)】アンケートの表題は、「幼児の生活習慣、リズム、環境等に関する調査票」と題して、A.園児の生活リズムについて。B.園児の朝の生活習慣について。C.園児の降園後の生活習慣について。D.園児の夕方の生活について。 2020年度は得られた約3000名のデータについて(下記1~5)各担当が解析を進めていった。1.今回回収した体力・運動能力データの傾向分析。2.体力・運動能力の年次変化の検討 3.今回行ったアンケート調査の集計結果の検討。4.アンケート調査の結果を過去と比較し検討する。5.wavelet補間法を用いて解析する。そして、明らかになった知見について複数の学会で発表するとともに、報告書としてまとめ協力園はじめ関係各所に配布した。また、研究発表についてはコロナ禍のため国内外で多くの学会大会が中止・参加制限となり十分な発表機会を得られなかったが、オンライン参加等によりいくつかの学会で成果を発表することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後はさらに解析を進めるとともに、 ①体力・運動能力データの傾向分析について、1969年、1999年時と2019年を単純に比較検討する。その結果から現代の幼児の体力・運動能力の傾向を検討する。また、体格と体力・運動能力との相関分析を行い、運動能力が体格の要素に依存しているのか、それとも独立に発達を成就しているのか検討する。 ②体力・運動能力の年次変化の検討について、1969年、1979年、1989年、1999年、2009年、2019年の6時点を連続と見なし、体格、体力・運動能力の各平均値の変化に対してウェーブレット補間法を適用する。50年間の時代変化に対してどの時代で各能力が増減を示すのかについて検討する。 そして、上記の研究で得られた結果について、日本発育発達学会、日本教育医学会、日本体育学会、日本体力医学会、日本生理人類学会、東海体育学会、ACSM, ECSSなど国際学会にも参加して発表する。さらに、論文を作成して発育発達研究、体育学研究、体力科学、教育医学、さらには国際誌にも投稿する準備をしていく。
|
Causes of Carryover |
2020年度はコロナ禍の影響で、参加・発表予定の学会が中止、または参加制限(リモートでの実施)のため、旅費・宿泊費の支出がほとんど無かった(中止が予想されたため、他の研究費を利用した)。そのため、次年度使用額が生じてしまった。 2021年度は(コロナ禍の状況が良くなった場合)、学会大会に積極的に参加し、本研究で得られた知見の発表に努める計画である。そのための参加費、旅費として使用予定である。2021年度もコロナ禍の状況改善が見られない場合には、論文執筆(書籍として発刊)に注力し、掲載・別冊(出版費)として使う予定である。
|