2019 Fiscal Year Research-status Report
障害等への偏見変容に向けたインクルーシブ保育と保育者養成教育のあり方に関する研究
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19K02655
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Research Institution | Soai University |
Principal Investigator |
直島 正樹 相愛大学, 人間発達学部, 教授 (00465874)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 好市 神戸常盤大学, 教育学部こども教育学科, 教授 (00342171)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 障害等への偏見変容 / インクルーシブ保育 / 障害者との接触体験 / 実践的展開に向けた課題 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、日本において「インクルーシブな社会」のあり方が問われる中、接触体験の質と保育者養成教育の二つの観点から、障害児・者に対する意識変容に向けた幼少期における効果的なインクルーシブ保育実践、保育者養成教育及び現任者研修のあり方について検討していく。そして、それらの課題を踏まえた改善点・要件・具体的方法論等の提示を目的とする。今年度は、特に下記の点に焦点を当てて研究を進めた。 まずは、障害等への偏見変容を促すインクルーシブ保育の実践的展開に向けた課題を整理した。その中で「インクルーシブ保育」の定義に関する課題が明確になった。インクルーシブ保育の重要性が叫ばれているものの、その言葉自体の捉え方が曖昧なこともあり、保育現場で実質的に行われているとは言い難いのが現状である。その点を念頭に置き、ユネスコのインクルージョンの定義や先行文献研究等から検討を進めた。 また、「偏見」及び「障害・児者との接触体験」に関わる課題について検討した。幼少期からの障害等に対する偏見変容を促す有効な手段の一つに、当事者との接触体験が挙げられる。ただし、障害児・者への慰問や表面的な交流等の単なる接触体験では、(障害児・者への)態度形成の変容が起こるわけではない。つまり、偏見の対象者と単に接触するだけでは偏見の解消につながらず、接触体験の「質」が重要となる。この点は、障害等への偏見変容を促すインクルーシブ保育実践、それを担う保育者の養成教育のあり方につながる部分でもある。接触体験に関する中心的理論であるG.W.オルポート(G.W.Allport.)の「接触理論」等も踏まえ、心理学的視点から偏見につながる心のメカニズム(偏見の仕組み等)について検討を進めた。 以上のように、障害等への偏見変容を促すインクルーシブ保育実践、それを担う保育者の養成教育・現任者研修のあり方の提示に向けた基礎的研究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「インクルーシブ保育」の捉え方、「障害等への偏見」の構造、その低減に向けた取り組み、「障害児・者との接触体験」のあり方等については、さまざまな議論がある。今年度、先行文献研究を踏まえながら検討を進めてきたが、今後の研究をより有効に進めるためには、偏見の心理的メカニズム、接触体験の質等について、さらに細かな検討・分析が必要と考える。 また、海外(デンマーク・フィンランド等)の保育・教育現場、保育者養成課程の視察実施(来年度実施予定)に向けて、専門業者に現地コーディネーターの手配等を依頼し、準備を進めてきた。しかし、新型コロナウィルス感染拡大の影響に伴い、現地での調整が難航し、視察先や時期等の再検討が必要となっている。そのような部分で、「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までの研究を踏まえながら、引き続き、「障害等への偏見」や「障害児・者との接触体験」等、インクルーシブ保育の実践的展開に向けた課題について検討していく。特に、来年度は「接触体験の質」に関して、接触理論の整理・検討と、心理学的視点から偏見につながる心のメカニズム(偏見の仕組み等)についての考察を、先行文献研究を中心にさらに進めたい(再検討したい)と考えている。 それらを踏まえて保育現場へのインタビュー調査を実施し、質問紙の作成・調査を行っていく。調査対象は、大阪市私立保育連盟加盟園勤務の保育者等を考えている。また、海外(デンマーク・フィンランド等)の保育・教育現場での保育者のインクルーシブ保育に関わる取り組み等を視察し、分析を行う予定である。 その上で、障害児・者に対する意識変容に向けた幼少期における効果的なインクルーシブ保育実践、保育者養成教育及び現任者研修について検討し、一つのあり方を提示したいと考えている。 *ただし、新型コロナウィルス感染拡大の影響に伴い、日本の保育現場や海外の保育・教育施設の受入れ状況によって、調査・視察先及び実施時期は検討する(場合によっては、再来年度の実施も視野に入れる)。なお、別の専門業者にも、現地施設の受入れ状況把握等を依頼し、実現に向けて準備を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
【理由】本研究をより有効に進めるため、次年度は日本の保育現場における調査に加え、海外(デンマーク・フィンランド等)の保育・教育現場視察、専門職へのインタビューを行う予定である。視察先(視察国数も含む)を検討、準備を進める中で、想定以上の費用が必要になる可能性があると判明した。 来年度予定している物品購入計画等と照らし合わせた際、次年度請求分だけでは海外視察に関わる費用が不足することも考えられる。そのため、次年度使用額としての活用が有効と考えた。 *新型コロナウィルス感染拡大の影響に伴い、海外の視察先及び実施時期等の再検討を余儀なくされている。そのため、研究費の活用方法についても慎重に検討している。 【使用計画】今回生じた「次年度使用額」は、「次年度請求額」と合わせ、保育現場調査・海外視察に関わる旅費・謝礼金、調査等において必要となるノートパソコンの購入費に宛てる等、有効に活用したいと考えている。
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