2019 Fiscal Year Research-status Report
Efforts to Improve Competence and Emotional Expressiveness in Expression Activities of Preschool Children through Singing-Instruction
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19K02665
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Research Institution | Gifu Shotoku Gakuen Junior College |
Principal Investigator |
長川 慶 岐阜聖徳学園大学短期大学部, その他部局等, 講師 (70781300)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 歌唱指導法 / 幼児 / 裏声 / 表現 / 音楽活動 / コンピテンス / 感性 / 発声法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、保育現場での実態調査に基いた幼児の歌唱指導法を開発し、音楽を専門としない保育者が活用できる歌唱指導の体系を確立することである。同時に、幼児の有能感(コンピテンス)を高め、子どもたちが表現に対する探求心を持って音楽活動にあたり、高い次元での自立的活動を促すことを目標としている。 初年度は、第1フェーズとして、筆者自身が歌唱指導を幼児に対して行い、具体的な発声指導メソッドの基礎を構築することを目的とした。本研究では、歌唱法として裏声を活用していくことを大きな特色と位置づけている。よって、幼児が裏声で歌唱できることを目標として、裏声での歌唱法(発声法)を中心に音楽活動を行った。 ここまでの成果としては、①歌唱活動と遊びを連動させることで、子どもたちが裏声を習得できた、②子どもたちが大きな声と美しい歌声の違いを認識できた、③子どもたちが楽曲にふさわしい歌声を自ら考え、選択することができた、以上の3点である。 ①については、活動にゲーム的な要素(音楽に合わせて動く、動物になりきるなど)を多く入れることによって、楽しみながら無理なく裏声を出すことができた。②については、歌唱だけでなく、さまざまな声(元気な声、小さな声、やさしい声など)で挨拶させることで、子どもたちの声に対する認識が大きく向上した。そして歌唱時に裏声を地声(話声)の両方で歌唱し、どのように感じたか、どちらが歌いやすかったか、という対話を繰り返すことにより、③にあるように、子どもたち自身が楽曲の持つ旋律や歌詞から、よりふさわしい歌声について考えることができるようになった。これは、子どもたちが楽しみながら歌唱法を獲得することにより、歌声の選択肢が増えたことによるものと考える。①から③の結果、遊びを通じた歌唱指導を行うことは、子どもの興味関心を惹き起こすだけでなく、豊かな表現活動に結び付くことを改めて認識した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの研究は、おおむね順調に推移している。研究初年度は第1フェーズ(第1フェーズは1.2年目で実施予定)として、子どもの歌唱指導法を確立することとに注力した。研究に際しては、進捗状況の指標として到達目標課題を8項目設定した。本研究では、裏声での歌唱が大きな特色となっているため、到達目標課題は子どもたちが裏声で歌唱できるかについて段階的に目標を設定した。 設定した8項目は成果があがりつつあるものの、不安定である。不安定とは、ある活動では驚くほどの成果があったが、次の活動では同じことができない、同じ指導内容でも年長1組ではできることが年長2組ではできない、ということを意味する。安定した成果が得られていない原因としては、子どもへの発声指導そのものや、子どもの音の感じ方、指導の間隔(現在は月1回程度)など直接的なものに加え、子どもたちが研究実施の前日や当日にどのような活動をしていたか、クラス担任が教材も含めどのような歌わせ方をしていたか、研究実施時間(昼食後で眠い、プール授業の前でそわそわしているなど)等、外的要因を含んだ複合的なものであると考えている。しかし、指導回数を追うごとに意図した指導効果が出る頻度が上がってきていることから、現在の歌唱活動を積み重ねていけば、より安定した成果につながっていくものと考える。 なお、研究成果であげた、「子どもたちが楽曲にふさわしい歌声を自ら考え、選択することができた」ことについては、子どもたちがある程度発声方法を身につけ、安定した歌唱ができない限り難しいと考えていた。よって、第2フェーズで成果があがるものと予想していたが、第1フェーズにおいて成果があがりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方針としては、子どもたちが裏声を用いて安定した歌唱ができることを当面の目標とし、継続して歌唱指導を繰り返していくこととする。目標達成のために、第一に筆者が行ってきた活動を検討し、不安定な原因の追究と、指導の効率化を目指したい。さらに、筆者は1か月に1度程度しか指導の機会を設けられないことから、歌唱は現在協力を仰いでいる園の保育者と改めて目標点を確認し、毎日の歌唱活動のあり方からも改革を図っていきたい。また、歌唱教材についても、より効果が得やすい楽曲について検討を進める予定である。これらの項目が達成でき次第、これまで行った活動内容を精査し、歌唱指導法として体系化の準備に入ることとしている。 さらに、2年目の研究テーマとして、1年目に筆者が行った活動を現在協力を仰いでいる園の教員に実際に行ってもらい、筆者と同じ成果が出るのか、つまり現場の保育者でも実行可能な指導法となっているかを検証していく予定である。この取り組みを通じて、現場の保育者が実施できること、難しいことなどを検証し、より実践的なメソッドに近づけることができると考えている。 しかしながら、現在新型コロナウイルス感染症予防の影響により、研究は中断を余儀なくされている。本研究では、子どもの実態や保育現場の実情を鑑み、実用的な指導方法の開発を目標としている。そのため、保育現場に出向き、実際に子どもたちと歌いながら指導方法を構築していく研究手法を採用しているため、保育現場での指導を再開するめどが全く立っていない。社会状況が落ち着き次第研究を再開する予定で協力園とも調整を進めているが、研究に遅延が生じる可能性がある。
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Causes of Carryover |
本研究では、当初初年度から遠隔地(新潟市内)での研究を予定していた。しかし、協力を依頼した幼稚園の都合により、中断となった。よって、当初計画していた旅費で残額が生じた。また、教材開発を依頼した作曲家と、構想の話し合いは進めているものの、具体的な作品制作には入っておらず、現段階では謝金が発生していない。 また、2月、3月中に参画を得ている大阪の幼稚園の視察、新潟での研究再開に向けてのプレゼンテーションなどを予定していたが、新型コロナウイルス感染症の影響により中断を余儀なくされたため、当初予算よりも、実使用額が少ない結果となった。 初年度の残額については、教材開発、新潟市内での研究再開など、2年目以降に当該の研究を実施する予定であり、態勢が整い次第適切に執行する。
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Research Products
(5 results)