2019 Fiscal Year Research-status Report
外国人集住地域の小学校と在日外国人児童生徒教育のカリキュラム
Project/Area Number |
19K02674
|
Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
磯田 三津子 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (10460685)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 外国人集住地域 / 外国につながりのある子ども / 文化に対応した指導 / 社会正義 / 総合的な学習の時間 / 音楽授業 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、3年計画の研究の一年目である。そのため、今年度は、研究を進めるうえでの根拠となる米国の多様な人種や民族の子どもたちに関わる教育の理論及び、日本の外国人集住地域の指導案を収集した。具体的には以下の三点について取り組んだ。 第一は、ラドソン-ビリングス(Ladson- Billings, G.)の「文化に対応した指導」(Culturally Responsive Teaching)の考え方を中心に、マイノリティの子どもたちの教育の在り方を考察した。文化に対応した指導では、子どもたちの人種や民族、あるいは子どもたちが暮らす家庭やコミュニティの文化を理解しそれを教育内容・方法に取り入れることの重要性が指摘されていた。 第二は、教育における「社会正義」(Social Justice)の考え方について整理した。本研究では、社会正義の観点から子どもたちに必要な学力とは何かについて考察した。その結果、子どもたちが公正な社会を構築するためにどのように社会参加をすることができるのか、その知識と技能を育成することであることが明らかとなった。社会正義の考え方を取り入れた授業実践を行うために現在の米国ではヒップホップを教材とすることの可能性が示されていた。 第三は、大阪市を対象に外国につながりのある子どもたちが多く通う学校の28の総合的な学習の時間の指導案を収集し、国際理解教育の理論に基づいて検討した。その結果、これらの小学校の総合的な学習の時間では、商店街で働く人々や外国に関連のある施設を通して、地域への理解を深める中で国際理解教育を実践していた。指導案の半数以上が、地域に関わる体験を重視した学習であることが特徴的であった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、米国の文献の収集と検討及び、大阪市の外国人集住地域の小学校の指導案の収集を行った。米国の文献の収集・検討を通して、外国につながりのある子どもたちの学習意欲をどのように高めたらよいのか、そして子どもたちに必要な学力とは何かについて理論的な根拠を得ることができた。これは、日本において外国につながりのある子どもたちの授業実践を考えるときの重要な手がかりとなるであろう。その成果は、日本カリキュラム学会及び、日本教育方法学会で研究発表を行った。 一方で課題もある。本年は、大阪市の外国人集住地域の総合的な学習の時間の指導案を収集しただけであり、その他の地域や他教科でどのような授業を行っているのかなどの手がかりを得ることができなかった。その点に関しては、今後、外国につながりのある子どもたちが多く通う地域の小学校を把握し、調査を進めることが課題である。
|
Strategy for Future Research Activity |
2年目は、引き続き米国の多様な人種や民族の子どもに関連する教育についての献を収集し考察する。同時に、日本の多文化共生教育や学校における取り組みに関わる文献について検討し、先行研究を整理する。 一方で、新型コロナ感染防止のため、外国につながりのある子どもをめぐる授業実践の報告を行う「全国在日外国人教育研究協議会」「大阪府在日外国人教育研究協議会」等の協議会が延期/中止となっており、参加することができない。そのため、どのような実践が行われているのかなど、最新の情報の入手が難しい状況となっている。同時に、本来であれば、外国人集住地域の小学校へ出向き、聞き取り調査を行う予定だったが、困難である。 以上のことから、今年度は、文献を中心に研究を行い、本研究の理論的枠組みを明確にする。そして、可能であればいくつかの自治体の研究センター等で指導案等を継続的に収集し、理論的枠組みに従って分析する。
|
Research Products
(2 results)