2020 Fiscal Year Research-status Report
外国人集住地域の小学校と在日外国人児童生徒教育のカリキュラム
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19K02674
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
磯田 三津子 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (10460685)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 在日外国人児童生徒教育 / 外国人集住地域 / 多文化共生 / 外国につながる子ども |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2(2020)年度は、アメリカの都市中心部におけるマイノリティの子どもたちを対象とした授業実践に関する理論の検討及び、日本における外国人集住地域を対象に、そこで行われている総合的な学習の時間の授業実践に焦点を当てて研究を進めた。 アメリカの理論については、ゲイ(Gay, G)の「文化に対応した指導」(culturally responsive teaching)とラドソン-ビリングス(Ladson-Billings, G)の「文化に関連した指導」(cultural relevant teaching)の理論を中心に、アフリカ系アメリカ人やヒスパニックの子どもたちが多く暮らす都市中心部の子どもたちの学習意欲と学力を高めることができる教育方法と教材について検討した。その際、ここでは、現代の子どもたちにとって必要な学力とは何かについても批判的教育学の観点から考察を行った。その中でも、本研究では、都市中心部の子どもたちにとって身近なポピュラー文化であるヒップホップが学習参加を促すだけではなく、子どもたちの身近な問題について気づきそれを改善するための社会参加を促す可能性がある教材であることを指摘した。 日本の教育に関しては、外国につながりのある子どもが集住する地域を有するX市の小学校の授業実践について調査した。特に、在日外国人児童生徒教育や持続可能な開発のための教育として多文化共生を目的に授業実践を行っている小学校の総合的な学習の時間に焦点を当て、それらの授業実践の特徴を明らかにした。 本年度は、新型コロナ感染防止のため、実際の外国人集住地域の小学校を訪ね調査・研究することは困難であった。その一方で、アメリカの都市中心部のアフリカ系やヒスパニックといったマイノリティの子どもたちにとってより良い授業実践とは何かについて文献を通して理論的に明らかにすることができた点は意味がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、日本における外国人集住地域の小学校における授業実践の特徴を明らかにすることである。その点では、外国人集住地域を有する自治体の教育委員会へ問い合わせをし、資料を収集することや、実際にその教育実践に参観することが必要であると考える。しかし、新型コロナ感染防止のため、令和2(2020)年度は、そういった移動を伴う調査・研究は行うことができなかった。 他方で、日本国内外の文献を収集し、理論的な検討を行えた点においては、一定の成果があったといえる。また、X市の外国人集住地域のいくつかの小学校の総合的な学習の時間の授業について考察し、研究成果としてまとめることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3(2021)年度は、外国人集住地域の小学校で実施された実践記録及び、指導案を収集し、分析・検討する。在日外国人児童生徒教育が実践されているのは、神奈川県、愛知県、三重県、京都府、奈良県、大阪府、兵庫県等である。これらの自治体の在日外国人教育研究会がまとめた実践記録と、指導案等を収集する。ここで収集した実践記録と指導案をアメリカの多文化教育についてまとめたグラントとスリーター(Grant, C. A. & Sleeter, C. E.)の多文化教育の五つのモデルに基づいて分類する。その分類の基づいて、日本の外国人集住地域における外国人児童生徒教育の特質を明らかにする。その成果を研究論文としてまとめる。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染防止の影響によって、予定していた学会がオンライン開催になったこと、また調査に行く予定だった小学校や研究集会への参加ができなくなった。以上の理由から、令和2(2020)年度の予算をすべて執行することができなかった。昨年、執行できなかった予算に関しては、令和3(2021)年度に資料収集や学会参加費等で使用し、研究を進めることとする。
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Research Products
(3 results)