2019 Fiscal Year Research-status Report
初期プログラミング教育を母語で行うためのソフトウェアツール開発
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19K02678
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
太田 剛 静岡大学, 情報学部, 教授 (40213730)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | プログラミング教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、プログラミング経験を全く持たない教員が、児童・生徒に「手順的な自動処理」の考え方を教授しトレーニングさせるためのソフトウェアを提供することにある。 研究代表者が行った過去の挑戦的萌芽研究、基盤研究(C)では、学生2人のペアが、相手の記述した手順指示書通りに作業し、その結果を見て自分の指示の不備を認識し、指示書を修正する活動を繰り返す方式を採用していた。この方式のペアの一方をソフトウェアに置き換えることにより、常に一定の基準に従い、かつ的確に指示書の不備を具現化した結果を返すソフトウェアを、いつでも提供できるようにしようとするものである。 過去の研究で作成したシステムは、学習者に自然言語による記述を入力してもらい、これを解析するようなものであった。しかし残念ながら、小学生を対象とした場合にキーボードによる入力はハードルが高いこと、音声入力も教室内の雑音の多さから適切でないこと等の理由により、この方式は一時保留とした。その替わり、小学生にとってハードルの低い、ブロック組み立て型の言語を開発することにした。ただし、ifやwhileに相当する構文を単純に日本語化したものでは、プログラミング言語を日本語化するだけであり、過去にも事例報告があり何ら本質的差はない。そこで、次のことを目標とした。比較的自然な日本語の文章を、ある程度の種類の手順指示ブロックの組み合わせとパラメータ設定(数値や方向・方角の穴埋め)によって構成する。さらに、そうして作られた指示を解釈実行するインタープリタを作成する。 本年度はこのシステムのプロトタイプを作成し、実際に小学校の教育に投入して、1回40分の授業を行った。その結果として、うまくいく点、不備、改善点等についての知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
小学生にとってハードルの低い、ブロック組み立て型の言語により、比較的簡単な漢字の書き方を指示する文章を組み立て、それをシステムが解釈実行するシステムのプロトタイプを開発した。このシステムは、単純な日本語化プログラミング言語ではないし、タートルグラフィックスでもない。 曲線を持たない漢字の書き方を自然な日本語文章で指示するのに必要な用語、構文、パラメータ等は、過去の研究で分類済みであり、今回はそれらをそのままブロック型言語のブロックに対応させた。そして、それらの組み合わせ方によって、ペンを走らせる長さや方向を解釈して実行するようなインタープリタを開発した。文章の構成(ブロックの組み合わせ方)にある程度の制約は導入するが、プログラミング言語のように厳密な規則に縛られることもないし、タートルグラフィックスのようにペンの上げ下げ、長さや方向の厳密な指示を必要ともしない。本来必要なパラメータ値が不足する場合、本システムではランダムな値を補うことをしている。これによって、文章の作者が思ってもみなかった線が描かれる状況が発生し、自分の文章のどこに問題があったのか、学習者にとって発見しやすい状況が生まれることを期待した。この点は、プログラミング言語やタートルグラフィックスではエラーとなって全く動かないのとは対照的である。 開発したシステムは、小学校の教育現場において1回40分の授業で使用してもらった。その際に得られた経験から、システムの改善方法ならびに効果測定実験の計画方法などに関する知見を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度に実際の教育現場に投入した結果の分析を行い、まずは、言語の再設計をして作り直す予定である。研究者が思ってもみないブロック組み合わせを試す児童がいたが、それなりに意味のある行動であることが分かったり、テスターとしての大学生にとっては当たり前でも、小学生に対してはパラメータの与え方に少し工夫が必要であることがわかったりしている。これらの知見をシステムに加える予定である。 係り受けの解釈の違い(例:黒い目の大きな女子)のようなものを、本システムの枠組みの中で取り扱うことができるかもしれない--つまり、解釈実行のたびに違う結果が出るように--という知見も得た。
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