2020 Fiscal Year Research-status Report
日本の楷書筆順における行書系筆順の定着過程に関する研究
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19K02683
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
松本 仁志 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 教授 (40274039)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 筆順 / 字種 / 抽出 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「日本ならではの文字学習環境で身に付けられた運筆の順序が、楷書中心の書字環境に急速に変化した明治期以降の楷書筆順に影響を与え、行書系 筆順として定着した」という仮説のもと、日本の楷書筆順を特徴づける行書系筆順が定着した過程について、江戸期の寺子屋で広く使用された往来物における運 筆順序の分析を通して明らかにするとともに、通史的に解釈して筆順史に位置付けることを目的とする。 2019年度は、1.調査対象とする往来物資料を収集し整理した。現有の石川松太郎監修『往来物大系』全十巻(1992-1994)所収の往来物資料757点とともに、明治維新期の往 来物資料を一定数収集・整理した。2.調査する字種を選定した。今日まで①継続的に使用されていること、②一定の字体を保持していることなどを選定条件と して、40字を選定した。 「飛 必 馬 長 門 無 右 左 有 書 臣 非 羽 兆 老 及 司 風 川 州 寒 隹 止 上 出 火 用 田 王 生 耳 取 坐 女 方 土 母 興 重 癶」 2020年度は、次のように当初計画の「3」を実施したが、完了しなかった。 3.往来物資料の行草体から運筆順序の抽出作業をした(未完了)。当初計画の「2」で選定した「飛 必 馬 長 門 無 右 左 有 書 臣 非 羽 兆 老 及 司 風 川 州 寒 隹 止 上 出 火 用 田 王 生 耳 取 坐 女 方 土 母 興 重 癶」の40字種について、往来物資料から該当文字を抜き出す作業をした(未完了)。当初計画では、すべての文字の抜き出しを完了してから運筆順序を抽出する予定であったが、今後の作業の効率性や規模の縮小を視野に入れて、抜き出しを終えた字種から運筆順序を抽出する方法に変更して実施した(未完了)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020年度は、作業補助員(大学院生5名)の雇用が可能になった段階で、2019年度に実施する予定であった「3」の往来物資料の行草体から運筆順序 を抽出する作業から始める予定であったが、新型コロナウィルス感染症をめぐる状況が改善されず、雇用の見通しが立たなかった。このような状況を受けて研究代表者のみで作業を進めることにしたが、運筆順序の抽出作業を完了するまでにはいたらなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画「3」までの作業の終了を待って、757点の往来物資料から抽出した運筆順序と対応する明治期以降今日までの楷書筆順との相関について、方法を吟味・検討した上で分析する(当初計画「4」)。その上で、行書系筆順定着の過程を筆順史に位置付ける(当初計画「5」「6」)。ただし、8月の時点で年度内の研究終了の可能性を検討し、当初計画の趣旨を損なわない範囲内で縮小して実施するか、研究期間の延長を申請するかの判断をする。作業補助員(大学院生5-10名)を年間30日間程度雇用し、資料作成の補助を依頼する。
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Causes of Carryover |
2020年度は、作業補助員(大学院生5名)の雇用が可能になった段階で、「3」の往来物資料の行草体から運筆順序 を抽出する作業から始める予定であったが、新型コロナウィルス感染症をめぐる状況が改善されず、雇用の見通しが立たなかった。研究代表者のみで作業を進めたが、個人で対応できる作業量には限界があり、次年度にかなりの作業を残した。 2021年度は、作業補助員(大学院生5-10名)を、コロナ禍においても作業できる環境を整えて確実に雇用し、当初計画「3」の文字の抜き出し作業とデータの整理を早い段階で依頼し、完了を目指す。
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