2020 Fiscal Year Research-status Report
地域遺産・世界遺産の価値を伝え合い自他の文化理解を深めるESD授業モデルの開発
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19K02684
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Research Institution | Naruto University of Education |
Principal Investigator |
金野 誠志 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 准教授 (50706976)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 直也 高知学園大学, 健康科学部, 教授 (10203796)
永田 成文 三重大学, 教育学部, 教授 (40378279)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 遺産言説の権威化 / 世界遺産 / 日本遺産 / 顕著な普遍的価値 / ナショナルな価値 / ローカルな価値 / 遠隔交流学習 / オンライン |
Outline of Annual Research Achievements |
研究協力校の西条市立神戸小学校では、日本遺産登録はできたが世界遺産登録を目指している「四国遍路について取り上げた。三重大学教育学部附属小学校では、既に世界遺産登録されている「紀伊山地の霊場と参詣道」をとりあげた。両校の間で、本研究の学習を始める前に、WEB会議システムで、市や県の様子を紹介しあった後、それぞれの学校で今後どのような学習を展開していくか紹介し合った後、それぞれの学校で学習したことを交流し合うことを確認した。そして、それぞれの協力校で地域の文化遺産について学習し、地域で継承してきた文化の理解、地域の文化集団の価値観の理解、地域愛の自覚と社会への参画意識の醸成を進めた。それぞれの学習を進めていく過程で、文化遺産が有する「顕著な普遍的価値」、「ナショナルな価値」、「ローカルな価値」の意味は理解できた。 また、それぞれの地域の文化遺産が世界遺産登録を目指す問いに生じた、登録に対する反対意見を考察する過程で、地域の文化集団の価値観の理解が高まった。それぞれの学校の遠隔交流学習を進めたことから、それぞれの地域で大切に保存されてきた文化遺産は、地域の人にとっての意味や意義、愛着や保存に対する積極的な関与があったことを実感できた。 さらに、それぞれの学校で学習したことを交流した後に、世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」と日本遺産「四国遍路」の保護・保全について、どちらを優先するか考える学習では、世界遺産や日本遺産ということ左右されるのではなく、それぞれの地域の文化遺産をそれぞれの地域の人々が保護・保全することが好ましいという考えで一致し、「遺産言説の権威化」を退けることができたと考える。そして、文化遺産が同時に有する「顕著な普遍的価値」、「ナショナルな価値」、「ローカルな価値」の認識もできたと考える。最終年度に得たデータと併せて、数値的な検証を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
同時に予定していた東日本(神奈川県)の協力校が、日本遺産に登録されていない文化遺産について学習し、愛媛県西条市立神戸小学校とWEB会議システムを使って遠隔交流学習を進めることは、新型コロナ感染拡大の影響できなかった。現在のところ、交流学習の内容分については、研究分担者による授業「世界遺産になれない鎌倉」を西条市立神戸小学校でおこなってもらうことで補っているが、当初、予定していた児童相互の遠隔交流学習は、延期と言うことになっている。途中で、代替校の選定に入ったが、年度途中での計画変更や協力をしていただく学校を決定することは困難であった。これは、感染防止のため、計画通りに、研究協力校の児童が地域調査へ出かけることや、教員や研究分担者が現地調査できなかったこと、そもそも、校内での主体的、対話的で深い学びを進める協働学習をすることができなかったことによる。 また、初年度予定していた、海外での現地調査を次年度に延期していたが、これも、台湾、オーストラリア、アイルランドともに新型コロナ感染拡大の影響できなかった。海外での現地調査ができなかった分は、海外からの文献取り寄せや、オンラインでの情報収集を進めてはいるが。オーストラリアについては、先住民が自分たちの先祖が残してきた遺産が世界遺産に登録されたことについて、どのように観て考えているか。アイルランドの人々は、世界文化遺産である時刻の文化遺産にどのような思いを込め価値づけているのかということの理解や確認が、十分できているとは言い難い。
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Strategy for Future Research Activity |
UNESCOに加盟できないため一覧表への記載が不可能な台湾の文化遺産、移民や先住民から観た際に異なる価値が顕在化するであろうオーストラリアの文化遺、オーストラリア、イギリスとの関係性で「特殊的価値」を意識しがちだと推測されるアイルランドの文化遺産について海外現地調査は、海外渡航が可能になった段階で、順次進めていく予定である。その時期が訪れるまでは、文献調査やオンラインでの情報収集等、可能な方法での教材研究を進めていく。 協力小学校間で行う遠隔授業の通信環境の確認はできている。通常のインターネット環境を使用したWEB会議システム(MicrosoftのTeams)を使用する。2020年度に、実施できていない関東地方の協力校の授業実施と遠隔交流授業は、2学期中には実施できるよう準備していく。当初予定していた研究協力校とは別に栃木県で研究協力を選定済みである。研究協力の概要は説明しているが、詳細については今後、打ち合わせや検討をして詰めていく予定である。早い段階で、以前の協力校からの機材の引き上げと、新しい協力校への機材の搬入を進めていく。 以上の点に留意して、2021年度2学期中には、3校でそれぞれ、国内の「顕著な普遍的価値」、「ナショナルな価値」、「ローカルな価値」を有する文化遺産を取り上げた学習を進めることと、海外の「顕著な普遍的価値」、「ナショナルな価値」、「ローカルな価値」を有する文化遺産を取り上げた学習を進めることとを完了できるようにする。 そして、これらの学習や学習から得た学習者のアンケートを基にして、地域遺産・世界遺産の価値を伝え合い自他の文化理解を深めるESD授業を再検討していく。最終的には、西条市立神戸小学校での実践や学習者の反応の変遷から、地域遺産・世界遺産の価値を伝え合い自他の文化理解を深めるESD授業モデルを開発し試案として示すこととする
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Causes of Carryover |
台湾、オーストラリア、アイルランドでの現地調査が予定されていたが、新型コロナウィルスの蔓延の影響で渡航できなかったことが、第一の要因である。海外文献の入手や翻訳、オンラインでの情報収集に、現地調査できなかったことにたいする対応は進めたが、それでも、現地調査に比して、現地の小学校で行われている文化遺産学習について得られた知見は不足している。よって、次年度に、海外への渡航旅費および文献収集、調査に関する経費として使用することが必要となる。 また、自他の文化遺産に対する価値の認識・尊重・対応の深まりについて伝え合う遠隔授業の打ち合わせや実施は計画通り進めていくため、打ち合わせ、資料収集、授業実践、その分析・検討のための経費として使用する。最終的には、「地域遺産・世界遺産の価値を伝え合い自他の文化理解を深めるESD授業モデルの開発」を行うため、学会発表や論文としてまとめていくための経費として使用する。
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Research Products
(5 results)