2019 Fiscal Year Research-status Report
昭和20・30年代の文集を用いて多角的に子どもの表現力を探求する研究
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19K02688
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Research Institution | Seitoku University |
Principal Investigator |
有働 玲子 聖徳大学, 児童学部, 教授 (50232880)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松村 裕子 聖徳大学, 児童学部, 准教授 (00646292)
稲井 達也 日本女子体育大学, 体育学部, 教授 (30637327)
竹田 晃子 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 研究員 (60423993)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 文集 / 地域 / 小学校 / 中学校 / 個人文集 / 版画文集 / 児童詩集 / 教員の文集 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、所蔵している文集を閲覧可能な状態に復元を行い、概要化を行うことにある。そのために、昭和20年代から昭和30年代の各文集を保存可能な状態にする基礎的な整えをし、埃を払い、陰日干しを行い、各文集に番号を付与し、第一次資料の基礎作業を遂行した。全体の概要としては戦後の文集は725冊、戦前の文集は39冊である。小学校文集が殆どを占めるが、詩集や中学校高等学校及び保護者や教員などの文集、版画文集、個人文集、手紙文等多種多様な文種に富んでいる。 次に地域的特色は3つになる。第一は、東京都23区の文集が多い。特に東京都杉並区の文集が91冊あり、本資料の基盤をなす。特徴的なことは、全国的な作文指導者であり杉並区の小学校校長であった吉田瑞穂に贈与された文集が多いことである。因みに、次は新宿区41冊である。第二は、文集数の地区概要は関東中心である。内訳は東京、神奈川、埼玉、茨城、千葉、群馬、栃木の順である。戦前の生活綴り方運動の盛んであった東北地方は数少なく、岩手12冊、宮城8冊、秋田4冊、青森6冊、山形5冊、福島1冊である。他の地域は北海道、九州(福岡、熊本、佐賀)、北陸(石川、福井)、東海(愛知、静岡、岐阜、長野)、山陰(島根)、四国(高知、香川)、関西(三重、京都、大阪、兵庫)である。第三は、地域文集176冊は全国的な出版会から発行されている。例えば生活綴り方指導の日本作文の会文集と、作文指導の会の作文文集等がある。 知見の交流は、2月24日(品川区立総合区民会館)に実施した。方言研究・竹田晃子(立命館大学)、読書研究・稲井達也(日本女子体育大学)、児童文学研究・松村裕子(聖徳大学)の各人の立場より文集の意義について論及した。尚、この年の成果として論文「昭和30年代のことばの教育-西成瀬小学校の指導より-」(有働玲子)(『解釈』解釈学会)(2020年6月掲載)にまとめられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究の屋台骨となる、第一次基礎資料の整備に多くの時間と手間を要した。資料が謄写版刷文集、多彩色版画手摺印刷の文集、肉筆手作業綴り帳、崩壊摩耗直前の文集、湿気含みの文集など、現存そのままでは破損が予想されるものが多くあったからである。 そのため、手仕事による各ページの陰干し作業や各ページ剥がしの作業や乾燥を要する作業などがあり、文集を閲覧可能な状態にすることに膨大な時間がかかった。 また、新型コロナウイルス感染症拡大のため、地域文集についての専門家招聘などを実施することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染症の終息を視野に入れながら、今年度に実施ができなかった地域文集についての専門家招聘を次年度に実施する。 研究分担者との知見の交流により、地域文集及び学校文集等の当時の指導と今日の指導との比較なども必要とのことであり、代表的な地域のみ現在の指導者に意見を求めることを行うため、考察部分の抽出作業を行う。 また、学校文集についての専門家招請を2020年8月に実施する。 これらの成果は、2020年10月開催の全国大学国語教育学会で発表する予定である。
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Causes of Carryover |
予定していた専門家招聘ができなかったため、旅費と謝金を使用しなかった。また、第一次資料の基礎作業の結果、摩耗が激しいため外部委託によるデータ化を当初予定していたが、データ化には厖大な費用が必要であることがわかり、外部委託が出来なかった。 次年度は、第一次資料の劣化状態に対応した手法を用いて、印字が可能な文集を抽出し、該当部分の印字作業をする。そのために必要な設備備品を購入予定である。 これに加えて、文集の該当箇所を抽出するための研究補助者、知見を得るために協力いただく専門家に支払う謝金が必要となる。また、学会発表の旅費が必要である。
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Remarks |
(1)公開シンポジウム「社会変動の中の日本語研究:学の樹立と展開」パネリスト:仁田義雄・杉戸清樹・大野眞男,指定討論者:山東功・金愛蘭・仲原穣,司会:竹田晃子,企画:竹田晃子・金愛蘭(日本語学会2019年秋季大会(2019年10月 東北大学)) (2)「近代日本方言研究史にみるアイデンティティ」発表:竹田晃子(ひと・ことばフォーラム29「言語とアイデンティティ」(2019年11月 東洋大学))
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Research Products
(17 results)