2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of the Model of Teaching Materials and Suggestions for Teaching Methods Related to Japanese Language for Senior High School Aimed at Deep Learning
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19K02698
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
高橋 正人 福島大学, 人間発達文化学類, 特任教授 (00809189)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 深い学び / 思考力・判断力・表現力 / 創発型授業メソッド / 多層構造 / 教材モデル / 知の刷新 / 知の地平 / 理論と実践の往還 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度においては、学習指導要領で提示されている思考の過程を踏まえ、発見を伴った「深い学び」の形成過程に焦点を当てながら、深い学びを可能とする新たな教材モデルとそれらを用いた実践的な授業メソッドの開発に関する基礎的な研究を行った。 具体的には、まず、「深い学び」に関する理論的な背景について、学力に関する知見を基に、思考力の位置付けについて探るとともに、認知言語学における思考の枠組み等に関する研究の知見を深さの観点から分類し体系化した。併せて、高等学校における教材開発の観点から深い学びに資する教材の多層分析を行い、その成果を次の書籍及び論考にまとめた。1)髙橋正人(2020)『文学はいかに思考力と表現力を深化させるか―福島からの国語科教育モデルと震災時間論』(コールサック社,ISBN:978-4-86435-437-0) 2)髙橋正人(2020)「「文学国語」におけるアンソロジー教材の開発~是枝裕和「ヌガー」における〈世界の発見〉をめぐって~」(『言文』第67号、2020、pp.32-47査読無し) 3)髙橋正人(2019)『少年の日の思い出』(Jugendgedenken)の多層構造分析に関する研究~「眼(Auge)」「指(Finger)」「箱(Kasten)」をめぐって~(『福島大学人間発達文化学類論集』第30号、2019、pp29-44) 4)髙橋正人(2019)「小津安二郎監督『東京物語』の教材化に関する研究~高等学校「文学国語」における映像作品の可能性をめぐって~」(『福島大学人間発達文化学類論集』第29号、2019、pp37-52(査読無し) 5)髙橋正人(2019)「『論理国語』における深い学びを実現するために-『読むこと』の学習における問いとパラダイムシフトをめぐって」『福島大学総合教育研究センター紀要』第26号、2019、pp.7-14(査読有り)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で構想している教材モデルの独自性は、教材を、本文・筆者(作者)の思考過程・思考構造という多層構造を有した構造体として捉え、教材そのものに教材に至る生成過程そのものを提示することである。いわばブラックボックスとしての教材を、多角的・多面的な動的な生成過程を経た上で成立したものとして、生徒が主体的に思考の過程を辿ることができるように可視化することである。 2019年度の研究成果の一つである髙橋正人(2020)『文学はいかに思考力と表現力を深化させるか―福島からの国語科教育モデルと震災時間論』(コールサック社,ISBN:978-4-86435-437-0)において、教材へのアプローチを提示することにより教材に内在する多層構造を発見し、新たな知見を得るためのプロセスを明示することができた。 また、主要な論考である髙橋正人(2019)『少年の日の思い出』(Jugendgedenken)の多層構造分析に関する研究~「眼(Auge)」「指(Finger)」「箱(Kasten)」をめぐって~(『福島大学人間発達文化学類論集』第30号、2019、pp29-44)及び髙橋正人(2019)「小津安二郎監督『東京物語』の教材化に関する研究~高等学校「文学国語」における映像作品の可能性をめぐって~」(『福島大学人間発達文化学類論集』第29号、2019、pp37-52(査読無し)によって、テクストに対する多面的・多角的な構造理解が進み、従来の単層構造の教材にはない、思考過程における発見や知の刷新並びに思考による知の枠組みの変遷のプロセスを再現化・可視化するための手法を提示することができた。 これらの論考により、生徒自身が自らの知の在り方を問い直し、思考の在り方そのものを創造的に捉え、パラダイム転換を図る方途の一端を明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、2020年度以降においては、思考力育成に係る先行研究の整理を継続して行うとともに、新学習指導要領の「現代の国語」及び「論理国語」はもとより、「言語文化」及び「古典探究」を視野に入れて、古典作品『源氏物語』の「若紫巻」における時間構造の把握を含め、認知心理学等の知見についても研究を進め、思考力育成を図る視座に立った教材分析及び授業モデルの開発に取り組んでいく。 また、「深い学び」に関する思考力育成のプロセスを明らかにするとともに、研究成果の一つである髙橋正人(2020)『文学はいかに思考力と表現力を深化させるか―福島からの国語科教育モデルと震災時間論』(コールサック社,ISBN:978-4-86435-437-0)において示した教材へのアプローチを実際の授業にどのように生かしていくかについて検証を行っていくこととする。その際、教材に内在する多層構造をどのように発見し、どのように新たな知見と結び付けるかに着目して研究を進めていきたい。 さらに、教職大学院における授業実践への指導を通して新学習指導要領の趣旨を生かした理論と実践との往還的な検証を行う中で、既存の教材にはない多層構造を有した新たな教材モデルの提示を目指す。具体的には、第一層にあたる教材本文に加え、第二層として思考の変容過程を示した教材を提示し、教材の生成過程を可視化し明示するとともに、思考の生成過程そのもののプロセスを追体験することが可能となる方途について研究を進める。 併せて、第三層として教材における言葉に着目して本文の底流に流れている思考の枠組みの構造や他の言語に翻訳されている教材作品を提示し、プレテクスト及びメタテクスト等の複数テクストを基にした多角的な視野に立った思考の在り方を解明していきたい。
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Causes of Carryover |
計画的に活用したが、少額の残金が生じたことから、次年度計画的に図書購入に充てる。
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