2020 Fiscal Year Research-status Report
漢字語彙の運用力を育成するためのカリキュラム開発に関する研究
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19K02706
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
冨安 慎吾 島根大学, 学術研究院教育学系, 准教授 (40534300)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 漢字学習 / 方略 / 学習観 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、2019年度に引き続き、【評価方法の開発】を行うため、漢字学力についての仮説を作成した。2019年度に作成した仮説については、論文として投稿したが採択されなかった。そのため、仮説の精度を見直すため、(1)漢字観という側面を焦点化した検討 (2)筆順という対象に焦点化した検討 の2点を試みた。 (1)については、先行研究から、「漢字観」を調査していると考えられる質問紙調査を収集し、その分析を行うことで、漢字観の構成要素についての仮説を作り、大学生を対象にして、それに基づく試験的な質問紙調査を実施した。そこから得られた問題点をもとに、理論的な検討を行い、漢字観についての仮説を生成した。このことにより、漢字観についての評価を行う際の枠組みを得ることができ、以後の調査に用いることができるようになった。 (2)については、筆順という対象について、その学力としての性質を批判的に検討するため、先行研究の調査・分析を行った。特に、過去の筆順調査によって示されたデータをもとに、学力としての筆順についての言説を批判的に分析し、【理解・表現方略】や【漢字学習カリキュラム】上において、筆順を学力としてどのように扱うべきかを検討した。このことにより、【評価方法】として、筆順を対象とした場合にどのような方法がありうるかを検討することができるようになった。 2021年度は、これらの結果に基づき、特に漢字学力の仮説に立脚した【評価方法の開発】に注力する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、2年度目に【評価方法の開発】とその方法の実施を行う予定であった。しかし、この計画は次の2点から見直しが必要となっている。 (1)計画当初に予想していたよりも漢字学力についての先行研究が十分ではなく、学力についての仮説から構築する必要があった。そのため、評価方法の開発に着手する以前の理論的検討に多くの時間を使うことになった。 (2)質問紙調査の実施について、コロナ禍の状況にあって、小学校・中学校での調査が憚られる状況があった。この点は2021年度においても同様であるが、状況を判断しながら教育現場に負担のない実施方法を検討したい。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度においては、2020年度に検討した仮説をもとに、【評価方法の開発】と実施を行う。その際、【評価方法の開発】については、全国の高校入試を中心に、学力評価の実態についての調査を並行して実施する。これは、既存の漢字学力についての検討が遅れていたのと同様、評価方法についても単純な「読み/書き」中心の評価にとどまっているのではないか、という仮説を検証する必要があるためである。 作成した評価方法については、質問紙調査の形で大学生および高校生・中学生・小学生などを対象に調査を行う。 【評価方法の開発】の中で、漢字学力の特に「運用面」をどう評価するかについて、【漢字語彙に関する理解・表現方略の記述】を行う。一方で、【漢字学習カリキュラムの開発】についての実施は難しいため、本研究では、評価方法を開発した上で、そこから考えられるカリキュラムの提案を行うものとする。
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Causes of Carryover |
昨年度はコロナ禍の状況にあって学会や調査等の出張を行うことができず、計上した旅費を用いる機会が生じなかった。
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Research Products
(2 results)