2020 Fiscal Year Research-status Report
創発的な価値生成プロセスを促進する演奏表現指導力に関する研究
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19K02710
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
菅 裕 宮崎大学, 大学院教育学研究科, 教授 (30272090)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 音楽学習 / メタ認知 / 自己調整学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
宮崎大学附属小学校における旋律づくりを課題とする授業の様子をVTRに撮影するとともに授業中のグループ学習における児童の対話をボイスレコーダーで録音した。授業中の教師と児童の発話についてWhitebread et al.(2009)のCoding Schemeにもとづきコーディングを行い,メタ認知的思考に関わる発話の出現頻度とその内容について分析した。その結果,教師は,旋律の特徴と表現したいイメージとの関係についての〈モニタリング〉に基づく自己調整的な学習を促そうとしていた。これに対しグループ学習中の児童の思考は,ルールの遵守と作った旋律を演奏する際の演奏の出来栄えに向けられており,教師の意図にも関わらず,作った旋律の特徴と実際の響きの質を関連付けながら省察し,自分たちの表現したいイメージへの接近を図る創造的な学習には至っていないことが明らかとなった。「知識を相互に関連付けてより深く理解したり,問題を見いだして解決策を考えたり,思いや考えを基に創造したりすることに向かう過程」が重視される中,このことは,音楽の授業の改善を目指していく中で解決していくべき非常に大きな問題であるといえる。 この結果に基づき,次の3つの提言を行った。 1.課題の手順を明確に示すだけではなく,その際に使用すべきメタ認知的方略のモデルを提示する。 2.メタ認知的方略の重要性と意義について確認する場面を授業の中に設ける。 3.学習者に対してメタ認知的思考過程の意識的な言語化を行わせる。 児童・生徒にメタ認知的思考を促すグループ活動の設定とそのための教師の具体的な手立てについて検討することが今後の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染症対策により,県をまたぐ移動や学校での音楽授業に制限がかかったため,予定していた調査活動を実施することが困難となった。このため,今年度は,附属学校における歌唱や器楽を伴わない授業に関する調査と先行文献の精査に傾注せざるを得なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
現在先行文献に関するレビュー論文を作成中である。また今年度は,ICTを活用し,特に音楽授業中の児童・生徒のグループ活動に注目した研究を進めていく。音楽に関する創発的学習プロセスについては,メタ認知や自己調整学習の視点からの研究が蓄積されているものの,その多くが1対1による専門的なレッスン場面を対象としたものが大部分である。そこで小・中学校音楽科授業中の児童・生徒のグループ学習中の発話に注目し,音楽表現を協働的に形成していく際の集団的なメタ認知的・自己調整的思考プロセスを明らかにするとともに,そのプロセスへの教師の支援の効果についても分析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の影響により,予定していた調査や海外出張のための旅費の使用ができなかった。今年度中に県をまたぐ移動制限が解かれることを期待し,調査等の旅費として使用することを計画している。
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