2019 Fiscal Year Research-status Report
The Developmental Study of Educational Management System for Distributed Leadership
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19K02715
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
木岡 一明 名城大学, 農学部, 教授 (10186182)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
末松 裕基 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (10451692)
雲尾 周 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (30282974)
織田 泰幸 三重大学, 教育学部, 准教授 (40441498)
川口 有美子 公立鳥取環境大学, 環境学部, 准教授 (40616900)
田中 真秀 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (50781530)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 分散型リーダーシップ / 教育マネジメント / システム開発 / 教職員のキャリア構成 / 学校事故 / 教員リーダー / 他職種構成 / 組織行動連鎖 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、学校組織の動態に対して、失敗事例も踏まえたより精緻に効果的な「分散型リーダーシップ」を発揮する主体間の関係を解明し、その関係が持続的に維持される教育マネジメント・システムを設計して、実践に適用可能なモデルを開発することを目的としている。「分散型リーダーシップ」の効果的な発揮には、校長等による階層的・集中的リーダーシップよりも、特定のミドル層に限定されない多様な構成員による状況に応じたchangeable(交換的)な働きかけと、その働きかけがアクティブとなる場・機会の持続的創発を必要とするのではないかと仮説を持ち、今後は仮説検証も企図している。 本年度は、研究の基盤を形成するために、関係文献の整理と分析、予備的なケーススタディを中心に進めた。また、3月に全体会(第1回研究打ち合わせ)を実施し、本研究の課題意識の共有とともに、採択決定後の各自の研究進捗状況について報告を行った上で、今後の研究の方向性について検討し、①国内リサーチ、②国際比較(海外調査)、③異分野比較、④リーダーシップ理論(アメリカ)、⑤異校種比較、⑥困難に置かれた事例(学校事故判例等)のリーダーシップ構造に着目して行った。上記の課題について、文献研究、海外事例等、各分担者が検討してきた報告をもとに、そこから見られる「分散型リーダーシップ」の在り方について議論・確認することができた。それらの検討を通じて、①分散型リーダーシップの明確な定義がないがどのように位置づけるのか、②分散型リーダーシップはミドルリーダーが機能しなくなったから生じたのではないかという示唆を得た。今後は、議論を深め、次年度は研究成果を学会発表や論文化につなげていく。ただし、新型コロナウィルスの沈静状況によって、国内調査については、居住地域に限定して進めることや、海外調査については、延期せざるを得ないことも視野において進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は6つの視点について各自が状況の整理と今後の研究の方向性を明確にすることを目標にしていた。文献により基礎情報等を把握することができたが、年度末の調査については、社会的状況で断念せざるをえなかった。 ①国内リサーチでは、事例校において、ミドルリーダーの異動に備え、若手教員に主任業務を与え、ミドルリーダーをその相談役に位置づけたり、職員室や廊下などで機を見て機会指導をすることで校長の意図の浸透を図っており想定通りであった。②国際比較は、イギリスにおける「システムリーダー」に関する政策の展開とそれらリーダー像の模索の経営について検討した。特に、イングランドとスコットランドの政策展開や改革の模索において、リーダー像の違いや育成プログラムの相違を検討した。③異分野比較では「分散型リーダーシップ」を採り入れたIT企業、医療・福祉分野や社会教育分野において、調査対象となる組織の選定を行った。④リーダーシップ理論について、英語文献を中心に教育における「分散型リーダーシップ」に関する文献研究を進めた。すなわち,アメリカ・カナダの研究者(K.Leithwood, J.Spillane, D.Mayrowetz, A.Hargreaves)の文献に注目して理論枠組みの全般的な整理・検討を行った。⑤異校種間比較については、国内リサーチに連動して鳥取県内における学校の予備調査を進めた。地域環境や児童の実態が対照的である2校の中規模小学校にて、中学校との連携に課題を有しつつ、校長間の相談・連携が強まってきていること等が明らかとなった。⑥困難校におけるリーダーシップについては、学校における困難な事情について学校事故判例の分類を行った。また、管理職のマネジメント能力について他職種に調査をおこなった。 こうした検証が進められており、やむを得ない遅れはあるものの、おおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで同様、研究メンバー各自による文献調査や訪問調査の実施を中心に行いながら、それぞれが国内外の事例調査を実施する予定であるが、海外調査は渡航が許可されるかどうか、現時点では判断しがたい問題を抱えている。 ①医療・福祉分野では社会福祉協議会、社会教育分野では公民館・図書館・博物館、NPO等では災害系・若者支援系の団体をリストアップし、訪問可能になったら訪問調査を行う。②D.Mayrowetzの文献に注目して、「活動再設計としての分散型リーダーシップ(Distributed Leadership as Work Redesign)」モデルについての精緻な理論的検討を進める。③システムリーダーの発想が展開されるに際して、特に学校改善上の役割がどのように期待されているのかを検討する。なかでも他校支援における専門性の発揮のあり方を検討する。また、それらの展開のなかで、イギリスとスコットランドにおいて、分散型リーダーシップに対する議論がどのように展開されているかを、受容と課題の受け止め方に注目して考察する。④昨年度の2小学校での継続調査と、規模の大きい県立特別支援学校での調査を実施予定である。インタビュー調査を中心に、学校行事や学校の危機対応における分散型リーダーシップの態様を明らかにしていく。⑤地域協働活動を中心とした教育実践を行っている公立高校に着目し、調査可能になったら訪問調査を行う。基礎自治体を越えて地域社会との連携による教育実践を行った定時制高校での継続的実践に着目し、「分散型リーダーシップ」による組織行動連鎖の生成と、その後の持続あるいは消滅の過程を調査する。⑥様々な危機(リスクだけでなく広い概念)の組織行動について文献整理をし、経営学的な視点で分類を行う。 以上を通じて、令和3年度の学会での共同研究発表に向けて、課題の整理や共有を進める予定である。
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Causes of Carryover |
令和2年度は、各パートで本格的な現地フィールド調査の展開を予定している。残額はその調査旅費を捻出すべく、各研究メンバーが効果的・効率的に予算執行を進めてきた結果である。繰越額を含めて、次年度使用額を活用しながら各パート調査を本格化し、全体考察・成果発表につなげる計画である。
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