2020 Fiscal Year Research-status Report
動物園を活用した保全教育プログラムと教材の開発と評価
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19K02721
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Research Institution | Japan Monkey Centre |
Principal Investigator |
赤見 理恵 公益財団法人日本モンキーセンター, 学術, キュレーター (50414107)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高野 智 公益財団法人日本モンキーセンター, 学術, キュレーター (90370197)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 動物園 / 博学連携 / ESD / SDGs / 保全 / 霊長類 |
Outline of Annual Research Achievements |
ESD(持続可能な開発のための教育)の観点はさまざまな教科で盛り込まれているが、特にグローバルな視点の学習は子どもにとって自分とのつながりを実感しにくい。一方、動物園は子どもにとって親しみのある場所であり、絶滅の危機にある野生動物はESDの題材としての可能性を秘めていると考える。そこで本研究では、日本モンキーセンター(以下JMC)で培ってきた博学連携の土壌や研究者とのネットワークを活かし、教員のニーズ調査や先行事例調査を経て保全教育プログラムおよび教材の開発とその評価をおこない、得られた知見を動物園における保全教育ならびにESDを意識した教育の発展に役立てることを目的とした。 ① 「教員を対象としたニーズ調査」では2020年度JMCに来園した約30校の教職員にアンケートを実施し、教材や教育プログラムについてニーズやアイデアを収集することができた。 ② 「動物園内外の先行事例調査」は新型コロナウイルス感染拡大の影響で実施することがでず、文献調査などを進めた。 ③ 「専門家を誘致しての実践」では若手研究者を招いた京大モンキー日曜サロンを5回開催した。またオンラインを活用した実践に取り組み、2021年7、8月には日本霊長類学会との共催で全5回の「動物園飼育員と研究者が語る 霊長類学オンライン体験講座」を、2021年3月にはTABICAのSDGsイベントに協力し「動物園と野生のバーチャルツアー」を開催した。2020年度に予定していた保全教育団体ShoeZを招いたイベントは感染症対策のため2021年度に延期し、開催に向けた打ち合わせをすすめた。 ④「保全教育プログラムおよび教材の開発とその評価」に着手し、①のニーズ調査の結果をうけ開発内容を検討した。その1つとして、ペット目的の密輸が問題となっているスローロリスについて京都市動物園と共同で絵本を開発し、現在評価をおこなっているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、本研究の拠点となるJMCは2020年4月から5月にかけて1ヶ月以上「臨時休園」となり、その後も「部分開園」の状態が続いている。春や秋に予定されていた学校団体の校外学習は約75%が中止となり、実施できた場合も制約が多く、実践を重ねる機会の多くが奪われてしまった。また人の移動が制限されたことにより、②動物園内外の先行事例調査は、文献調査をおこなうにとどまった。 そのような中ではあるが、①教員を対象としたニーズ調査は、件数は少なくなったものの実施することができた。③保全教育や霊長類学の専門家を誘致しての実践は、一部をオンラインを活用する形に変更し、新しい試みを実施した。④保全教育プログラムおよび教材の開発とその評価には、2020年度より取り組んだ。当初は対象種を1種にしぼり、現地への取材もおこなって教育プログラムと教材を制作する予定であったが、感染症拡大防止の観点から海外を含む生息地への取材は取りやめ、そのかわり1種に限定せず絶滅のおそれのある複数種の霊長類を対象として、本研究をすすめることとした。その一つとして2020年度中にスローロリスの絵本が完成した。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は最終年度となるため、特に④保全教育プログラムおよび教材の開発とその評価、および成果公開に力を入れて研究を推進する。 ① 教員を対象としたニーズ調査は、2021年度の校外学習の数が少なかったため、2021年度も継続して実施する。 ③ 保全教育や霊長類学の専門家を誘致しての実践は、若手研究者を招いた京大モンキー日曜サロンをオンラインと会場開催のハイブリッド形式で開催する。また保全教育団体「ShoeZ」を招いて、キツネザルをテーマとした新しい教育プログラムを2021年10月に実施する。 ④保全教育プログラムおよび教材の開発とその評価は、当初は1種の霊長類を選定し、生息地への取材などを経て教育プログラム・教材開発をおこなう予定であった。新型コロナウイルス感染拡大の終息を期待し、生息地への取材を延期していたが、完全な終息が見込めないことから当初の計画を一部変更する。海外の生息地への取材は中止し、1種ではなく複数種の霊長類を対象としてすすめることする。教員を対象としたニーズ調査からは、新型コロナウイルス感染対策の一環としてGIGAスクール構想が急速に進展し、小中学校においても1人1台のタブレット配備が進んだ現状を踏まえ、オンラインで子どもたちが自ら調べ学習ができる教材への要望が聞かれた。そこでWeb上で閲覧でき、事前事後学習でも活用できるWeb霊長類図鑑の開発を検討しているところである。単なる図鑑ではなく、動物園での観察体験や、ESDの視点に導く教育プログラムにも活用できるよう、指導案や活用例、貸出用実物教材などもあわせて開発する予定である。また2020年度に制作したスローロリスの絵本の評価をおこなう。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の終息を期待し、先行事例調査や教材開発のための取材などの出張を延期していたこと、学会等がオンライン開催となったことが主な理由である。 次年度が最終年度となることから、感染症の終息は期待できないと判断し、計画の一部を変更して使用する予定である。具体的には、海外の生息地への取材は中止し、1種ではなく複数種の霊長類を対象としてすすめることする。旅費を物品費、人件費・謝金、その他に振り分け、開発する教材に、教員からのニーズのあったオンラインで活用できる教材を加える予定である。
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Research Products
(9 results)