2019 Fiscal Year Research-status Report
中等国語科における批判的読解・表現力の形成的評価に関する比較調査研究
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19K02732
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
間瀬 茂夫 広島大学, 教育学研究科, 教授 (90274274)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 中等国語科 / 授業研究 / 比較調査 / 形成的評価 / 国際バカロレア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、世界の中等学校の母語教育では,現実的な文脈において有効に働く高次の言語能力「批判的読解力」を身につけさせることが重要な課題となっているととらえ、研究の目的を,日本と国際バカロレア,欧米の大学入学資格試験の改革もふまえて,日々の授業における批判的読解・表現力の形成的評価のあり方について,比較調査を通して、それぞれの特徴を明らかにすることを目的とする。こうした研究目的の下、初年次には、授業分析を中心とした次のような研究に取り組んだ。 一つ目に、アメリカのシカゴ大学実験学校の高等学校部において、「English II」の授業観察を行った。ジンメルを取り上げた授業で、1)分析の観点の教授、2)短いテキストを使った実演および練習、3)テキストの広い範囲を対象にした分析、4)結果の発表と共有、評価という授業過程で、明示的な指導、ペアワークによる言語活動といった現在の我が国の目指すアクティヴ・ラーニングのモデルが見出された。また、形成的評価も十分に行われていた。 二つ目には、ドイツのライプツィヒ大学において、中学校国語科(ドイツ語)におけるゲーテ「ファウスト」を取り上げた授業ビデオによる授業分析に参加した。文学の解釈において、クラスというゲマインシャフトにいる個人が、どのようにゲゼルシャフトと関わりながら解釈を構築するかという過程について分析を行った。 三つ目に、国内において、国際バカロレアのミドル・イヤー・プログラムの「竹取物語」を扱った国語の授業を観察した。学習者自身が、テクストを読み、要約し、物語に対する個人のものの見方の違い、多様性について、教師がファシリテーターとなって自主的・対話的な学習を行っていた。三つの授業研究を通して、アクティヴ・ラーニングにおける学習課題および意図する身につけるべき能力の違いや、協働的な過程における形成的評価の共通性をとらえることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、イギリスでの授業観察および授業研究を計画していた。しかし、うまく調整が進まず、代替策として、アメリカのシカゴ大学実験学校高等学校部における調査を実施した。その点では、イギリスの調査が遅れている。また、計画では、ドイツでの調査は当初計画していなかったが、具体的な形で実施することができた。ヨーロッパにおける母語の授業という点では、こちらも代替の調査として成立した。国内における国際バカロレア校における調査は、計画通りに進んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、海外における調査は、難しく、研究計画を変更する必要がある。代替の研究として、国内におけるいくつかのタイプの異なる学校における調査を計画している。具体的には、1)学習指導要領に基づいた通常のカリキュラムによる国語科授業、2)中高一貫カリキュラムによる革新的な国語科授業、3)国際バカロレアのミドルイヤープログラムによる国語科授業、4)国際バカロレアのディプロマ・プログラムによる国語科授業の4者について、授業観察および授業分析を行い、それぞれにおける形成的評価のプロセスについて分析したい。
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Causes of Carryover |
イギリスにおける調査の調整がうまくできず、アメリカでの調査となったために、交通費および滞在費について出張費の差額が生じた。今年度は、国内での調査が中心となるが、調査校を増やし、研究費を適切に使用したい。また、世界における新型コロナウィルスへの感染の状況を見て、可能ならイギリスへの調査に出かけられるよう、研究費の使用について調整を行って行きたい。
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Research Products
(6 results)