2020 Fiscal Year Research-status Report
中等国語科における批判的読解・表現力の形成的評価に関する比較調査研究
Project/Area Number |
19K02732
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
間瀬 茂夫 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 教授 (90274274)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 文学の授業 / 批評文 / 書くこと / 形成的評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、新型コロナウィルスの感染が国内のみならず世界的に拡大したことにより、計画していた国内と海外の学校での授業観察がほとんどできなかった。そのため、一部の国内の中学校で実地を行った他、前年度(2019年度)に行った共同研究の調査データの再解釈を行うとともに、海外に関しては文献による調査を行った。 まず授業の実地調査に関しては、広島県内のIB校で授業観察および教師へのインタビューを行った。概念型カリキュラムに基づいた母語教育において扱う概念の実際およびそれらに基づいた授業づくりのプロセスについてデータを得て、現在分析を行っているところである。 前年度行った共同研究は、高等学校における文学作品に関する批評文の学習指導をテーマとしたものである。広島県内の高等学校における年間を通した実践の記録を対象に行った。批評文のモデル学習により批評の方法および批評文の書き方を学び、批評文を書くという一連のプロセスにおいて行った、学習同士の相互評価と教師による評価について分析を行い、学会で口頭発表を行った。 海外における文献調査は、Brenton Goffがオハイオ州立大学に提出した博士論文「The Process of Change in the Teaching and Learning of Writing about Literature in an 11th grade Honors English Language Arts Classroom」を対象とした。アメリカの高等学校の文学の授業における批評文の指導の克明な記録に基づいた研究で、どのような枠組みに基づいて一年間の文学の授業が行われ、そのプロセスにおいてどのような評価を行うかを読みとることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナ・ウィルスの感染の世界的な感染拡大のため、海外の学校への訪問ができずに、国内の一部の学校にとどまったため。海外の学校における形成的評価に関する調査は、文献によるものにとどまったため。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も海外における調査の実施は望めない。したがって、海外に関しては、文献による調査に対象を切り替えて研究を行うこととする。一方、国内に関しては、昨年度の段階でインターネットを活用した授業観察の方法の開発を試みているので、それを活用した調査を行い、研究を進展させたい。また、感染の収束する時期を見てできるかぎり、国内のIB校への実地調査を行う。 一方で、現実的には、当初の研究計画を変更する必要もある。別の研究で共同研究を行っている授業者に新たに協力を依頼し、共同的な授業の設計と授業観察を行う中で、形成的評価のあり方について分析・検討を行うことを計画している。具体的には、一つは、昨年度の成果に挙げた2019年度に行った共同研究を発展させ、文学の批評文の指導における形成的評価のあり方に関する研究を行う。もう一つは、評論文の領域において、低位の学力にある学習者の方略指導の方法を開発するとともに、そこでの形成的評価のあり方について研究を行うことを計画している。 以上のように、複数のアプローチを組み合わせ、それらの研究を集約することで、全体として研究成果を出していく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響により、国内および海外において、計画の通り学校への訪問調査ができなかった。本年度も海外での訪問調査は困難であるため、文献調査の範囲を広げ、授業の具体的なプロセスに関するデータが掲載されている論文や図書を選んで購入し、分析・考察を行いたい。 国内に関しては、昨年度の予算でオンラインでの授業観察ができるよう、複数のカメラと音声を切り替えられるスイッチャーを購入するなど、機器の整備を行った。今年度は、そうした機器を学校の協力を許可を得て、教室に設置し、新型コロナウィルスの感染拡大の影響によって訪問しての調査が限られても、オンラインで授業観察を行い、そのデータを用いた授業分析を行いたい。その際、音声を記録する方法の検討が十分ではなかったので、ワイヤレスマイク等の機器を購入し、授業記録システムに組み込むことにする。こうしたオンラインによる授業記録システムは、コロナ禍から抜け出した後の授業観察や授業研究の可能性を広げることになる。
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