2022 Fiscal Year Research-status Report
3.11後のESD―いのちと暮らしの安全・安心を探究する家庭科の学びの構築―
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19K02736
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
大矢 英世 宮崎大学, 教育学部, 准教授 (50827441)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 家庭科 / 人権 / 民主主義 / 原発事故 / 安全保障 / SDGs / 主権者としての生活者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、東日本大震災原発事故後の生活課題に焦点をあてて授業実践を検討し、ESDの視点からいのちと暮らしの安全・安心を探究する授業構想および教材開発に取り組んできた。 家庭科の研究会において、人権に根ざした授業実践の検討を行い、その中で3.11後の暮らしの課題に着目した授業を継続して行っていくことの必要性を再確認した。 大学の現代社会の課題「くらしを見つめる」という授業科目の15回の授業を通した受講生の意識変容について分析に取り組んだ。原発事故に関しては、対岸の火事の感覚から脱することができなかった受講生も「高濃度放射線廃棄物の処分場が居住地に」の設定での話し合いでは、自分ゴトに迫ることができていた。核のゴミ問題をはじめとして、3.11後の生活の安全保障の問題は、持続可能な社会の構築のためには日本全体で考えていくべき重要課題であることが受講生には共通理解できたと考える。また、報道された文面をそのまま受けとめるのではなく、その裏側にどのような背景があるのか考えることができるようになったという振り返りの記述が多く見られた。この原発事故にまつわる報道について、学生たちは、自分たちで情報を入手し、検討を重ねる中からその背景の複雑さを実感することができ、情報リテラシーの向上につながったと考える。 これら現代社会の課題と向き合う家庭科の授業づくりについて「人権と民主主義の学びを家庭科から」のテーマで、家教連家庭科研究10月号の論説にまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
東日本大震災原発事故後の生活課題について扱った「くらしを見つめる」の授業を通した大学生の意識変容については、データ整理に時間がかかり、分析結果をまとめ上げるところまで進めることができなかった。質的分析には時間がかかるが、丁寧に結果をまとめ、生活者の人権に根ざした「いのちと暮らしの安全・安心を探究する授業構想」の提案につなげたい。
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Strategy for Future Research Activity |
3.11後の暮らしの安全・安心に関わる課題の15回の授業を通した学生の変容についての分析結果をまとめる。 また、事故から12年が経過した現在も住めない地域が残り、県外での避難生活を余儀なくされている人々や、被曝による健康状態の悪化で苦しんでいる被災者の現状は、原発の建て替え推進の基本方針を示し政府は原発推進政策の方向転換が起きている。この現状をどう考えるのか、家庭科の授業の中で、主権者としての生活者を育てる学びをつくる授業構想する。これからの社会をつくっていく若い世代に向けて、生活者の立場から被災地の人権について深く考える授業を考案したい。
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Causes of Carryover |
他教科を含めた授業実践および、研究動向、原発政策の動向を探究し論文をまとめるために研究会出席のための交通費、書籍が必要である。
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Research Products
(4 results)