2020 Fiscal Year Research-status Report
Developing the teaching material for clothing-life education with contents of Okinawa specific features: Especially fo the practicum of weaving and dyeing in home economics.
Project/Area Number |
19K02765
|
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
松本 由香 琉球大学, 教育学部, 教授 (70259274)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 沖縄 / 糸づくり / 衣生活教材 / 芭蕉 / 苧麻 / 綿 / 絹 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、沖縄の糸づくりの教材研究をテーマとして研究をおこなった。沖縄の布に用いられてきた芭蕉、苧麻、綿、絹の4種類の代表的な素材を取り上げ、その栽培、育成、収穫から糸づくりまでの方法を、それらの過程を実践し、教材化をおこなった。 芭蕉については、大宜味村津波の工房での協力を得て、糸績み体験をおこない、また教育学部にある畑で芭蕉木を栽培して糸づくりの教材原稿を作成した。苧麻については、宮古織物事業協同組合の協力を得て、糸績み体験をおこない、また教育学部の畑で苧麻の株植えをして栽培から茎の収穫、糸づくりまでの教材原稿を作成した。綿については、6月に種まきし、栽培から11月に綿花収穫、種取り、糸紡ぎまでをおこない、その体験から教材原稿を作成した。絹については、11月に3令の蚕の幼虫20頭の飼育を始め、12月にかけて繭になるまでを飼育、観察し、また年明けの1月には、一部の繭から蛾の成虫の羽化、雌の産卵までを観察した。そしてその養蚕の経験を教材原稿にまとめた。 教材原稿は、沖縄の糸づくり教材として、糸のつくり方を、自分の体験をもとにまとめていて、「沖縄の地域的特色を活かした衣生活教材開発―沖縄の糸づくり教材研究―」として、琉球大学教育学部紀要に2021年4月に投稿予定である。その教材の記述については、沖縄の染め織りにたずさわってきた人びとの糸づくりの試行錯誤の工夫や努力、染め織りの歴史の深さに思いをはせながら、糸づくりの楽しさ、できたときの充実感、自己向上意識などを体感できるようなものにしたいと思う。 今後も、現在栽培中の繊維植物の栽培を継続し、また2021年5月には、蚕の卵の孵化を試みたい。そうして教材の内容をさらに精選していきたい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度の計画については、芭蕉、苧麻、綿、絹の4種の糸づくりを、栽培、収穫、飼育からおこなうことを目的として、研究を実施してきた。 教育学部の畑を使用することができ、芭蕉や苧麻は、大宜味村や宮古島に行って、栽培から糸づくりの方法を聞き取り、体験し、それをもとに、教育学部の畑に若い芭蕉木、苧麻の株を植えて栽培し、それらの一部から繊維採りを実際にやってみることができた。また綿については、種まきから始め、発芽、生育、開花、綿の実の収穫をすることができ、種を取って綿の繊維から紡錘をつかって糸を手で紡ぎ出すことができた。紡錘も、市販のものの他に、かぎ針とダンボールで、自分でつくることができることがわかった。絹については、3令の幼虫からの飼育であったが、養蚕の体験は初めてで、虫の成長に喜びを感じ、また繭ができる不思議さを体感することができた。さらにできた繭から絹糸を採る道具を、ダンボール箱から簡単につくり、煮た繭から絹糸を引いて採ることができた。 芭蕉、苧麻、綿、絹の糸づくりをとおして、昔の人が工夫して糸づくりをおこない、衣服をつくってきたことの一端を体験することができ、このような体験した内容を、教材原稿の柱にすることができると考えていて、2020年度の本研究が、順調におこなうことができたと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度の研究テーマは、「沖縄の染めの教材研究」である。藍(琉球藍、インド藍、蓼藍)、福木、紅花、月桃が本来のテーマであるが、他にシャリンバイも沖縄で多く染めにつかわれてきた植物である。それらの植物を採集し、媒染剤を工夫し、染めの技法の教材を作成していきたい。 琉球藍は、栽培がむずかしいといわれているが、ここ4年ほど、教育学部の畑で栽培している。藍の発酵建て(石灰や灰汁、泡盛、水あめなどを加えて発酵させる)の方法が、伝統的な方法としてあるが、文献に記述はなく、職人の経験で藍染料である泥藍がつくられてきて、この藍建てもむずかしいとされる。実際に畑で栽培した藍葉から泥藍をつくってみたが、それをつかって染めても、これまで色が定着しなかったので、藍染めの職人に聞き取りをし、泥藍づくりと藍染めの方法をまとめて教材化したい。 また染液をつくって糸や布を染める方法のほか、エコプリントとよばれる草木染めが今、注目されている。身近にある花や草を採って、布で包み、重曹、酢、ミョウバンという食品店で入手できるものを媒染剤としてつかい、蒸して染める方法である。そこでハイビスカスの赤い花と雑草で試してみたところ、紫と黄緑のぼかし模様に染めることができたので、さらに花や草、葉の種類を変えて試し、作品づくりの教材をつくってみたい。 染めの研究は、何を染めるかも課題であり、2020年度の糸づくりを、2021年度も継続しておこない、染めることで、暮らしのなかで楽しんでつかうことができるものの試作にもつなげていきたい。
|
Research Products
(2 results)