2019 Fiscal Year Research-status Report
音楽聴取時における演奏者-聴取者間の相互作用の解析:拍への同期度による検討
Project/Area Number |
19K02769
|
Research Institution | Aichi Toho University |
Principal Investigator |
水野 伸子 愛知東邦大学, 教育学部, 教授 (30440556)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
津崎 実 京都市立芸術大学, 音楽学部, 教授 (60155356)
福本 徹 国立教育政策研究所, 生涯学習政策研究部, 総括研究官 (70413903)
安藤 久夫 岐阜女子大学, 公私立大学の部局等, 教授 (90387457)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 音楽 / 同時性 / 相互作用 / 拍 / 演奏者ー聴取者間 / 同期 / 手拍子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、音楽聴取時における演奏者―聴取者間の相互作用を同時性の観点から検証する。Schutz(1951)は音楽コミュニケーションを社会学の立場から「奏者と聞き手は音楽の流れの中で同時性を創出し相互に波長を合わせる関係を確立する」と説明したが、これを音響データから科学的に実証するものである。手拍子同期実験から拍知覚の発達を究明してきた自身の先行研究(水野ほか 2013-2015、2016-2018)での知見を基に、自明であると仮定され未解明の「演奏者―聴取者間の相互作用」を明らかにすることを目指す。具体的には、音楽聴取時における手拍子同期実験を実施し、演奏と手拍子による録音データの音響信号処理から打拍時刻を特定しその差を両群で比較検討する。 平成31年度・令和1年度は、条件統制の視点から実験方法を検討したのち演奏者―聴取者のコミュニケーション・チャンネルを操作した2群による手拍子同期実験を大学生対象に実施した。現在、実験で得られた演奏と手拍子の録音データをMATLAB R2019b上で音響信号処理し解析中である。 一方で、幼児対象に実施した音楽聴取時における同期実験結果を「拍への反応の度合いを示す同期率」「聴取者内の時間的まとまりを示す同期度」「1拍あたりの手拍子数」から再分析した。その結果、次に示す幼児期特有の拍知覚の発達過程を明らかにした。まず旋律のリズムの特徴を直接的に感じ、その後、拍節構造の理解とともに旋律と拍を階層的に捉え等間隔の拍を知覚するようになる(Mizuno&Tsuzaki 2019、水野・津崎 2020)。これらを踏まえ、幼児期における表現のプロセスを発達の観点から整理した(水野ほか 2020)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成31年度・令和1年度の計画は、実験方法の検討および実験に向けた環境整備等を行った後に、音楽聴取時における手拍子同期実験を実施することであった。実験デザインは以下のようになる。被験者集団を二つに分け別室でのピアノ演奏をリアルタイムに配信する。演奏の音はオーディオインターフェース(A I/F)とアンプを経由してスピーカーへ送り、補助的にビデオカメラで撮影した演奏映像をスクリーンへ映す。実験群の手拍子音はA I/Fを経由し演奏者のヘッドホンへフィードバックさせるが統制群はしない。この条件統制により演奏者は実験群の手拍子音を聴きながら演奏することになり、実験群と演奏者間のコミュニケーション・チャンネルは身体情報等が除かれ手拍子による「拍」のみが開いた状態を作り出す。以上の実験を、令和1年7月にA大学の学生68名の参加により行った。A I/Fを経由しDAWソフトを用いてパソコンに記録した演奏と手拍子の音響データをMATLAB R2019b上で音響信号処理し打拍時刻を特定することができた。このように、実験から基礎データを取得でき解析を進めており、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は、前年度に実施した実験データの解析を進める。演奏と手拍子の打拍時刻の絶対誤差や相対誤差を「拍」のコミュニケーション・チャンネルが開いている実験群と閉じている統制群とで比較する。解析は,誤差の二乗平方根を同期度の指標とし統計学的に処理する。さらに詳細な分析を加えたのち、演奏者―聴取者間の相互作用を同時性の観点から先行研究を踏まえて考察する。この研究成果を学会で報告するとともに論文執筆を行う。
|
Causes of Carryover |
音響データを解析する上でハイスペックのパソコンが必要となった。実験データを解析し考察していく上で、対照実験やさらに詳細な実験が必要となる可能性が出てきた。そのため、次年度の実験費用として、研究分担者や研究協力者らとの実験打ち合わせや実験参加者への謝金、及びデータ解析検討会議も頻繁に開催する予定であることから、それらの経費や旅費に使用する。学会等での研究成果を発表するための出張旅費、論文投稿費にも使用する。また、年間通じて文献や資料収集の旅費・経費にも使用する計画である。
|
Research Products
(3 results)