2020 Fiscal Year Research-status Report
地域・生活の課題を科学的に思考する消費者教育プログラムの開発と実践研究
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19K02788
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
濱田 栄作 琉球大学, 教育学部, 教授 (20413718)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 消費者教育 / 科学教育 / 環境教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,学校現場における消費者教育のさらなる充実を目的に,生活や地域の課題を理科学習に組み込み,それらの課題を科学的に思考するプログラムを開発するものである。 高レベル放射性廃棄物の処分問題の正しい理解には専門的な科学知識が必要となり,学校現場では扱いにくいテーマである。そこで,生徒間で地層処分場の合意過程を模擬体験できる討論型ワークシート教材を開発し,学校現場での活用を通して,生徒の興味・関心や合意形成に対する意識を継続的に調査した。2日後,1ヶ月後,3ヶ月後の時点における地層処分場の建設を決定する権利の順位と,地層処分に関する興味・関心の度合いについて調査したところ,個人毎の順位は合意形成をした順位がその後も高い一致性を示した。一方で,住民の高い優位性による懸念について伝えると,各個人は順位を再考し,合意形成時の順位と一致性が低下するが,再考後の順位は数ヶ月にわたって保持されることが明らかになった。また,7割以上の生徒が興味・関心を維持しており,本教材の有効性が示された。 消費者製品安全教育に必要な学習内容を検討するために,製品評価技術基盤機構の事故情報から過去13年間の製品事故を集計したところ,年間数千件の製品事故のうち消費者の誤使用や不注意,科学的知識の欠如による事故は二番目に多く,消費者製品安全教育としての理科教育の重要性が確認できた。 南西諸島で問題となっている海洋ごみについては,ごみの挙動調査を継続的に調査し,漂着ごみが海流の影響を強く受けることが明らかになったが,時期によって漂着ごみ数が極端に減少する地点もあり,漂着ごみの再流出も示唆された。また,従来の調査では注目されていなかったベトナム由来のごみが増えており,経済発展が顕著な東南アジア諸国を起因とする海洋ごみについて,今後さらなる調査が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り,社会的な課題としてとりあげた高レベル放射性廃棄物の地層処分問題をテーマにした討論型ワークシート教材を学校現場で活用し,その教育的効果について確認することができた。また,製品事故情報データベースから科学的リテラシーの欠如により発生した事故事例を抽出し,消費者製品安全教育としての理科教育の重要性が確認できた。さらに,海洋ごみの挙動調査では,漂着ごみの海流の影響について明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
開発した討論型ワークシート教材を活用した授業実践をすすめるとともに,新たに離島でのエネルギー環境問題をテーマにした討論型ワークシート教材を開発し,その教育的効果について検証する。また,高レベル放射性廃棄物の地層処分場の選定に向けた文献調査が始まった北海道寿都町と神恵内村における合意形成の過程についても調査する。 また,理科教育の視点から消費者製品安全教育を考察するとともに,アンケート調査によるさらなる実態把握を行い,消費者製品安全教育につながる理科教育の分野を掘り下げ,消費者製品安全教育の具体的な学習事例や教材について実践を通して検討する。さらに,海洋ごみについては調査を進め,環境教育用データベースの構築を目指す。 各テーマで得られた成果は,学校現場における実践や教育系学会において積極的に発表し,成果を広く周知する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症のため,予定した調査や学会が一部中止となったが,こちらについては,次年度の調査及び学会参加に係る経費として支出する。
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Research Products
(9 results)