2019 Fiscal Year Research-status Report
音楽科新人教師育成プログラムの開発:経験年数の異なる教師の実践知の比較を通して
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19K02796
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
高見 仁志 佛教大学, 教育学部, 教授 (40413439)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 実践知 / 新人教師 / 音楽科授業 / 学校音楽教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
音楽科では先行例のなかった,教師の「実践知(practical knowledge)」研究に基づく新人教師教育プログラム開発の礎を築いてきた。この取り組みは,「反省的実践家(reflective practitioner)」理論による教師教育への提言として結実したが,未解決の課題も残した。その課題とは,一人の教師の実践知に包含される二つの知,すなわち「即時の知」と「信念・価値観としての知」が,それぞれ別の被験者から個別に抽出されており,同一教師を対象とした包括的な解明がなされていない点である。さらに言えば,この二つの知の相互作用に関しても,未だ明らかにできてはいない。そこで,これらの課題を切り口として,音楽科授業を行う一人の新人教師から「即時の知」と「信念・価値観としての知」を包括的に抽出した。さらには,二つの知の相互作用も視野に入れた実践知解明を通じて,音楽科における新人教師教育への提言を試みた。 こうした実践知研究をベースに,新時代の学校音楽教育にも論究した。学校音楽教育は,学習指導要領等の改訂を重ねる度に発展してきた。しかし,ふと立ち止まってみると,学校音楽教育が抱えている課題について,十分な論議を尽くさないまま時代が進んでしまっていることもあるのではないかと思われた。令和時代の幕開けにあたり,昭和,平成という時代を経て,学校音楽教育で発展してきたことは何か,逆に課題となっていることは何かについて明らかにし,新時代における学校音楽教育のあり方について展望した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
音楽科授業における教師の実践知モデル(高見 他,2018)を再検討し本研究の基盤となる理論的枠組みを構築するとともに,実践知の顕在化に採用する「再生刺激法」(吉崎,1992)の妥当性と有効性を検証し手続きの詳細を決定することはできた。調査対象者として1名の新人教師が行う小学校音楽科授業を2台のカメラで録画,授業後可能な限り時間が経過しない早い段階で録画映像をみせ再生刺激法を用いて「何を考えてそう指導をしたか」「その考えの信条は何か」の問いに応える姿を分析し,新人教師教育の提言も行えた。しかし,これまでの申請者の研究(高見,2014)の積み上げを想定し,それと同条件の教職経験20年以上の教師に対する分析が上記のようにできなかった点で,やや遅れていると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
調査対象者として熟練教師を選定する。熟練教師は,勤務地域等で指導的立場にあり,新人1年目から毎年小学校音楽科授業を行っている者とする。教職経験20年以上の教師を選定する。こうして選定された熟練教師の音楽科授業の全映像を詳解しながら教師の発話プロトコルを分析し実践知を顕在化する。熟練教師と新人教師の比較を通して,とりわけ両者に大きくズレが生じる事象および認知の質的な差異に関して,実践知の重層構造の観点から分析を進める。その際,帰納的アプローチ(佐藤,2008)により考察を深める。また,演繹的アプローチとして「新人期に陥りやすい音楽科授業展開上の困難」(高見,2010)を分析視座として援用する。
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Causes of Carryover |
前倒し支払い請求額にしたがって研究を進めたが,旅費等で若干の使用額の変更があったため生じた。翌年度分の助成金と合わせて,新人教師熟練教師の実践知調査,それに基づく学会発表等の目的で使用する。
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Research Products
(12 results)