2022 Fiscal Year Research-status Report
Study on emotional expression of the intelligent machine for human-machine symbiosis in primary education.
Project/Area Number |
19K02806
|
Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
松浦 執 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (70238955)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | ヒューマノイド・ロボット / 初等教育 / ChatGPT / 共感性 |
Outline of Annual Research Achievements |
知的判断を機械が担う領域の拡大が急加速している。教育の場では新型コロナ感染拡大により強力に推進されたGIGAスクールは児童・生徒の個別最適化学習にAIが用いられている。今後は多くの労働がAIの影響を強く受けることが予想されており、人間の知的生活と知能機械との共生関係への知見の増進が求められる。本研究では初等教育上の課題として、知能機械との共生的関係において人間が機械にもつ情意的関係に着目する。2022年度はヒューマノイド・ロボットNAOによるオンライン・プレゼンテーションの開発に加え、ロボットSotaでの言葉遊びを実装し、科学館でのプレゼンなども試みた。ところが2022年11月にGenerative AIの一つであるChatGPTが公開され、その対話能力の圧倒的な高さが全世界で話題となった。そこでSotaにGPT-3.5のAPIでの会話に情意的雰囲気を含むような実装を試みた。労働におけるAIの影響が低いのは科学とCritical Thinking (CT)スキルを用いる分野であるという。一方、ChatGPTに知的活動を委ねてしまうことが問題視されている。そこで、CTスキルを育成している小学校の学級で、「ものの溶け方」についての実験を自ら検討させた後、グループごとにChatGPTで実験方法を尋ねて参考にする実験を試みた。CTを育成することが、知的機械との望ましい共生を可能にするのではないかという仮説である。対象児童に、事前に教科書を引用して自分の考えを書く課題に取り組ませたところ、引用が優勢で、自分の考えの割合は10~20%にピークを持つ低率な結果であった。同じ児童に上記の理科の活動を行わせ、児童に自由記述の感想を求めたところ、ChatGPTで参考になった内容よりも、不十分を感じたこと、重ねて質問したいことが数で上回った。ChatGPTとの対話がCTを誘発したと考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初はVstone製コミュニケーションロボットのSotaを用いて自然言語処理の深層学習モデルの活用を進め、学級での児童とのインタラクションを進める予定であった。しかし、新型コロナウイルス感染拡大により、学校でも臨時休校、分散登校、校舎内の徹底的な消毒、オンライン学習の推進、給食の黙食化、各種行事の規模縮小、行事での来賓や保護者参加の制限など、外部者が教室に入ることが望ましくなくなった。このような社会的状況のため、2020年度からは代替的な措置として、ウイークリー・オンラインクイズをヒューマノイド・ロボットNAOがプレゼンテーションすることでロボットの存在を準日常化し、クイズ内容や話しかたの構成での情意的コミュニケーションを試みた。 2020~22年度はコロナ感染拡大に校務の増大も加わり、研究の遅滞が著しかった。2023年5月現在、ようやく学校現場にも状況の復帰の兆しがある。一方、技術的には2020年11月に最初に公開された大規模言語モデル(LLM)の生成AI(GAI)であるOpen.AI社のChatGPTの高機能な言語対話が世界に衝撃を与えた。新たな産業革命につながるとさえ評されるこの技術がさらに急速に進展し波及している状況は、予想外の新しい状況と言える。知能機械との共生的関係には、機械の情意表出の要素とともに、人が知能機械に共生する時、依存関係に陥らないためにはCT態度の要素も考慮すべきである。これらの要素の効果にについて検討していきたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究は、小学校児童を対象として、当初は児童自身の言語活動を資源とし、機械との言語活動により人と知能機械との共生関係へのより良いあり方を探ることを構想していた。しかし、LLMが高いレベルの実用性で公開され、学習や仕事の仕方に大きな影響をもたらし始めている現在、LLMのGAIの成果とそれがもたらす状況においてでなければ実践的な有意義性に不足が生じる。CTの育成を基盤とした知能機械との共生という側面と、文化的な情意性を伴うことで得られる共感性に基づく共生の側面の両面からのアプローチが必要になったと考える。また、ネットワークデバイス上でChatGPTを扱うことと、キャラクタを持ったロボットの発話として子どもと交流する場合とを分けて考えたい。ただし、新型コロナウイルスが第5類に位置付けられるようになったとはいえ、学校はポストコロナでコロナの記憶を背負っての運営であるから、学校現場には慎重な配慮が求められる。この状況には大きな変化はないものと考えている。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大により予定していた小学校現場での活動が不可能となり、研究の協力者の転職など状況変化があり、研究方法の転換が必要になっていた。さらに3年間にわたり新たな大学業務負担や博士論文指導などが重なり、自らの開発時間確保が困難な状態となっていた。これらのため1年余り事実上の停止を余儀なくされた。また、 期間中に研究機器のメーカーサポートが終了となり修理受付を断られる不都合も生じた。一方でChatGPTの公開など新たな可能性も出てきた。ChatGPTを使用して研究を再開したい。
|
Research Products
(3 results)