2019 Fiscal Year Research-status Report
教師が苦手意識を克服し中学生にわかる授業ができる理科教師の育成:天文分野を例に
Project/Area Number |
19K02818
|
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
吉田 安規良 琉球大学, 教育学研究科, 教授 (30381198)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 教師教育 / 理科 / 中学校 / 天球儀 / ICT / 苦手 / 地学 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)平成時代の「日本における理科を教える教師教育研究」を概観した。平成時代に刊行された日本理科教育学会の学術雑誌『日本理科教育学会研究紀要』・『理科教育学研究』に報告されていた「理科を教える教師教育」に関する研究のほとんどは,教職志向の学生と現職教員に関するものであり,対象校種は小学校に関するものが多く,科目内容的には地学で天文学に関するものが多いことが目立った。 (2)市販の透視天球儀の中にウェアラブルカメラを組み込み、Wi-Fi接続したスマートフォンやタブレットPCで制御する教具を必要数追加製作した。2019年8月に、琉球大学において教員免許状更新講習【選択】を開講し、10名の現職教員の受講者を対象に改造した透視天球儀を教具に用いて教師教育を実践した。その結果として、受講者による講習の内容・方法についての総合的な評価、講習受講後の受講者の最新の知識・技能の修得についての総合的な評価の両方とも、全員から相対的に肯定的な評価を得た。 (3)研究協力者の協力の下、2019年12月に公立中学校で改造した透視天球儀を実際に生徒に使用させることで教具としての評価を受けた。その結果、視点変換が苦手な生徒の学習支援の一助として機能した。また、できる限り広角で撮影可能であることとバッテリーの持続時間の確保がウェアラブルカメラの選定ポイントとなることが分かった。 (4)天文分野以外への広がりを見据えて「マーカーレス型ビジョンベースAR」を利用した地層観察教材を試作した。ここから理科を教える教員に必要な教材・教具作成にICTを活用することに対する知識や技能を把握し、試作した教材の実用可能性を現職中学校理科教員に評価してもらった。スマートフォンを日常的に扱える学生にとって大学での学びを生かして独力でAR教材を作成することは容易であるが、授業観の差の影響から教材の完成度に対する評価は高くはなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成時代の理科を教える教師教育を俯瞰できた。改造した透視天球儀を一定数用意できたことにより、現職教員を対象にした教師教育に関する実践的研究を行うことができた。中学生による改造した透視天球儀の教具としての評価も得ることができ、大きく改良する必要性がないことも確認できた。
|
Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルス感染症の感染拡大を防ぐために休講・休校が実施される可能性が高く、とりわけ対面型での教師教育実践の時間確保が難しくなってきている。中学生を対象にした授業も時間的余裕の確保も難しいことが予想できる。ただし、現状としては教師教育実践として、教員免許状更新講習等の実施を予定通り進めるつもりである。 2020年度は研究協力者が中学校第3学年の理科を担当しないことが確定している。しかし、改造透視天球儀の更なる改良の必要性が低いことから、2019年度の授業実践を丁寧に分析することで、生徒が「わかった」と実感できる授業についての論考を深める。 ICTを活用した教材・教具の作成やICTを簡単に活用するための教師教育の実践的研究については、当初予定していた天文分野以外にも実験的に手を広げていくことを検討している。
|
Causes of Carryover |
当初購入の必要性を感じていたウェアラブルカメラ制御用のタブレット端末(iPad)については購入せずに別途必要数を手配できた。だが、2020年度(令和2年度)に購入を予定していたApple Mac Proについては2019年度に新型となり価格が高くなっており、消費増税に伴い論文刊行経費(投稿料)も値上がりしている。そのため、交付決定額で研究を進めることが難しくなることが予想できた。2019年度は予定していた研究がおおむね順調に進んだことから、2020年度に必要な設備費品や論文刊行経費を確実に確保するために、2019年度の支出を抑制して2020年度に備えることにした。これにより2020年度に購入予定だったMac Proの新型同等性能品の購入や学術雑誌への論文刊行経費(投稿料)の支払に余裕を持たせ、研究全体の進捗に影響を及ぼさないようにする。
|