2020 Fiscal Year Research-status Report
教師が苦手意識を克服し中学生にわかる授業ができる理科教師の育成:天文分野を例に
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19K02818
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
吉田 安規良 琉球大学, 教育学研究科, 教授 (30381198)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 教師教育 / 中学校 / 理科 / 地学 / 天文学 / 地質学 / ICT / 天球儀 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)前年度に行った教師教育実践の評価・感想を子細に分析した。参加者の約半数は、視点変換やイメージすることへの支援、学習への興味関心の喚起の点で改造した透視天球儀を肯定的に評価した。セットアップや天球儀そのものの使用法の理解に時間がかかり、天球上の星や星座の映像が見えにくく余計なものが映ることへの対応が指摘された。 (2)前年度に行った中学生に対する授業実践で得られた評価を子細に分析した。70人中57人の生徒から改造した透視天球儀を利用したことが天体の運動の理解に役だった旨の回答を得た。12人が「天球儀に慣れるまでが難しい」旨を指摘したが、実質3回の操作経験でほとんどの生徒が天球儀を操作できるようになり、地球の自転や公転と天体の動きの関係を考えることができた。 (3)教育ICT環境を活用できる教員養成の基礎資料として、中学・高等学校理科教員志望学生34人の教材探索力を把握した。8割の学生が、学校の授業で一般的に行われる授業者による説明を代替できる動画を含むコンテンツを提示した。ICTを活用したモデル実験や家庭での実施が相当困難な実験観察の代替を意図した解答が10人から寄せられた。学生は、動画や映像などを利用して児童生徒の理解へつなげること、知識の定着や技能の習熟をねらった個別最適化学習、児童生徒が自ら当該コンテンツにアクセスできるような指導、他単元や他教科など全体を通した活用を想定できていたが、児童生徒がコンピュータを使ってアウトプットすることは想定していないことが推察できた。 (4)前年度から整理していた平成時代の理科を教える教師教育に関する研究結果が『理科教育学研究』の総説論文として掲載された。前年度に開発したマーカーレス型ビジョンベースAR技術を用いた沖縄で実際に観察可能な断層としゅう曲に注目した地層観察代替教材とその評価を日本科学教育学会年会で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染症の感染拡大対応措置として、対面での教育活動の一時停止が影響した。そのため、当初想定していた教師教育実践をする機会が無くなった。今年度の実践で再検証するまで至らずに、前年度の実践の分析をするに留まり、改善策の評価が十分にはできていない。中学生を対象とした実践も同様で、時間的な見通しが持ちにくい教育実践的な研究に必要な授業時間が確保できない状況であった。研究への協力を呼びかけても、時間的な余裕が無いため天球儀を貸し出して生徒に紹介することまではできたが、生徒が実際に操作したり、授業者が演示しながら学習を進めたりしながら実践的な検証をすることはできなかった。 一方で、前年度の研究で得たデータを利用して、当初予定していた平成時代の理科教師教育を概観したものを総説論文としてまとめることができた。中学生を対象とした授業実践を分析し、ウェアラブルカメラを取り付けた透視天球儀の教材としての評価の整理を進めた。さらに、ICTを活用した地層観察代替教材の開発とその評価をまとめることができた。また、中学・高等学校理科教員志望学生のICTを活用した教材探索力を把握するなど、天文分野という枠に留まらない形で、理科を教える教師が苦手意識を持っている部分についての研究を一定程度進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルス感染症の感染状況とその対応状況を確認しながら、ウェアラブルカメラを取り付けた透視天球儀を用いた教師教育実践を進める。中学生向けの実践はこれまでの研究成果から大きな問題点がないことがわかったため、場合によっては追加実践は行わず、その成果を学術論文にまとめる。 天文学をはじめとした地学分野やICT活用は多くの教師が苦手意識をもっている部分であるため、天文分野に強くこだわらない形で、広く理科を教えるために克服すべき苦手意識を改善したり、生徒にわかる授業が提供できるための支援をしたりするために必要な基礎研究を進める。
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Causes of Carryover |
今年度は予定していた教師教育実践が新型コロナウイルス感染症の感染拡大対策の一環で中止となり、中学生を対象とした授業実践検証も同様の理由から実施できなくなった。そのため、実践的な研究に必要な物品を購入しなかった。 今年度は参加予定だった研究発表集会が、急遽オンライン開催や紙上発表のみでの開催となり、開催地まで赴く必要性がなくなったため旅費の執行がなかった。 今年度に購入予定だったパソコンについては、新型の発売による規格変更と製品の置き換えが予想され、研究で使用しているアプリケーションの対応が未定であった。納期的に今年度中の納入が難しくなったことも重なり、次年度に購入することにした。 次年度は、今年度購入予定だったものを購入するとともに、特に教師教育実践に必要な物品を購入し、実践に備える。研究成果を積極的に報告するため、論文の投稿・刊行経費や旅費として執行する。
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