2019 Fiscal Year Research-status Report
Study on Teaching Figure paintings by Active Learning
Project/Area Number |
19K02838
|
Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
松本 昭彦 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (00190512)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | アクティブ・ラーニング / 人物画 / 指導法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は4年間での実施計画であり、人物画像の分析を通し、キミ子方式を活用しながら主体的で深い学び(アクティブ・ラーニング)による人物画指導法の開発を試みようとするものである。 研究初年度である令和元年度には、研究計画に沿って、東洋の肖像画の画像データを収集するために、韓国の光州を拠点に全羅南道・全羅北道において調査活動を行った。とりわけ李氏朝鮮時代の国王の肖像画類をはじめ、韓国を代表する肖像画について知ることができた。さらに韓国の肖像画に関する書籍も複数入手することができた。 また、アメリカ合衆国では、西洋における肖像画の画像を収集するために、ワシントンDCにおいて、国立肖像館をはじめ、国立アメリカ美術館やナショナルギャラリーにも赴いたほか、オハイオ州にあるクリーブランド美術館でも同様の調査を行い、人物部分と背景との関係、画面に登場する小道具などについて画像資料を収集することができた。 アクティブ・ラーニングに関する調査としては、韓国全羅南道にある光州教育大学校の附属小学校での実践について、校長や教務主任などから詳しく話を聞く機会を得て、現地の児童や保護者が学校のホームページから予習のための動画の画面にアクセスできるシステムについても知ることができた。さらに、こうした家庭での予習に基づく学校の授業展開としての「反転授業」に関して、いくつかの書籍や論文等も入手することができた。 現在は、人物画、とりわけ、モデルが特定できる肖像画における表現について、頭像、胸像、半身像、七分身像、全身像ごとに、背景や衣装、小道具類との関係性の観点から、収集した画像データの分類に着手し始めたところであり、また、入手したアクティブ・ラーニングに関する書籍を読解しているところである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
松本キミ子が『絵のかけない子は私の教師』『三原色の絵の具箱』で提唱したキミ子方式という絵の描き方・教え方なら誰でも大抵のものを写実的に描けるようになることが、これまでの研究で明らかになっている。しかし人物がモデルの絵の場合となると、簡単に描けるわけでもないこともわかっているため、学校現場で人物画をどのように指導するかは重要な課題である。 そのため、本研究では東洋と西洋の人物画像を幅広く収集し、頭像、胸像、半身像、七分身像、全身像ごとに、背景や衣装、小道具などとの関係を明らかにするとともに、韓国での美術に関する反転授業の実践を手掛かりとしながら、アクティブ・ラーニングによる人物画指導法について、キミ子方式を活用して開発することを目的としている。 新学習指導要領に基づく小学校・図画工作科教科書に見られる人物画表現と照らし合わせて、学校現場で活用しやすく、授業者にとっても使いやすい指導法と評価方法について研究をするわけであるが、現在までのところで、東洋の人物画表現として、韓国の肖像画についての画像を収集してきたほか、西洋の人物画表現として、アメリカ、ワシントンDC及びクリーブランドでも人物画の画像を資料収集してきており、頭像、胸像、半身像、七分身像、全身像ごとに、背景や衣装、小道具などとの関係を分析しはじめているところである。 また、反転授業の形式による美術科の教科指導法については、韓国、光州教育大学校の実践を調査できたほか、関連書籍・論文等を入手でき、それら資料の読解に着手し始めたため、研究初年度としての進捗状況を「おおむね順調に進展している」とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
全く想定していなかった要素として、世界中で新型コロナウイルスの影響が拡がり、現在、海外渡航が非常に難しくなっているため、研究期間の2年目(全体として4年計画)である今年度は、当初予定していたように、東洋・西洋の人物画の画像データを収集する計画には、大きな支障が出ることが懸念される。 今年度内に海外渡航が可能になれば、当初の計画通りに韓国、イギリス、オランダ等での人物画の画像データ収集を行い、頭像、胸像、半身像、七分身像、全身像ごとに、背景や衣装、小道具などとの関係を分析する予定である。 国内での人物画の画像データを収集するにしても、多くの美術館が現在閉館中であるため、直接、自身の目で作品を見ながら画像データを収集することが困難な状況にある。代案として、画集からの画像データ収集を行うにしても、多くの図書館が新型コロナウイルスの影響により閉館していることから、今年度はインターネット検索の範囲内で画像の収集活動を行うしか方法はないのかもしれない。 また、昨年度までに収集した画像データの分析事項の入力については、入力作業の補助を依頼した外国人留学生(大学院生)が新型コロナウイルスの影響で、来日できていないため、自ら入力をするしかないと考えられる。 昨年度までに入手した海外のアクティブ・ラーニング関連の文献については、内容をよく読み、それらを参考にしながら、新学習指導要領に基づく図画工作科の教科書における人物表現を伴う題材について分析を進めて、キミ子方式における人物画の描き方・教え方を応用して、学校現場で活用しやすいような人物画指導法についての試案を作ることに着手したいと考えている。
|
Causes of Carryover |
カメラ、パソコンなどの物品費を予定より安価で購入できたことのほか、校務分掌としての業務(副学長職・国際交流センター長職等)のため海外調査の日程が十分にとれなかったこと、及び国内調査での旅行については全くできなかったこと、さらに海外で入手した論文の複写や図書などの文献類を郵送ではなく自身で持ち帰るなどして経費の節約にも努めたこと等により、次年度使用額が生じることになった。 翌年度分として請求した助成金と合わせて、主として、研究2年度目に予定している海外(ヨーロッパ及び韓国)での人物画像データ収集やアクティブ・ラーニング関連の文献資料収集等に予算を使用する計画である。また、国内での人物画像データの収集調査にも充当する予定であるほか、データ入力補助に関わる人件費についても使用の計画を立てているが、こうした計画はすべて新型コロナウイルスがいつ収束するかによって大きく左右されるものと考えられる。
|