2021 Fiscal Year Research-status Report
Study on Teaching Figure paintings by Active Learning
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19K02838
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
松本 昭彦 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (00190512)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 人物画 / 肖像画 / 構図 / 題材 / キミ子方式 / 図画工作科 / 美術科 / 教科書 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画に基づき、人物画の構図をより深く、より広く知るため、古今東西の肖像画の画像資料を収集・分析をした。研究計画3年目にあたる令和3年度には、韓国李朝時代の肖像画の構図解析を行い、その成果を「朝鮮肖像画の構図に関する研究-頭上空間の大きさや目の位置などからの考察-」としてまとめ、大学美術教育学会誌『美術教育学研究』に投稿し、掲載された(2022.3, 54, pp.329-336)。 研究の結果、頭像・胸像・半身像・七分身像のように全体像を切り取る肖像画では、全身を描く肖像画よりも頭上空間が大きい傾向があり、画面縦寸の10~15%程度の空間を設けるのが標準的であることが判明した。一方、全身を描く場合では2~4%程度に抑えられるものが多いこと等が分かった。 また、新指導要領に基づく小学校図画工作科教科書、及び中学校美術科教科書に見られる人物画題材を全て分析し、本研究(「アクティブ・ラーニングによる人物画指導に関する研究」)において課題となる点を整理する目的で、「小学校図画工作・中学校美術の教科書における人物のある題材 ―キミ子方式の人物の描き方との応用に関する考察―」を著し、所属研究機関の紀要『愛知教育大学研究報告, 教育科学編』に投稿し、に掲載された(2022.3, 71, pp.139-146)。 小学校図画工作科教科書に見られる人物表現の作例の多くが、自分が知っていることを概念的に表わす様式であったため、子どもたちには実際のモデルを使って人物を描かせる経験が必要だと考えられた。中学校美術科用教科書に見られる人物画の作例の殆どが視覚的リアリズムで描かれており、小学校段階において、見て描く経験が不足している子どもは、中学校に入学後、美術表現に自信を喪失したり、美術嫌いになったりすることが危惧される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年(2019年)からの4年間の研究計画のうち、1年目は当初の計画通りに、アメリカ及び韓国の美術館などで、人物肖像画の画像資料を収集することができたが、当該年度末頃から、世界的なコロナウィルス感染拡大が続いており、2年目(2020年)以降は、日本国内の美術館での人物肖像画資料の収集や、国内の肖像画家へのインタビュー調査、現行の図画工作科及び、美術科教科書における人物題材の分析、さらにアクティブ・ラーニングに関する知見を補強するための文献研究や実践的研究等を行ってきた。 しかしながら、未だに新型コロナウィルス感染状況が収束しないため、ヨーロッパにおける人物肖像画の調査や、資料を収集するための海外渡航ができていない。また、学校現場では子どもたちがマスクを教室で外すことができないため、授業中に鏡を見ながら自画像を描くことや、互いに顔を描き合うこと、グループでモデルをしながら全身像をスケッチし合うこと等が難しい状況にある。 それでも、令和3(2021)年度までに収集した人物画の構図の解析が終了したことや、教科書における人物題材についての分析を終えた点は評価してよいだろう。研究の最終年度にあたる令和4年度内には、学校現場で仮説を検証するための人物画の授業を実施する機会を得ており、成果報告書作成段階に進むことができると予測されるため、「概ね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年度に当たるので、仮想指導案による学校現場での授業実践を行い、これまでの3年間で得られた人物画の構図や、アクティブ・ラーニングに関するに関する知見等を踏まえて、成果報告書を作成することが今年度の課題であると考えている。 先ず、学校現場で仮説を検証するための授業を行う際には、コロナウィルス感染予防の観点から、授業中にマスクをしたままでも実施できる人物画の題材や指導法等について考える必要があろう。また、子どもたちが見て描くことに慣れるためのトレーニング法として、タブレット端末を利用して、撮影後にスキャンした自分や友人の顔をなぞって線描きすることで、長さや角度に対するスケール感を育成したり、普段気付かない顔の構成要素にも気づくことができると予測される。さらに、全身像における人体バランスについての学習には、顔の要素が小さいため、マスクを着用したままでも実施は可能であると考えるため、グループ学習による子どもたちの主体的な活動を計画している。 アクティブ・ラーニングには、反転学習(フリップト・ラーニング)を始め、多くの方法があるが、これまでの研究と実践で得られた知見によれば、図画工作科や美術科の授業においては、グループ学習や意見交換が有効であったことを踏まえつつ、題材を通して、学習できる内容が子どもの観察力や美観、自他への理解力等を育成できる内容になるよう工夫したい。 さらに、従来の絵画指導の中で常識のように考えられてきた《構図→りんかく→色塗り》というプロセスでは、「色塗り」という観念が量感(空間に対する意識)の育成を阻害していると考えられるため、着彩指導の方法に関する題材の開発にも取り組みたい。
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Causes of Carryover |
令和3(2021)年度内に、世界的なコロナウィルス感染拡大が収束するかもしれないという期待から、ヨーロッパやアジアの美術館で人物肖像画の構図について調査する目的で、海外渡航予算として執行する計画であったが、感染拡大が収まらなかったため、予算を使うことができなかった。 そのため、令和4(2022)年度の10月以前に、海外渡航が可能になれば、これまでにアメリカや韓国での調査で得られた知見を確認する意味で、ヨーロッパにおける人物肖像画の構図に関する調査用の渡航費用に充当する予定である。もしも当該時期までに実施が困難であると判断される場合には、ヨーロッパの人物肖像画に関する大型資料本を購入する予定である。 また、2022年度には、人物画指導法に関する仮説を検証するための授業を実施するため、デジタル機材やソフトウェアに係る費用や、成果報告書の作成費として予算を執行する計画である。
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Research Products
(2 results)