2019 Fiscal Year Research-status Report
中学校入学時のリアリティショックはその後の学校適応感にどのような影響を及ぼすか
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19K02853
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Research Institution | Hokuriku Gakuin Junior College |
Principal Investigator |
南 雅則 (南雅則) 北陸学院大学短期大学部, 食物栄養学科, 教授 (00827462)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 中学生 / 学校適応感 / リアリティショック |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の第1の目的は,中学生の学校適応感を外的適応感と内的適応感の2軸の関係から捉え,教師が生徒の状態を簡便な方法で把握することができるように,新たな学校適応感尺度を開発することであった。初年度は,尺度の開発のための調査項目の収集および予備調査を実施した。 調査項目の収集については,2019年5月に石川県内の中学1年生29名を対象に学校生活に対して感じていること、入学前に予想と学後の学校生活の違いを自由記述で求めた。その後,2名の現職の小中学校教員と教員養成系大学で教育心理学を担当する大学教員2名の計4名で自由記述の内容から絞り込まれた項目と,中学校生活リアリティショック質問項目(南ほか,2015)を参考に16項目の中学校生活に対するリアリティショック測定のための原尺度を作成した。なお,この尺度の信頼性・妥当性の確認,尺度項目の決定のための調査は研究協力校の事情により次年度(令和2年度)に行うことになっている。 また,学校適応感を外的適応感と内的適応感の2軸の関係から捉えることの有効性を確認するために実施した予備調査(2019年5月と9月に実施)では,外的適応感と内的適応感の下位因子間には一部を除いてほほすべてに有意な相関が見られ,このことから,新たな学校適応感尺度の開発に向けて,両尺度の全項目に対する主成分の抽出を検討するなど,次年度に向けての課題が明確になった。 さらに,9月の学校適応感を目的変数,5月の学校適応感を統制変数,予期不安とリアリティショックを説明変数とする階層的重回帰分析の結果から,予期不安が高い場合にはリアリティショックの影響は見られないが,予期不安が低くリアリティショックが高い場合には学校環境に対して,なじめていて穏やかに生活できるという感覚が低くなっていることが明らかとなり,生徒理解の資料としての活用の可能性を見出すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度(令和元年度)では,中学校生活に対するリアリティショック測定のための原尺度を作成し,尺度の信頼性・妥当性の確認,尺度項目の決定まで行う予定であった。しかし,現尺度の作成についてはおおむね順調に進展したが,研究協力校の事情により本調査が実施できず,尺度の信頼性・妥当性の確認,項目の決定が次年度(令和2年度)の見込みとなり,進捗状況としてはやや遅れが生じている。 学校適応感の尺度作成のための予備調査については,予定していた2校のうち1校で実施することができ,外的適応感と内的適応感の2軸の関係性の確認ができ,こちらはおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度実施できなかったリアリティショック尺度の信頼性・妥当性の確認,項目の決定については,調査データの一部は収集済であり,学会発表(2020年9月の日本教育心理学会)も含めて目途は立っている。また,新しい学校適応感尺度の作成については,予備調査の結果を踏まえて,尺度項目策定の手順の見直しを行い,再調査を実施する。再調査にあたり,調査実施ができなくなることも考慮し所属機関の関連校を含めた複数校への調査依頼を行う。尺度項目の策定にあたっては,その方法(多変量解析)について慎重に検討する。信頼性・妥当性の確認を経て年度内には尺度項目を決定し,本調査を実施する。次年度(2年目)研究経費の主たる使途としては,調査結果の報告を中心とした学会発表にかかる費用として予定している。 2年目から3年目にかけては,当初の予定に従い,本調査の結果をもとにアセスメントシートの開発に取り掛かる。本調査実施に協力してもらった中学校へのフィードバックとあわせ,学級担任が生徒の状況を簡便に把握し,教育相談等の資料として活用しやすいものなるよう現職教員の意見を取り入れたものにしていく予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は以下の2点である。第1に,2020年3月の日本発達心理学会第31回大会がCOVID-19の影響による「大会当日に会場には参集しないが大会としては成立したものと見なす」という大会本部の決定を受け,予定していた旅費が未使用に終わったこと。第2に,調査協力校の事情により研究の進捗状況に若干の遅れが生じたため,その調整等によりレビュー等のために予定していた関係図書の購入を見送ったためである。翌年度分と合わせた使用計画は,当初予定していた学会参加・発表(160,000円)と論文作成のための関係図書の購入(80,000円),調査依頼にかかる経費(封筒,プリンタインク等の物品費ならびに通信費)(40,000円)として使用する予定である。
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