2021 Fiscal Year Research-status Report
旧制高校入試における多面的・総合的評価に関する研究-現在の入試改革を見据えて-
Project/Area Number |
19K02854
|
Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
小暮 克哉 岩手大学, 入試センター, 准教授 (50782801)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 旧制高等学校入試 / 旧制高等学校長会議 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主な目的は、戦前期の旧制高校入試において、入試の実施主体である高校長がどのような教育的観点でその選抜を行ったか、受験者を送り出す中学校長がその入試に向けてどのような理念で教育指導を行ったかを分析し、学校間接続が潜在的に内包する「普遍的な問題」を考察するとともに現代の大学入試改革を考える際の着眼点を析出することである。 本年度は、前年度までに概ね完了した①研究開始時に収集済みであった入試実施関係文書等の資料整理、②旧制高等学校長会議の決議書の収集を基に、存命中の旧制高校関係者2名へのインタビュー調査を実施した。 また前年度から実施している、朝日新聞、読売新聞、毎日新聞の各紙での高等学校長会議及び高等学校入試関係記事の電子化については、文章の校正を行う等の作業を行った。新聞記事については、関係者インタビューの際にも当時を思い出すために有効なツールとして機能したこと、旧制高校長会議開催日に毎日記事を発行しているため、当時の審議状況を時系列的に把握するのに有効であることが判明している。本研究の主目的ではなかったが、後進の研究者のためにも、将来的に書籍化の可能性を探っている。 今年度は2名にとどまった元旧制高校生へのインタビューであるが、資料や新聞記事から明らかにされた高校長側・中学校長側とはまた違った思考の基に、受験者は受験校選びに際して、現在の大学受験と同様に様々な要素を探り、合格可能性を上げる検討を行っていたことは明らかであることが判明した。 今年度に関しては、上述の結果を基に7月と11月の2回にわたり科研費公開研究会をWEB開催し、参加者との意見交換を行い、研究の進化をはかった。なお、次年度は、旧制高校関係者へのインタビュー調査をコロナ感染症の状況も考慮しつつ更に行い、一定のデータ量を収集したのち、学術雑誌への投稿及び口頭発表等を行う準備をしている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナウイルス感染症の影響があり、当初予定していた旧制高等学校生に対するインタビュー調査対象者が高齢者であり、感染リスクを考慮して、2名のみにとどまったなど当初のタイムスケジュールより遅れている。 ただし、インタビュー調査やインタビュー分析が出来ない時期を利用して、新聞記事のデータ化作業を更に進めるなど時間の有効利用に努めた。 新聞記事のデータ化資料は、インタビュー被験者への提示結果から、資料自体に歴史的価値があるとの意見もいただき、当時の文部省、高校長、受験生、受験生父兄、一般社会等のステークホルダーが高校入試をどのように捉えていたかを時系列的で多層的に捉えるうえで非常に有用なツールであると考えている。 本研究の申請当初はコロナウイルス感染症により研究成果公表のための調査に遅れが出ることは想定していなかった。次年度はコロナウイルス感染症の状況も確認しながら、インタビュー調査を続行し、一定のインタビュー蓄積を得た段階で、論文や書籍等で研究成果を公表することを検討している。
|
Strategy for Future Research Activity |
今般のコロナウイルス感染症による自粛等の関係で、今後も新規の資料調査や意見交換は制限されることが想定されるが、次年度については、前年度までに収集した資料の整理(データ化)をとともに、インタビュー調査を中心に分析を進める。 そうした状況の下で、資料中心の分析になることが想定されるものの、それらの分析結果をもとに、旧制高等学校時代から指摘され続けてきた入試自体の問題や当時のステークホルダーの入試観を明らかにすることを試みる。 また、今回の研究期間が、2021年度からの大学新入試の実施と重複する点も踏まえ、今回の入試改革で起こった事象と、当時の旧制高等学校入試で起こった事象の相違等についても引き続き検討をすすめる予定である。
|
Causes of Carryover |
当初、収集資料の文字起こし及び意見交換者への謝礼のため、人経費・謝金を計上していたが、資料収集の文字起こしは自分で行うこととしたため発生しなかった。また、謝金については意見交換者から辞退の意向があり支払いをしていない。また、書籍等の購入も想定していたが、資料収集のために各地の資料館等を訪問する際に書籍の必要個所を複写等で収集することが可能であったため、購入には至らなかった。 今後、インタビュー調査のための出張や収集資料の出版等に向け次年度使用を予定している。
|