2019 Fiscal Year Research-status Report
大学教育後援会の事業と成果を指標として実施する大学評価の可能性をめぐる実証的研究
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19K02855
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
大川 一毅 岩手大学, 評価室, 教授 (20267446)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
嶌田 敏行 茨城大学, 全学教育機構, 准教授 (00400599)
大野 賢一 鳥取大学, その他部局等, 教授 (90314608)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 大学教育後援会 / 大学評価 / 学生支援 / 大学後援組織 / 学生の保護者 / 大学の信用 / 成果指標 / 外部評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、大学の価値を新たな側面から認識する「成果指標の策定」と「それを活用した大学評価の模索」を目的とする。これにあたっては保護者を主たる構成員とする「大学教育後援会」を研究対象とし、その事業や活動を明らかにしながら、これら実績を指標化して大学の評価要素とすることを試み、各大学で活用可能な新たな大学評価の方途提案を企図する。こうした本研究では3箇年3ステップによる計画を立案している。 2019年度の「ステップ1」では、2018年度における国公私立784全大学について、webサイト等から「大学教育後援会」の設置状況と事業に関する情報を収集し、データベースを構築した。その結果、2020年3月現在、わが国大学の75%強である593大学で大学教育後援会が設置されていることを確認した。国立大学では約70%、公立大学では約85%、私立大学では75%の設置である。教育後援会の事業としては、学生の学業・課外活動・福利厚生・就職・資格試験などの支援、施設設備の助成等があった。これら発見事実から、大学教育後援会は、より良い学生生活の環境づくりに向けたサポートに機能している状況を確認した。特に大学が直接関与しにくい領域の支援を担っていることが明らかとなった。 「ステップ1」では、総数533の全国大学教育後援会の会長、もしくは役員に回答依頼する「活動状況アンケート」も企画策定した。ここでは、組織の設置年や会員数・予算規模といった基礎調査を始め、組織の具体的事業・大学からの期待・今後の展望と課題など運営面の調査、ならびに役員就任の理由・背景といった意識調査も設問に含めた。このアンケートでは、2020年現在において世界的に蔓延する新型コロナウィルス感染症に対し、大学教育後援会が学生支援にどう取り組んでいるかも緊急調査する。アンケートはオンラインによる回答の体制を整え、2020年5月に実施する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の2019年計画とする「ステップ1」では、①大学教育後援会の設置状況、及び後援会事業の現況について、webサイト等から最新情報を収集蓄積し、データベースを構築・更新すること、②大学教育後援会について、web調査では把握できないさらなる具体把握に向けて、全国アンケート調査の実施企画と準備を進めること、の2点を研究計画目標とした。 本研究課題の進捗状況として、①については、2018年度における国公私立784全大学(文部科学省「平成30年度 全国大学一覧」掲載大学)を対象として、ホームページ等から、大学教育後援会の設置状況と現況を確認した。これにあたっては、ホームページに掲載されている会則・規程等を検証し、それぞれの組織目的、事業、会員、沿革、についての情報を収集して整理分析を行い、データベースを構築した。あわせてホームページや会報等に掲載されている「会長挨拶」から、各組織の沿革や特性、今後の計画、組織が直面している課題、等についての記事を収集し、そのテキスト分析も行いながら、組織の現況を理解していった。 これら内容詳細については、日本高等教育学会第22回大会(金沢)で報告した。 ②については、①で調査・確認した総数593の大学教育後援組織の会長、もしくは組織役員に回答協力依頼をする「大学教育後援会活動状況アンケート」の具体的準備を完了し、オンラインによる回答体制も整え、2020年5月に実施するはこびとなっている。 以上のことから、事業計画に照らし、概ね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策について、2020年度は「ステップ2」の局面として、大学教育後援会の会長(もしくは役員等)を対象とした全国調査を実施し、その分析結果を学会大会、または論文等で報告する。この調査分析の目的とするところは、①大学教育後援会の設置と既存事業の現況把握、②大学教育後援会のいかなる事業や成果が、大学評価に活用しうる「信用成果指標」として有効であるかの検討材料収集、等にある。このアンケートでは、2020年現在において深刻な課題となっている新型コロナウィルス感染拡大に関し、大学教育後援会がいかなる学生支援に取り組んでいるかも緊急調査し、その集計結果の情報提供に努める。この全国アンケート調査は、2020年5月に実施し、その概要は8月の日本教育学会第79回大会(神戸大学)にて報告予定である。大学教育後援会の設置状況やその組織事業の全国的現況に関しては、学術的にも報道的にもいまだ存在しないため、この調査の実施と結果報告自体が貴重である。 あわせて調査結果から先導的事例を選出し、訪問調査を行う。 これら研究事業が順調に進行すれば、最終年度(2021年度)の「ステップ3」にて、これまでの調査分析結果を踏まえ、大学教育後援会のいかなる事業やその成果が、大学評価指標となりうるのかの具体的検討を進める。さらに、ここで策定した指標について、自己点検評価、認証評価、国立大学法人評価、外部評価等での援用方途を考察する。これにより、大学の価値を新たな側面から認識する成果指標の策定と、これを活用した大学評価のありかたの模索としたい。ただし、新型コロナウィルス感染拡大状況の懸念により、研究計画に支障を及ぼす懸念があることも付記しておきたい。
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Causes of Carryover |
2019年度の未使用は210,370円となった(3名の研究者総額)。その理由として①2019年度の2月及び3月に予定していた訪問調査について、新型コロナウィルス感染症の全国拡大のために、実施を延期したこと、②2020年度当初に実施予定のアンケート調査に関わる策定経費(2019年度事業予算)が、当初予定より少額で済んだこと、の2点による。 これら未使用金については、2020年度にあらためて実施する訪問調査に充当する。また、2020年度5月に実施するアンケート調査において、当初の計画経費に不足が生じた場合に充当する。 なお、2020年度に計画する訪問調査は、新型コロナウィルス感染症の拡大状況次第によって、再度予定の変更を余儀なくされる懸念もあることを付記しておく。
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Research Products
(1 results)