2020 Fiscal Year Research-status Report
Japan-Korea comparative study of the law, system, administration and finance on the progressive introduction of free education at higher education
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19K02864
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Research Institution | Osaka Seikei University |
Principal Investigator |
渡部 昭男 大阪成蹊大学, 教育学部, 教授 (20158611)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 給付型国家奨学金(韓国) / 学生負担学費半額化(韓国) / 大学入学金廃止(韓国) / 青年福祉施策(韓国) / 地方国公立大学優先的無償化論議(韓国) / 高等教育財源安定的確保論議(韓国) / 教育無償化・漸進的無償化論議の進展(日本) / 教育費支援情報に係る自治体広報(日本) |
Outline of Annual Research Achievements |
2年次には以下の4つの作業を進めた。 【韓国研究】コロナ禍で困難となった訪問調査に代えて、韓国研究者に関連論考の寄稿を依頼した。その結果、①韓国の登録金負担の軽減(漸進的教育無償化運動)の沿革、②韓国の大学の登録金負担の緩和政策、③ソウル市が実施する大学生・青年支援政策、④「半額登録金」について国会にて取り上げられた争点と議論、⑤文在寅政府の大学登録金政策とその評価、⑥コロナ事態による韓国の大学授業料返還運動、⑦大韓民国国家奨学金に関する考察、⑧大学登録金の負担緩和のための韓国政府の政策的努力及び関連法律の変化、⑨韓国の高等教育の漸進的無償化関連法制整備現況及び特徴、⑩韓国の高等教育漸進的無償化と関連した政府及び地方自治体の制度運営現況及び問題点、⑪1980年代の韓国での差別的教育解消主張の再吟味:教育機会の平等の観点から、と題した11篇の寄稿を得た。それらを踏まえて、「韓国における高等教育の漸進的無償化に係る法・制度・行財政」を執筆した(投稿中)。韓国では、2012年に導入した国家奨学金の拡充拡大を核に負担軽減を進め、近年では大学入学金を廃止する(国公立2018実施、私立2022予定)に至っている。地方自治体でも、例えばソウル市では登録金半額化を含む青年福祉施策が進展している。さらに、韓国の国会では地方国公立大学優先的無償化、高等教育財源安定的確保の論議が予定されている。 【国会論議研究】日本の国会における「教育無償化」(2020第201回)「漸進的無償化」(1978第84回~2020第203回)に係る論議の経緯と特徴をまとめた。 【自治体広報研究】教育費支援情報に関する自治体広報のあり方について、渡部(君和田)容子と共同で進めた。都道府県に引き続いて、2年次は政令市・中核市についてまとめた。 【成果公表】論考等は韓国語と日本語の双方のデータを学術成果リポジトリにアップした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【日韓比較研究】コロナ禍により困難となった訪問調査に代わって論考の寄稿を依頼する方法を採ったことで、有益な論考11篇が集まった。具体的には、1993年に設立された民間の韓国高等教育研究所(大学教育研究所に2020改称)のパク・コヨン所長及び研究員3氏から計4篇、教育行政学専門のキム・フンホ教授、教育法学専門のコ・ソン教授(韓国教育法学会元会長)、自治体教育行財政専門のハ・ボンウン教授、教育学専門のキム・ソンヨル教授(韓国教育学会会長)から計4篇、他領域から民法専門のチョン・ビョンホ教授(2編)、経営学専門のホン・ソンテ教授から計3編、が寄せられた。学会の要職を務めるメンバーを含めて、多彩で多様な論考を得ることができた。そして、それらを踏まえて、本科研のテーマである「高等教育における経済的負担軽減及び修学支援に係る法・制度・行財政の日韓比較研究」を着実に進めることができた。これら11篇すべてを日本語訳して、韓国語・日本語の双方のデータを神戸大学学術成果リポジトリKernelにアップして公開した。このことによって、日韓比較研究のオープン化を促し、検討素材の共有化を図った。 【意思決定過程分析】「高授業料・低補助の国」「家族負担主義の国」といわれた日本と韓国がともに変化しつつある。その政策転換を探るにあたって、国のレベルでは国会の、地方レベルでは地方議会の、審議の分析が有益である。2年次は、韓国サイド11論考から有効な関連情報を得るとともに、日本に関しては2020年第201回国会における「教育無償化」論議の経緯と特徴を明らかにした。また、1979年に批准した国際人権A規約の「漸進的無償化」原則に係る論議の経緯と特徴を、1978年第84回から2020年第203回までの国会議事録から検討分析した。 【成果発表】学会発表3件、論文投稿5件(共著2件を含む)を行い、ウェブ上に公開したた。
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Strategy for Future Research Activity |
3年次においては、韓国研究者による論考11篇も踏まえて比較検討し、日本の研究者に関連論考の寄稿を依頼する。集まった論考を韓国語訳して、日本語と韓国語の双方のデータを学術成果リポジトリにアップする。それらを共有財産として、ウェブ会議システムを用いた共同研究会をオンライン開催する。以上を通じて、研究のまとめを行うとともに、残された課題を明らかにする。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で国内外の移動が制限されて旅費支出がなかったこと、予定していた韓国研究者の論考数篇がキャンセルとなり論文執筆謝金及び翻訳謝金の支出が減ったことが原因である。次年度には、ウェブ会議システムを使ったオンライン企画も予定しており、謝金等で使い切る予定である。
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Remarks |
研究成果を神戸大学学術成果リポジトリKernelに公開するよう心掛けている。掲載した論文2篇の他に2編(単著1篇、共著1篇)がすでにアップされている。また、韓国研究者による論考11篇についても、韓国語の原文データと日本語訳データの双方がアップされている。本研究のタイトル「高等教育における経済的負担軽減及び修学支援に係る法・制度・行財政の日韓比較研究」で検索すると「43件」がヒットする。
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Research Products
(14 results)