2021 Fiscal Year Research-status Report
Japan-Korea comparative study of the law, system, administration and finance on the progressive introduction of free education at higher education
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19K02864
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Research Institution | Osaka Seikei University |
Principal Investigator |
渡部 昭男 大阪成蹊大学, 教育学部, 教授 (20158611)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 漸進的教育無償化に係る日韓比較研究 / 日韓研究者からの論考寄稿 / 寄稿論考の日本語・韓国語版の公開 / 家族負担主義/高授業料・低補助の国からの転換 / 国会審議分析の継続 / 「現金給付+現物給付」という新たな構図 / 自治体の教育費支援施策 / 乳幼児期から思春期・青年期までの切れ目のない支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究3年次(2021年度)の主な成果は以下の3点である。 第一に、韓国側研究者からの寄稿11篇の検討を進めた。両国には憲法及び教育基本法の類似規程や批准した国際人権A規約等の法規範があり、教育の機会均等の推進、青年福祉の増進に係る運動や政策の展開が認められた。韓国では2012年以降、国家奨学金の拡大を軸に高等教育における経済的負担軽減が進み、入学金も廃止しつつあった。また、地方国公立大学の優先的無償化、高等教育財源の安定的確保の論議が提起され、コロナ非対面教育を権利侵害とみなした学生による学費返還の憲法訴願や民事訴訟が提起されていた。 第二に、日本の国会審議の分析を継続した。2020年第203 回及び2021年第204 回国会においては、高等教育無償及び大学等修学支援法に関わって、これまでと同様にコロナ禍のもとでの学びの継続のために経済的支援・現金給付の在り方が論議された。加えて、鍵用語「食糧支援」「生理の貧困」に象徴されるように、困窮した学生の日々の生活を支えるための現物給付へと議論が切迫し拡大していた。高等教育における学生支援の在り方が「現金給付+現物給付」という構図に至ったことが明らかとなった。 第三に、教育費支援に係る自治体施策について、既に公表した47都道府県、20政令指定都市、20中核市(当時60自治体から抽出)に加えて、新たに23施行時特例市のHP情報を収集・分析した(渡部容子科研との共同作業)。そして、①HP等へのアクセシビリティ、②子育て情報の提供におけるSNS活用、③就学前段階、④小中学生段階、⑤高校生・大学生段階、⑥ひとり親家庭、⑦コロナ禍対応の独自施策など7点の特徴を析出し、切れ目のない支援を妊娠・出産・幼児期から学童期さらに思春期・青年期・成人期に拡張する試み、 市区町村・都道府県・国による重層的で相補的な支援をイメージした広報のあり方を考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
韓国研究に関しては、寄稿論考11篇を日本語に訳し、韓国語・日本語の両データを神戸大学学術成果リポジトリKernelにアップした。その作業を踏まえて、渡部昭男「韓国における高等教育の漸進的無償化に係る法・制度・行財政:韓国研究者の論考11篇の検討」(『神戸大学大学院人間発達環境学研究科研究紀要』15(1)、2021.9)にまとめた。 日本研究に関しては、まず国会審議分析を継続した。そして、「『教育無償化』論議の経緯と特徴:2020年第203回~2021年第204回の国会審議から」の学会発表(日本教育学会第80回大会[筑波大学]2021.8)を行うとともに、渡部昭男「コロナ禍の高等教育における学びの継続のための学生支援の在り方に係る論議:主に2020 年第203 回・2021 年第204 回の国会審議分析から」(『大阪成蹊大学紀要』(8)、2022.2)にまとめた。 次に、自治体の教育費支援施策に係る広報検討を継続した。そして、渡部(君和田)容子・渡部昭男「教育費支援情報に関する施行時特例市の広報のあり方:漸進的無償化に係る自治体総合施策の研究(4)」(『近畿大学生物理工学部紀要』(46)、2021.10)、渡部昭男「大阪府及び府下43 市町村における教育費支援情報に係る広報のあり方」(『教育科学論集』(25)、2022.2)にまとめた。 寄稿論考を共有財産とした日韓研究者による対話と共同研究の深化は、次年度の課題として持ち越した。
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Strategy for Future Research Activity |
推進方策は以下の3つである。 まず第一に、執筆した論考の抜き刷りを関係者・関係機関に4月中には送付すべく準備を整えている。具体的には、①渡部昭男:コロナ禍の高等教育における学びの継続のための学生支援の在り方に係る論議―主に2020年第203回・2021年第204回の国会審議分析から―(『大阪成蹊大学紀要』第8号)を論考の中で会議録を引用した国会議員宛に、②渡部昭男:大阪府及び府下43市町村における教育費支援情報に係る広報のあり方(『教育科学論集』第25号)をHP情報を調査した自治体宛に送付し、活用してもらう。 第二に、日本側研究者からの寄稿を補強するためにさらに2~3人追加し、論考を12篇程度にする予定である(4~6月)。寄稿論考を韓国語に翻訳する作業は2022年度に入ってすでに2篇が完成しており、追加寄稿を含めた残る6篇については夏までに翻訳作業を終える見込みである(4~8月)。 第三に、公開した日本語・韓国語の論考を共有財産として、日韓の研究者による対話企画の第一弾「韓国における高等教育無償化に係る法制と諸方策」を6月に実施できるよう、調整を進めている。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により韓国訪問調査や日本への招聘などが困難なことから、日韓研究者からの論考寄稿の方法に変更した。寄稿の遅れ、翻訳の遅れなどにより、寄稿論考を共有財産とした日韓研究者による対話と共同研究の深化は、2022年度の課題として持ち越した。 2022年度には、寄稿謝金、翻訳謝金、関連小冊子の購入、ZOOMによる日韓対話企画に係る謝金、書類等の郵送代などに使用する予定である。
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Remarks |
韓国側研究者による寄稿11篇の韓国語・日本語データ(アップ終了)、日本側研究者による寄稿12篇の日本語・韓国語データ(アップ進行中)を神戸大学学術成果リポジトリKernelに順次アップし公開している。
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Research Products
(12 results)