2023 Fiscal Year Research-status Report
市民性と専門性の往還能力を鍛える高度教養教育の国際比較研究:医学教育における展開
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19K02894
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
山邉 昭則 自治医科大学, 医学部, 准教授 (70533933)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川越 至桜 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (20598289)
三島 千明 自治医科大学, 医学部, 客員研究員 (60888577)
大塚 理央 自治医科大学, 医学部, 客員研究員 (20924947)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | リベラルアーツ / 専門性 / 公共性 / 創造性 / 高等教育 / 医学教育 / 研究倫理 / キャリア支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、COVID-19による行動制限の緩和を受けて、海外の教育機関調査と国際学会発表を継続的に推進するとともに、国内では、初年次学生調査ならびに本研究で既に対象とした学習者、すなわち、2019年度(5年次)、2020年度(4年次)、2021年度(3年次)、2022(2年次)の追跡調査を行った。原則的に6年制を採る本邦の医師養成システム(医学科)において、医師国家試験対応に重点が置かれる6年次に至るまでの縦断調査を履行できたことは、COVID-19の影響による研究期間の延長を、むしろ肯定的な調査状況へ転換し得たものと評価される。 学生調査では、医学生を対象として、市民性と専門性の往還能力の向上に係る潜在的な学習ニーズの把握をベースに、旧態と異なる新しい時代情況を捉えたリベラルアーツの視点からの教育を行い、各種フィードバックを量的・質的に分析し、能力向上の要因について、より深い考察を得ることに努めた。学習アウトカムの一端としては、社会における自己の専門性の位置づけへの理解、社会的責任感の深化、社会と専門家の相互理解の促進、国際社会における貢献、法と倫理の遵守、課題解決における創造的アプロ―チへの会得等が挙げられる。縦断調査においては、初年次の当該学習が、大学在学中のモティベーションの向上へ肯定的影響を与えたこと、広い視野の獲得により専門家としてのキャリア観を創造的に変化させ得たこと等が示唆された。また、医師養成に直接従事する研究代表者として、医学科は他学科と比して、各学年における専門的習熟が顕著に求められる教育分野と評価されるが、各学年に応じて、より理解が深まるリベラルアーツが存在するという学習者の所感とともに、学士課程全般を通じた継続的な当該学習機会のニーズも明らかとなった。専門的習熟の進度に応じたリベラルアーツの教育デザインも、本研究課題の発展的テーマといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
所期の計画通り、本研究で得られた知見をベースとするモデル授業を試験的に開発し、国内の医学科において継続的に履行した。量的評価の各種フィードバックに加えて、学習者を対象とする半構造化面接等の質的評価も実施した。本研究が企図する教育デザインは、現代の複合的課題に対して、多角的かつ創造的に対応・解決する能力を育むことも含意しており、多職種連携・多分野協働の要素を採り入れている。医師、行政官、弁護士、メディア関係者、その他、多様な視点と職能を有する協力者を得て、相乗効果が期待される教育体制を創り、現代と未来の社会情況を捉えた教育となるよう方向づけしている。学習効果の評価について、国内外の学会で継続的に発表を行ってきた。海外では、各国の研究者、世界医師会長、UNESCO教育担当者等、国際的な教育潮流の形成に影響を有する方面と有意義な意見交換を行う機会を得た。以上をはじめ、標準的進捗で研究を遂行できたものと評価される。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年度としての2024年度は、引き続き、国内外の教育機関及び教育プログラムの先進事例分析と比較研究を行い、文化的・社会的要素も視野に入れた考察を進める。加えて、本研究期間中に生じたCOVID-19の世界的拡大も契機の一つとして浸透したAI/IoT/DX等の技術的進展も加味した教育開発の視点を新たに採り入れる。並行して、以上に基づき改訂を重ねたモデル授業を履行し、各種フィードバックを分析し、知見の体系化を進める。国内外での学会発表、論文・書籍作成、実際の教育改革への援用等を通じて社会還元を図る。本研究で中心的に扱った医師養成以外の様々な専門性を育成する教育の文脈においても活用し得る汎用性を目指す。以上をはじめ、学術と社会の発展へ寄与する研究成果の創出へ向けて堅実に取り組んでいく。
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Causes of Carryover |
2023年度は、COVID-19による行動制限の緩和・解除を受け、当初予定していた国際学会発表ならびに国内外調査のための旅費と経費を計画通り執行した。2024年度は、本研究の最終年度に当たり、研究全体を適切に完了するため、研究成果発表に係る学会参加費や文房具等の必須経費を計上し、妥当性を備えた次年度使用額が生じる計画とした。
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