2021 Fiscal Year Research-status Report
離島の課題を高専ものづくりで解決するエンジニアリングデザイン教育の実現
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19K02900
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Research Institution | Tsuruoka National College of Technology |
Principal Investigator |
佐藤 司 鶴岡工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (30300528)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | エンジニアリング・デザイン / 工学教育 / ものづくり / 地域貢献 / 持続可能社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本校専攻科「実践的デザイン工学実習」において本プログラムを導入した。実際に離島での住民の生活状況を調べながら、生活を支援するためのテーマと技術的解決方法を検討した。実施項目として①合宿に備えた課題の抽出と事前準備、②離島での合宿活動、③校内での製作活動、④プロポーザル実施および⑤本プログラムの自己点検を行った。 ①では、学科混成による4~5名のグループを5班編成した。出身分野(機械、電気・電子、制御情報、化学・生物)の混成したグループ編成とした。②では、協力教員3名とともに現地視察(1泊2日)と現地での調査製作活動(3泊4日)を実施した。製作活動と製作物の評価を引き続き校内で実施した(③)。④としては参集型のイベント実施ができなかったため、紹介動画を製作させ関係者に閲覧してもらう形とした。具体的な活動の例を以下に示す。 (1)「マイクロプラスチック(MP)の再資源化」海岸から回収したMPを資源として利用する検討を行った。赤外分光光度計や熱分析(DSC)によりプラスチックの材質分析を行った。木炭あるいはメタノールを混ぜて一緒に燃やすことで、固形燃料の燃焼温度を高めてより容易にプラスチックを燃焼する方法を考えた。 (2)「ゴミ回収ロボットの作製」 3DCADによる設計を行い、3Dプリンターで造形した部品、アルミパイプ、サーボモータを用いて5軸のアームを製作した。実際にボトルを検出しゴミとして回収するデモ機の作製を行った。 (3)「VR技術を用いた新しい観光の提案 」 観光による地域活性化を促進するために、感染防止や天候不良による現地への渡島が難しい場合でも観光を楽しむための新しい手法を検討した。動画サイトなどで映像を閲覧できるようなVR観光を提案した。 映像収集にはドローンカメラを使用しており、カメラ映像をVRゴーグル内に投影することで操縦ミスの少ない撮影方法を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度の大きな目標として離島における合宿活動を行い、班単位で課題を抽出させ解決に向けた取り組みを実施させることができた。「マイクロプラスチック(MP)の再資源化」、「ゴミ回収ロボットの作製」、「VR技術を用いた新しい観光の提案 」などのテーマに学生が意欲的に取り組み、製作物の評価についても十分な検討が見られた。「マイクロプラスチック(MP)の再資源化」では固形燃料としての利用を可能にするための効率的な燃焼方法の検討が続いた。プラスチックゴミの成分化合物を機器分析することでゴミの多くがポリエチレンやポリプロピレンであることが判明し、比較的燃焼性の優れた材質であることが分かった。ただし、途中で燃焼が停止してしまう問題があったため木炭あるいはメタノールを混ぜて一緒に燃やすことで、燃焼効果を高める工夫を行った。プラスチックを予熱して気化させるプラスチック加熱式燃焼装置の考案に至り試作品を提案した。「ゴミ回収ロボットの作製」では海岸に落ちているゴミ回収という実証実験には至らなかったが、実験室レベルで空き缶を自動的に判別し、ロボットアームで捕捉し、回収を行うことのできる試作品を稼働させることができた。ペットボトルの回収についてはまだ十分でないこと、ゴミの角度によっても捕捉の制限を受けることなどが判明し、改良すべき点も明らかになった。「VR技術を用いた新しい観光の提案 」ではシステムの満足度は概ね高く, 観光促進のツールとして活用できるとの評価であった。VR観光の利用方法としては, 普段行くことが困難である場所の観光や実際の観光の下見として活用したいとの意見を得られた。成果を知らせるために取り組み内容の動画を作製させ動画サイトから閲覧できるようにすることでプロポーザルとしての実施計画を進捗した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度に実施したテーマについては全体的に学生が意欲的に取り組んでいた。テーマの魅力、解決するための方策が学生にとってやり甲斐のあるものであったと考えている。今後も継続して取り組むべき課題が見つかった一方、離島の課題については調査の中で多くのテーマが浮上し、高専生の学習成果を発揮できるものが多く挙げられている。学生が意欲的に取り組んでいけるテーマについてその妥当性について今後も検討しながら進めていく。また、班員の構成は背景となる専門分野の異なる学生を組み合わせたもので実施しているが、テーマによっては専門分野からかけ離れているため学生の中には取り組みが難しいものも見受けられた。今後も班員の構成方針は継続するので、テーマ選定には引き続き留意する必要がある。 製作物の評価に関しては限られた学修時間内での評価内容であったが、学生による自己評価や教員からの評価だけでなく、第三者からの評価も実施し安全性や経済性の面からも評価する視点を取り入れる。ものづくりや設計に関して専門的知見のある技術者や技術士からも評価してもらう仕組みを取り入れる。
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Causes of Carryover |
学会へのオンライン参加のため旅費支払いが減小。令和4年度に現地参加型の旅費使用を予定する。
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Remarks |
佐藤司,小谷卓:内川の水質とゴミ調査報告,内川リバーサイドフォーラム,NPO 法人公益のふるさとり鶴岡 内川リバ-サイドフォーラム実行委員会,令和4年3月19日(鶴岡市)
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Research Products
(5 results)