2022 Fiscal Year Research-status Report
離島の課題を高専ものづくりで解決するエンジニアリングデザイン教育の実現
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19K02900
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Research Institution | Tsuruoka National College of Technology |
Principal Investigator |
佐藤 司 鶴岡工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (30300528)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | カリキュラム開発 / エンジニアリング・デザイン / 工学教育 / 持続可能社会 / 地域貢献 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度に実施した「実践的デザイン工学実習」における本プログラムの実施状況を確認して2022年度の実施計画を立案、導入を行った。山形県酒田市飛島における住民の生活利便性の向上や産業起こしを支援するためのテーマ設定と、技術的解決方法に至る実習プログラムを検討した。 検討項目として、①合宿実施方法と期間の再検討、②取り組む課題の抽出と解決方法に至るまでのグループワーク指導、③離島での合宿活動指導、④校内での製作活動指導、⑤プロポーザル実施および本プログラムの自己点検を行った。 ①では、学科混成による4~5名のグループ編成が前年度有効であった事から、引き続き同様のやり方とした。なお、学生の出身分野(機械、電気・電子、制御情報、化学・生物)のバランスが偏っていたため、学科混成が実現できなかった班もあったが取組みテーマを適切なものにすることで支障が生じないようにした。②、③では、協力教員3名とともに学生を引率しての現地視察(1泊2日)と現地での調査製作活動(3泊4日)を実施し現地の住民の意見を参考にしながら進めた。製作活動と製作物の評価を引き続き校内で実施した。④としては協力教員のアドバイスを受けながら機材の購入と製作、評価を行った。⑤では「環境フェアつるおか2022(2022年9月25日(鶴岡市)のイベントにおいて、学生がポスター発表と製作物の紹介を市民に向けて行い、多様な視点から意見を受ける機会となった。 具体的な活動の例を以下に示す。(1)海岸ゴミ回収装置の製作と評価、(2)海産物(魚類)を使用した名産品の提案、(3)昆布抽出液の利用、(4)無人配送システムの開発、である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度も引続き飛島で合宿活動を行い、班単位で課題解決に向けた取り組みを実施させることができた。(1)海岸ゴミ回収装置の製作と評価、(2)海産物(魚類)を使用した名産品の提案、(3)昆布抽出液の利用、(4)無人配送システムの開発、などのテーマに学生が意欲的に取り組み、製作物の評価についても十分な検討が見られた。 (1)については、砂浜の表面をすくいながら走行するシステムを作成し、走行距離とゴミ回収量のデータ収集を行った。海岸の場所により砂粒子のサイズが異なったためゴミと砂の分離を最適化するための条件設定が必要になった。(2)については島で水揚げする魚類を調べ、四季に応じて提供可能な魚の種類に対応したちくわの製造を提案した。加工に伴う時間や人数よりコスト問題も検討させる機会となった。(3)については、昆布に含まれるアルギン酸Naの効率的な抽出方法を検討した後、抽出液を化粧水として利用するため適した添加物も探索した。皮膚を仮想とする餅表面への塗布と表面形状の経時変化を追跡し保湿効果を確認した。(4)については、自動走行車に島の道路を機械学習を行い、小型荷物の運搬試験を実施した。運搬試験の実施時間帯によっては日の傾きによって影が発生するなど風景が変化したため学習が追い付かず路上から左右に逸脱した動きも確認された。赤外線カメラなど明るさの違う環境でも対応可能なシステムの必要性が指摘された。 以上の取組みについては前期間の授業において想定以上の成果が得られたと評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度に実施したテーマに対して全体的に学生が意欲的に取組み、成果も検討の十分重ねられた内容となった。島の課題解決という具体的で生活に密接するテーマであり、解決するための方策が学生にとってやり甲斐のあるものであったと考えている。離島の課題については調査の中から多くのテーマが浮上し、その中には高専学生の学習成果を発揮できるものが多く挙げられた。テーマによっては専門分野からかけ離れているため学生の中には取り組みが難しいものも見受けられたが、個々の学生が自分の貢献できる場面を探し、全体として良好なチーム運営が行えたとこも成果と見なせる。今後も班員の構成方針は継続するので、テーマ選定には引き続き留意する必要がある。ものづくりや設計に関して専門的知見のある技術者や技術士からも評価してもらう仕組みを取り入れることで短期間で効果的な実習活動が行えた。 今後の課題として、分野横断的な実習成果をどのように成績評価するか検討が要る。提案された成果の完成度を審査するのも評価の一側面であるが、グループワークや計画性、個人の貢献を定量化するにはさらなる適切な評価方法を確立する必要がある。
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Causes of Carryover |
教育補助経費として、自作テキストの校正にともなう謝礼、製作物の評価に関する審査費用を想定していたが、実施時間の合理化により当初見積額よりも低額の実績となった。また、新型コロナウイルス禍において国内移動や海外渡航ができなかったため、旅費の使用が行われなかった。これが次年度使用額の生じた主な原因である。 次年度使用額と令和5年度分の合算により、製作中のテキストの仕上げ作業や外部識者によるアドバイスの謝礼に充てたい。また、国際会議に参加して成果発表を実施する予定である。
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Research Products
(6 results)