2019 Fiscal Year Research-status Report
Team Teaching on Designing Lessons of Children with Intellectual Disability or Autistic Spectrum Disorder
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19K02928
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Research Institution | Joetsu University of Education |
Principal Investigator |
村中 智彦 上越教育大学, 大学院学校教育研究科, 教授 (90293274)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | チームティーチング / 協働支援 / 授業づくり / 知的障害 / 自閉症スペクトラム障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度では、まず、知的障害や自閉症スペクトラム障害(ASD)のある子どもを対象として、効果的なチームティーチング(TT)にもとづく授業づくりに関連する国内外の文献レビューを行った。学術論文検索サイト及び図書館での資料収集を行った。国内では、知的障害やASDが在籍する特別支援学校のTTを扱った論文は10編程度で、そのほとんどが大学紀要であった。関連する「障害」「特別(または障害児)支援教育」等のキーワードでもヒット数は少なく、我が国では特別支援学校のTTを扱う実証研究が極めて乏しい実態が明らかであった。それに対して、国外文献では、TTを含む協働支援(co-teaching /cooperative teaching)をテーマとする研究は多く報告されている。実証研究を整理したレビュー論文や論説で20編を超えていた。協働支援のモデルでは、障害のない・ある児童生徒が共に学ぶインクルーシブな教室環境において、学級担任教師と特別教育教師の2名による協働的な支援が行われている(Cook & Friend, 1995;Scruggs et al., 2007)。観察やインタビュー調査より、学級担任教師は学級全員に対する教示や授業進行の役割を担い、特別支援教師は補助的な役割を担い、プリント配布や学習準備、学習につまづく児童生徒への個別支援を行っていた。先行研究の多くは、Cook & Friend(1995)が提案した協働支援モデルの5類型を基盤としていた。類型①1名が一斉指導、1名は補助的指導と観察、②分担指導、③平行指導、④代替指導、⑤チーム指導で、教科や学習内容に即して応用されている。協働支援を効果的に機能されるためには、教師間の日頃のコミュニケーション、協働的な指導計画の立案と修正、各教師の内省や自己評価、学習目標や指導方法の摺り合わせと調整の重要性が示唆されていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度に計画していた知的障害やASDが在籍する特別支援学校の授業場面を対象とする観察による生態学的調査を実施するにあたり、予想以上に国外文献のレビューとそれにもとづく観察の観点や調査項目、手続きの整理に時間と労力を費やしてしまったこと、調査対象校への依頼手続きに当所予定したよりも一部支障が生じてしまったことから若干遅れている。2020年度は、上述した生態学的な観察調査と併せて、2021年度に実施予定である大学附属研究センターを活用する臨床研究を予備的に実施する予定である。なお、2019年度に行った文献レビューは学術雑誌への投稿を計画している。
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Strategy for Future Research Activity |
文献レビューより、協働支援は特別な支援を必要とする児童生徒と、特別支援を必要としない児童生徒双方の学習活動への参加レベルを高め、仲間の相互交渉を促す上で有効であることが示唆されている(Strogilos & Avramidis, 2016;Strogilos & Stefanidis, 2015)。一方で、実際の授業場面において、どのようにすれば協働支援が効果的に機能するのかの量的研究、介入研究が乏しい問題も指摘されている(Cook et al.,2011)。国外文献で扱われる「協働支援」の定義と実際は、我が国に見られる特別支援学校のTTそのものではなく、通常学級でのインクルーシブな教室環境を背景としているが、特別支援学校の調査研究や介入研究でも、その類型に見られる観察の観点や手続きへの活用が十分可能である。2020年度では、前年度のレビューにもとづき、2019年度に計画していた特別支援学校の授業場面を対象とした観察による生態学的調査を実施する。協力校は県内3校、富山2校程度の特別支援学校。研究代表者の学校コンサルテーション経験より、研究依頼や訪問可能で無理のない数を対象する。現在のコロナ禍の影響を踏まえて、調査期間は2021年10月~2022年2月とし、小・中・高等部の低・中・高の学級ごとに1~2日間、代表者と調査補助2名の大学院生がチームとなり、授業場面の観察調査を行う。教室内で直接観察を行う観察者が教師や子どもに働きかけを行わない非交流的観察とする。評価チェックシートを用いて、協働支援の類型にもとづくメイン・サブ教師の位置取りや動線、児童生徒や教師間のやりとりの内容を事象見本法で記録する。併せて、2021年度に実施予定の大学附属研究センターにおける特別支援学校の指導場面のシミュレーション指導を行い、TTの効果を検証する臨床研究を予備的に実施する。
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Causes of Carryover |
次年度使用が生じた理由は、2019年度当初に計画していた国内外文献のレビューの整理に予想以上の時間と労力を費やしてしまい、計画していた知的障害やASDが在籍する特別支援学校の授業場面を対象とする観察による生態学的調査の実施に関わる院生の調査補助費及び謝金、消耗品費、協力校への調査旅費が生じなかったためである。2020年度では、2019年度に計画していた観察による生態学的調査を実施するにあたり、消耗品費として音声記録用ICレコーダー、映像記録用デジタルビデオカメラ等を必要とする。新潟市、長岡市、富山県への調査旅費、院生の調査補助及び分析データ入力の謝金を必要とする。また、2021年度に実施予定の大学附属研究センターにおけるTTの効果を検証するための予備的な臨床研究を実施するにあたり、協力校への研究依頼や協議会の旅費を必要とする。
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