2019 Fiscal Year Research-status Report
盲児のためにVR触覚で形態の変化を教える教育システムの構築
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19K02929
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
浅川 直紀 金沢大学, 設計製造技術研究所, 教授 (50231874)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
和田 紘樹 金城大学短期大学部, 美術学科, 講師 (00450007)
下村 有子 金城大学, 社会福祉学部, 教授 (70171006)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 視覚障害者 / 盲児教育 / VR / 触覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では盲児のために、VR技術を触覚に応用して生き物の動きや変化を教えるシステムを構築,すなわち、オタマジャクシがカエルに変化する過程を、時間を追って安全に盲児に教えることができるような、触覚のみで動的に形態変化の認識を行えるシステムを構築することを目的とするが,その方法として,VR(Virtual Reality)技術を利用するものとした。そのための構成要素として「触覚提示」と「トラッキング」の要素が必要であり,それらの実現を含め,下記のポイントに関連した研究を実施した. (1)触覚提示のインタフェース開発:盲児が個々に使用できるように,できるだけ簡便な装置で、必要十分な触覚提示を行なう必要がある。そのための触覚提示のインタフェース装置の開発を行った.サーボモータを用いた触感の再現機構や,小型モータを用いた振動機構など,いくつかの機構を試作した. (2)ポータブルなトラッキンク手法の確立:机上で個々に使用できるように,なるべく小型の装置によりトラッキングを行うものとした.いくつかのアイディアを検討したが,小型で反応の良好なものとして画像キャプチャを応用したカメラ応用のセンサで手の形のトラッキングを試み,手の形態の把握を行うことに成功した。 (3)動的な形状のモデリング:静的に形状を提示するだけでなく,動的に形状を提示する場合には,その形状を生成するシステムが,変形やサイズの変更に柔軟に対応できるものでなくてはならない.しかし,本システムではモデリングに際しての精度向上の問題が解決せず,今年度は静的な形状提示に留まった. (4)評価:以上の要素によってシステムを試作し,実際に視覚障害者の協力を得てテストを行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)触覚提示のインタフェース開発:指先に接触感を与え,指先がある空間内で物体に接触したことを表現する装置の開発を行った.指先にサーボモータとロッドで構成される触感の再現機構を取り付け,後述のトラッキング装置との連動で接触したときにロッドが動作することによって接触感を得た.また,小型モータを用いた振動機構で実際の接触でなく,その他の刺激によって触覚代替が可能かなどの検討も行った.結果として,双方ともある種の接触感を得られることがわかった. (2)ポータブルなトラッキンク手法の確立:机上で個々に使用できるように,小型化して指先の位置を検出し,その情報を上述の触覚装置に送ることにより,擬似的に形状を表現する仕組みを考案した.ARなどいくつかのアイディアに基づき試作を行ったが,手の形態そのものを把握できる画像キャプチャを応用したカメラ応用のセンサであるリープモーションと呼ばれる小型装置において良好な結果を得ることができた.小型で反応よく手の概形の把握を行うことが可能であるが,一方精度向上の余地があることがわかった。 (3)動的な形状のモデリング:形状の表現のためには前項の手の形態の把握が重要になるが,そのシステムでは対象形状を仮想空間上でモデリングするに際しての精度向上の問題が解決せず,基本的なデータの充実を優先し,今年度は静的な形状提示についての実験に終始した. (4)評価:上記のようなシステムを試作することができたので,実際に視覚障害者の協力を得て形状の把握が可能かのテストを行うことができた。結果としては,あまり詳細な形状把握には至らなかったが,形状の存在そのものはある程度示すことができた.
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Strategy for Future Research Activity |
(1)触覚提示のインタフェース開発:指先にサーボモータとロッドで構成される触感の再現機構と,小型モータを用いた振動機構で触覚代替を与える方法について試行したが,それぞれに特徴があるため双方とも検討を続け,さらに改良を行う必要がある.また,ON/OFFだけでなく,それぞれの出力の強弱の制御が感覚に与える影響がさらに重要ではないかとの見込みもあり,その改良を行っていきたい. (2)ポータブルなトラッキンク手法の確立:手の形態そのものを把握できる画像キャプチャを応用した画像センサを用いる方法は有効であることがわかったので,さらにその利用を進めていきたいが,精度の問題を解決する必要がある.それには,手の形態の制限による拘束条件を利用してエラーを減らして精度をあげるか,対象形状のサイズを上げることで相対的な精度を向上するなど,いくつかの方法が考えられる. いずれにせよ,動的形状モデリングが可能になる程度の精度の確保を目指したい. (3)動的な形状のモデリング:対象形状の仮想空間上でモデリングに際しては何といっても上述の精度向上の問題が重要であり,その上で形状のトランジェントな変化を実現する方法が必要である.3DCAD技術などの導入で柔軟なモデリングの仕組みを構築したい. (4)評価:引き続きシステムの試作を行い,実際に視覚障害者の協力を得てテストを行いたい.今年度は静的な形状評価に終始したが,可能であれば動的な形状変化に関しても評価実験を行っていきたい.
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Causes of Carryover |
年度末近くに予定されていた学会での成果発表が新型コロナウイルスの流行により急遽中止となり,一部予定の執行が行えなかったため.なお,流行の終息の目途がついた後に適当な学会等で発表を行い,該当の成果の発表を行う予定である.
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