2020 Fiscal Year Research-status Report
学習障害児の早期対応のためのカリキュラムに基づく尺度の活用と指導効果の検討
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19K02933
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
干川 隆 熊本大学, 大学院教育学研究科, 教授 (90221564)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 学習困難 / プログレスモニタリング / カリキュラムに基づく尺度 / ユニバーサルスクリーニング / 評価 / 学習指導 / 学習障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
算数のカリキュラムに基づく尺度(CBM)を標準化するために、A小学校とB小学校の2つの小学校で、7月から3月まで月に1度、1,028人の児童について算数CBMを実施した。その結果、1年間に30から50ポイントずつ得点が上昇することが示され、プログレスモニタリング尺度としてCBMが有用であることが示された。また、CBMの-1.0SD以下の児童と担任が支援を行っている児童とは重なりが多く、CBMがユニバーサルスクリーニング尺度として有用であることが示された。 算数CBMは、標準学力検査との相関が高く、単なる計算の流暢性だけでなく算数能力全体を示している。3分間の実施時間によって、継続して学習の進捗状況をモニターできる尺度であることが実証された。 B小学校で3年生から6年生までの17名に対して、補習時間を利用して個別的な支援を実施した。この支援は、米国の介入に対する反応(RTI)の第3層に該当する。指導は、多くの児童が算数に対する苦手意識をもっているためトークンエコノミー法を用い、フラッシュカードや手順書を用いて簡単な計算を確実にできるように指導した。その学習の進捗状況についてもCBMを用いてモニターした。その結果、8人の児童で得点の上昇が見られ、その多くが低学年の児童であった。したがって、早期に学習のつまずきのリスののある児童を特定して、その児童にあった指導を実施することができれば、その後の学習のつまずきを改善することができることが実証された。高学年になると算数のつまずき方が複雑になり、週に1時間の補習時間では指導の限界があった。 さらに、学習障害として診断を受けている児童に対して、算数CBMと視写CBMを用いて学習の進捗状況についてモニターを実施した。その結果、対象児の成績のばらつきが多いが得点が上昇すること、CBMが指導の妥当性の実証的なデータとなることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、昨年度に続いて2校の小学校の協力を得られ、1,000人を超える児童のデータを収集することができた。これによって、算数CBMの標準化に向けたデータを得ることができた。また、B小学校の協力を得て対象児を抽出する形で個別的な指導を実施することができ、低学年の児童の中には定型発達の児童にキャッチアップする児童も見られた。この結果は、米国の介入に対する反応(RTI)モデルに基づいて、特別支援教育に照会される前の通常の学級での個別的な指導の重要性について重要なデータを提供するものと考えられる。 さらに、学習障害と診断を受けた児童についても算数CBMと視写CBMのデータを継続して収集することができており、指導法の有効性を裏づけるための従属変数としてCBMを用いることができるであろう。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでのデータに基づいて、算数CBMの標準化を図り、得られた知見を通常の学級のアセスメントとして用いるために、実施手続きや採点方法、評価基準等について教員にもわかりやすい情報の提供が必要である。 また今後もB小学校の協力を得て、ユニバーサルスクリーニングとして学習につまずくリスクのある児童を早期に特定し、RTIの第3層に該当する指導を実施して算数CBMのプログレスモニタリング尺度として用いることによって、尺度の有用性と特性にあった指導の妥当性について検討する。 さらに、大学での学習支援教室での学習障害等の診断を受けた児童を対象に、認知特性にあった指導を実施し、その経緯をCBMを用いてモニターすることによって、尺度のプログレスモニタリングとしての有効性と、指導の妥当性について検討する予定である。
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Causes of Carryover |
データの分析と入力のために補助員の雇用を予定していたが、新型コロナウイルス感染予防のため協力校で予定のデータ収集ができなくなってしまったため、当初予定していた回数を実施することができず、結果として予定していた人件費が低くなってしまい、次年度使用額を生じた。 次年度には、この額を加えた直接経費を再配分し、研究を実施する予定である。
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Research Products
(5 results)