2020 Fiscal Year Research-status Report
自閉スペクトラム症における学習困難の神経科学的解明と介入法の提案
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19K02943
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
加賀 佳美 山梨大学, 大学院総合研究部, 講師 (20436877)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲垣 真澄 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 知的・発達障害研究部, 客員研究員 (70203198)
軍司 敦子 横浜国立大学, 教育学部, 教授 (70392446)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 限局性学習症 / 自閉スペクトラム症 / 脳磁図 / 事象関連磁場 / 紡錘状回 |
Outline of Annual Research Achievements |
自閉スペクトラム症(ASD)では、そのばらつきの多い認知特性から就学後に学習のつまずきを示す例も少なくない。特にASDに特異的読字障害(発達性ディスレクシアDevelopmental Dyslexia :DD)が併存する場合があり、特異的な視覚認知特性が学習困難をもたらすというDD単独例とは異なる複雑な病態生理的背景が存在する可能性が考えられる。本研究では、ASDの特殊な視覚認知機能に着目し、ASD特有の読字障害の病態を明らかにし、学習困難状態の支援に役立てることを目的とする。 2020年度は、2019年度に作成した視覚認知特性を反映した漢字刺激課題を用いて、定型発達小児被験者および、学習障害児のデータの解析を行った。課題は視覚提示による漢字課題。無音動画を中心に提示し、右視野に漢字熟語を提示した。漢字は2文字の有意味単語、無意味単語、非字単語(有意味単語、無意味単語を変化させた2つの非文字の組み合わせ)を500msec提示し、刺激間隔を1000msecとし、それぞれ160回刺激を提示した。被験者には、中心の無音動画を注視するよう指示し、右視野の漢字は無視するように配慮した小児例においても成人と同様に、刺激提示より120mec付近に後頭極で高く出現するM1と紡錘状回170msec付近で出現するM2の二つのピークを認めた。波形上では、定型発達児に比べて、M1、M2潜時の延長や振幅の低下を認める例があった。しかし、各個人のばらつきが多かったことから、小児のMEGデータは、頭が小さく計測機器に合わないなどの計測上のアートファクト等の可能性があり、データの再解析が必要となった。現在データの再解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2019年度に作成した課題を用いて、定型発達児(TDC)、限局性学習症(DD)、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如多動症(ADHD)、それぞれの併存群にわけ、データ収集を行う予定だった。これまでの研究は順調だったが、2020年4月に、主任研究者が、別の研究機関に移動することになった。当該研究機関ではMEGの設置がなく、事実上MEGのデータ収集が困難となった。あらたに脳波や近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)を用いた課題に変更して計測を行う予定だったが、Corvid19の世界的流行に伴い、日本でのヒト研究の自粛傾向があり、TDCや患者群のデータをとることが難しい状況となっている。これまで撮りためていた小児データの再解析を行うこととしたが、全体的には研究は遅延している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の対策としては、MEGを用いて行っていた小児データ(定型発達児20例程度、限局性学習症児10例程度)について、解析方法を見直し再解析を行う。解析には共同研究機関などの協力を仰ぐ。また新たに作成した脳波および近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)を用いた課題の被験者とくに定型発達児のデータを増やしていきたい。Corvid19による制限が現在も続いており、定型発達児の計測が難しい状況は続いているが、発達障害群のデータ収集を中心に行っていく。データ収集が困難である場合は、共同研究機関(地域の療育センターなど)にリクルートを依頼する予定である。同時に定型発達児のリクルートも必要であるが、こちらも自粛期間が終了した後、有料ボランティアを募集する。自粛期間の延長によっては、来年度に繰り越される可能性があるが、症例群と対照群については並行してデータ収集していく予定である。
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Causes of Carryover |
Covid19パンデミックのため、特に脳波検査などが実施できず、被験者謝金を使わなかった。また学会参加費などがWeb参加のため減少していることもある。検査方法を変更したこともあり、脳波や生体シグナルなどの計測備品の購入、被験者謝金、データ解析費用などに使用していく予定である。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Executive dysfunction in medication-naive children with ADHD: A multi-modal fNIRS and EEG study.2020
Author(s)
Kaga Y*, Ueda R, Tanaka M, Kita Y, Suzuki K, Okumura Y, Egashira Y, Shirakawa Y, Mitsuhashi S, Kitamura Y, Nakagawa E, Yamashita Y, Inagaki M
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Journal Title
Brain Dev
Volume: 42
Pages: 555-563
DOI
Peer Reviewed
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