性差から紐解く定型発達－非定型発達における実行機能の連続性と非連続性

2021 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 19K02947
• Research Institution: Yamagata University
• Principal Investigator: 大村 一史 山形大学, 地域教育文化学部, 教授 (90431634)
• Project Period (FY): 2019-04-01 – 2023-03-31
• Keywords: 実行機能 / 発達障害 / 個人差 / 実験系心理学 / 脳・神経

Outline of Annual Research Achievements

本研究課題では、発達障害の示す認知行動特性の傾向を実行機能のプロフィールとして描き出し、性差を発達障害の質的要因の一つとして捉え、行動指標（行動データ）と生理指標（事象関連電位データ）の組合せによって検討している。本年度は、新型コロナウイルス感染症の影響継続や水漏れ被害によるシールドルームの全損が生じたことにより、実験データの取得が困難であった。そのため、新型コロナウイルス感染症拡大以前に取得していた時間学習を伴った時間判別課題のデータ解析に注力した。これまで実施した解析を広く見直し、解析方法の再検討および周波数解析の追加を行った。
これまでに実施した時間判別課題の解析において、事前に学習していない時間間隔と学習した時間間隔の判別において、学習した時間間隔を正しく判別する場合には、学習していない時間間隔を正しく判別する場合よりも、判別時に惹起するP3と正答フィードバック時に惹起するReward Positivityに大きな振幅が認められることがわかってきた。特に、男性よりも女性が大きな振幅を示すという性差の存在を確認することができた。この振幅が衝動性傾向および自閉性傾向に修飾を受けるかどうかを検討したところ、衝動性傾向のみと関連する傾向が示唆された。この従来の加算平均による解析に加え、高次認知機能に関連するとされるガンマ帯域反応（30-80Hz）を対象とした周波数解析を開始した。現在も周波数解析は継続中であり、学習した時間を正しく判別できた場合に出現するガンマ帯域反応が、性差や衝動性傾向の影響をどのように受けるのかを検討していく予定である。

Current Status of Research Progress

4: Progress in research has been delayed.

Reason

本年度も新型コロナウイルス感染症の影響が継続し、年度前半はシールドルーム内の密となる環境下での人を対象とした脳波計測を伴う心理生理実験を実施できなかった。さらに、年度後半に実験を再開して間もなくの年末に上階からの水漏れ被害が発生し、脳波計測に必須のシールドルームが全損してしまったため、これ以降の実験データの取得が一切不可能となった。そのため、前年度同様に、本年度も取得済みのデータの解析と解析方法の再検討および追加のみに注力せざるを得なかった。

Strategy for Future Research Activity

厳しい状況ながらも、取得済みのデータ解析と解析方法の再検討を進めることはできた。今後は、速やかにシールドルームの復旧を急ぎ、新型コロナウイルス感染症対策に努めつつ実験を再開することを目指す。引き続き取得済みのデータ解析を進めるとともに、さらなる実験課題の精緻化と高度な解析方法のスキル獲得を中心に行う。

Causes of Carryover

新型コロナウイルス感染症とシールドルームの水漏れ被害の影響により、実験の進捗に大きな支障があり、予定していたほど研究対象者に支払う謝金の支出が生じなかった。また成果を発表するための十分な実験データの取得が進まなかったため、学会参加が見送りとなり、予定していた旅費の支出も発生しなかった。以上2点が、今年度の助成金に余剰が生じた理由として挙げられる。次年度に繰り越した余剰分は、シールドルームの復旧に伴う実験環境の整備や研究対象者への謝金などに充当する予定である。