2019 Fiscal Year Research-status Report
人工内耳装用児の音韻意識の発達とエピソードバッファの関連
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19K02949
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Research Institution | Tsukuba University of Technology |
Principal Investigator |
長南 浩人 筑波技術大学, 障害者高等教育研究支援センター, 教授 (70364130)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
澤 隆史 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (80272623)
濱田 豊彦 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (80313279)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 人工虹装用児 / 音韻意識 / エピソードバッファ |
Outline of Annual Research Achievements |
読み書き能力の発達が健聴児と比較して不十分である聴覚障害児の音韻意識の発達の検討は重要である。これまでの研究では、聴覚障害児の音韻意識の形成には、聴覚的な情報の利用に加え、視覚的な情報による音韻形成が確認されている。そこで本研究の目的は、人工内耳装用児の音韻意識の発達の個人差について、聴覚的音韻情報と視覚的文字情報の統合能力という心理学的概念に着目し、これをワーキングメモリのコンポーネントの一つであるエピソード・バッファの機能から明らかにすることとした。このため、人工内耳装用児を対象として主にエピソード・バッファの機能を測定する課題と音韻分析課題及び文字習得に関するテストを実施し、これらの関連性を分析する。本研究により、人工内耳装用児の音韻意識の発達にエピソード・バッファという、これまで検討されてこなかった心理学的概念の関与を明らかにすることができ、音韻意識指導法に新たな視点を提供できるものと考えた。 研究の初年度は、聴覚障害児用エピソードバッファテストの試作を行った。刺激材料には、Kolfer(2017)を参考にしたテストを用いたが、床効果が観察された。そこで、丹野・千川(2017)を参考にしたテストを新たに作成した。対象児は、特別支援学校(聴覚障害)に在籍する幼稚部幼児と小学児童であった。その結果、データの正規性が確認された。今後、対象者を増やして、聴覚障害児用エピソードバッファ測定尺度の検討を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の初年度の目標は、聴覚障害児用エピソードバッファテストの試作であった。Kolfer(2017)は、9つのマスの中に点や数字、文字を配置した4枚のカードを提示し、数を少ない十に並べ替えたうえで、最後に文字を再生させるなど、認知的な負荷の高い課題を用いた研究を行った。本研究でも、同課題を用いたところ、床効果が観察されたため、課題の再検討を行った。丹野・千川(2017)は、図形を用い、また刺激に用いた言葉も色を表す言葉など、聴覚障害児が習得に困難を伴わないレベルの者であったため、エピソードバッファを測定するのに適切であったと思われる。聴覚障害児を対象としたエピソードバッファテストは、我が国には存在せず、聴覚障害児の心理的現象を測定する新たな尺度を作成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、概ね計画に従った、研究が行えたが、実施を予定した特別支援学校(聴覚障害)に訪問することができなかった学校もあり、今後は、今年度行った研究の対象者数を増加させる必要がある。桑手、音韻意識検査、エピソード・バッファ検査、ひらがな読み書き検査、音韻ループの能力の検査と視空間スケッチパッドの能力の検査を行い、エピソードバッファのテストの結果の関連性を検討する。
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Causes of Carryover |
実験を計画していた複数の特別支援学校(聴覚障害)に訪問ができなくなったため。
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