2019 Fiscal Year Research-status Report
根拠に基づいた合理的配慮の提供プロセス-ICT九州モデル(仮称)の開発と普及-
Project/Area Number |
19K02955
|
Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
佐藤 晋治 大分大学, 教育学部, 教授 (90323237)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堺 裕 帝京大学, 公私立大学の部局等, 教授 (40439576)
阿部 敬信 九州産業大学, 人間科学部, 教授 (90580613)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | ICF大分モデル / 合理的配慮 / 建設的対話 / 相互理解 / 合意形成 / 個別の教育支援計画 / 環境因子 / 活動と参加 |
Outline of Annual Research Achievements |
先行研究を概観し、ICF大分モデルの位置づけの検討と合理的配慮の概念分析を行った。その結果、学校教育において求められる「合理的配慮」の提供とは,本人の「意思の表明」から始まる「事後的」「個別的」「対話的」性質をもつもの(川島,2016)であり、それゆえに「建設的対話」により「相互理解」を深めて「合意形成」を図ることが、その本質であると考えられた。そして、学校教育においては、合理的配慮提供の出発点となる「意思の表明」を育むことが、最も求められることとなる。学校と本人・保護者が対話を行うことにより、「意思の表明」が引き出され、それによって「合意形成」が可視化されていく。そのためにICFが活用されるべきである。 もともとICFは構成する各要素がICF関連図として図示されていること、この特性を生かした活用がされてきたことが明らかとなった。このことを踏まえて、これまでに文献等で提示されてきたICF関連図による「合理的配慮」の提供について、改めて検討した。 「ICF大分モデル」の改善を図るために、福岡県立筑後特別支援学校における個別の教育支援計画の様式の開発や運用を通して得られた知見を検討した。ICFに基づいた個別の教育支援計画筑後特別支援学校版は、ICFの考え方に基づいて開発された個別の教育支援計画の様式である。合理的配慮を明記する欄も設けられており、個別の教育支援計画作成プロセスのなかに位置づけられている。個別の教育支援計画作成の手順として、活動と参加に関する本人と家族の希望・夢と実態に基づいて、活動と参加の目標を立案し、目標達成のために環境因子をどのように整えていくかを合理的配慮の3観点11項目の視点から考えていくようになっている。この支援計画は、年に4回の更新が可能であり、年度当初の家庭訪問や毎学期ごとの個別懇談会において確認・見直しをするなかで、合意形成が図られていく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた大分県内の小、中学校等におけるICF大分モデルの活用状況に関する調査を行うことはなかったが、ICFに関する先行研究の概観と合理的配慮の概念分析を行った。またICFを個別の教育支援計画に位置づけている好事例として筑後特別支援学校における実践に関して文献と協議に基づいて、ICF大分モデルとの対比を行った。その結果、ICF大分モデル自体を修正するのではなく、ICF大分モデルの学校教育における使用の実際を明確かつ簡潔ものとして手順化する必要性が示唆された。このため、1年目の到達点であるICF大分モデルの改善点を明確にすることは達成できたと考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
①1年目の成果を日本LD学会における自主シンポジウム(2020年10月、於大阪)において議論する。 また、ワークショップを開催し、②ICF大分モデルの学校教育における使用の実際に関する明確かつ簡潔な手順化を行う(ICF九州モデル(素案)の作成)、③小、中学校教員(研究協力者)数名に対してICF九州モデル(素案)の学校現場への適用に関する技術講習を行う。 さらには、④ICF九州モデル(素案)の学校現場への適用と意見聴取を行う。⑤引き続きICFを活用した優れた教育実践例を収集する。
|
Causes of Carryover |
日本発達心理学会第31回大会(令和2年(2020年)3月2~4日:大阪で開催)に参加する予定だったが、コロナウイルス対策で「大会は成立したものとするが,開催期間に会場には参集しない」という措置が取られたため、費目「旅費」の使用がなされなかったため次年度使用額が生じた。これについては、次年度の学会参加のための「旅費」として使用する計画である。
|
Research Products
(3 results)