2019 Fiscal Year Research-status Report
読み困難リスクの早期アセスメントと支援方法に関する研究
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19K02957
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
雲井 未歓 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 准教授 (70381150)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 学習困難 / 学習障害 / 平仮名の読み / 音韻操作 / 構音 / リスク要因 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、読みの学習困難リスクを幼児期から小学校低学年の段階で評価する方法と、それに基づいた介入(支援)の効果を明らかにすることを目的としている。今年度は主に(1)年中および年長幼児における平仮名の読みの獲得と構音及び音韻操作課題の関連、(2)構音のスクリーニング評価に関する検討を行った。(1)については、認定こども園の園児116名(年中児57名、年長児59名)を対象に平仮名単音(15種)の読みテストと、構音課題、音韻分解/抽出課題、数唱課題、語彙検査課題を実施し、課題間の関連を検討した。その結果、音韻抽出課題と音韻分解課題の成績は、平仮名読みとの間に比較的高い相関を示した。構音課題は、音韻抽出課題との相関を示した。さらに、平仮名読みの正答数13以下のケースは、構音課題で1以上の誤りがあった場合にオッズ比が1.7を示した一方、音韻分解課題の得点が平均以下であった場合のオッズ比は6.1、音韻抽出では16となった。これらから、音韻抽出課題は平仮名読みの習得に対するリスクとして関与する可能性が示唆された。また、構音課題については、音韻操作の獲得に関与することが推測された。一方、本研究の構音課題は、構音の臨床検査課題50語から20語を抽出したものを用いた。この20語の妥当性について確認する必要があるため、(2)では機能性構音障害の症例に実施された構音の臨床検査課題の結果について分析した。その結果、20語のみを抽出して分析した結果は、全単語の分析結果と類似の特徴を示した。また、20語中の構音の誤り度数から全単語のそれを説明する有意な回帰式を得ることができ、妥当性が確認できた。さらに、(1)の対象幼児のうち構音の誤りを複数示す年長の事例に、機能性構音障害事例と類似の特徴を認めた。これらより、本研究の構音課題による評価は、構音のスクリーニング方法として利用できる可能性が高いと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の検討では、幼児における平仮名の読みの習得状況の基礎的データを収集・整理した。この中で、音韻操作課題と平仮名読みの達成との関係を示唆する結果を得ることができた。今後、対象児を追加して詳細な分析を行うことで、信頼性の高い基準値が得られると予想される。このことから、研究計画の検討1「幼児・低学年児の音韻操作の低成績とひらがな読みの関係」の主要部分について、課題達成への見通しが得られたと指摘することができる。また、構音のスクリーニングに関する検討では、臨床検査課題と比べて少ない語数で構音獲得の実態把握が行えるようにした。特に結果の妥当性が確かめられた点は、検討2「音韻意識の発達と構音の発達との関連」において信頼しうる結果を得るための基礎が得られたものと指摘できる。検討3「音韻スキルと平仮名読みへの定期的な介入」については次年度以降に着手する予定としているが、小学2年生と3年生を対象にした平仮名単語の読みの流暢性の支援は既に実施し、介入後における流暢な読みの促進を多数例で認めた。効果が明瞭でなかった児童において、音韻スキルの支援効果を検討することは重要と考えられ、検討3の課題と位置づけが具体化されたところである。以上のことはいずれも、研究課題全体の推進に寄与するものであることから、頭書のとおり進捗状況を判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の結果に基づき、次年度に行うべき課題としては、(1)幼児と小学校低学年児における平仮名の読みの獲得と構音及び音韻操作課題について、引き続き調査を行い、基準値の作成を行うこと、(2)平仮名読みの獲得プロセスとリスク要因の分析を行い、リスクの早期把握モデルを構築すること、(3)幼児・小学低学年児を対象とした音韻操作課題の支援教材を作成し効果検証に着手すること、の3点が挙げられた。(1)については対象児の増加が必要であるが、当初予定した園の他にも新たに協力先を依頼し、事例数を十分に確保する。また、小学校低学年児については紙媒体による課題を用意する必要があるが、作成にあたり、幼児の個人差に関する分析結果を考慮することで、個人差への感度を高めるようにする。(2)については(1)の調査に基づく分析を主とするが、分析ソフトウェアを作成して多数例の解析を効果的に行えるようにする。(3)では特に小学校での支援実施が課題であるが、これまでに支援を通じて協力関係ができている学校に依頼し、緊密に連携を取りながら進める予定である。特に、2020年度は新型コロナウイルス感染症への対応で協力校の行事予定に変更等が生じる可能性もあるため、実施方法には複数のパタンを用意し、柔軟に対応できるように準備する。
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Research Products
(7 results)