2021 Fiscal Year Research-status Report
幼児の談話能力発達評価法の作成と言語発達支援への応用
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19K02958
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Research Institution | Teikyo Heisei University |
Principal Investigator |
瀬戸 淳子 帝京平成大学, 健康メディカル学部, 教授 (70438985)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秦野 悦子 白百合女子大学, 人間総合学部, 特別研究員 (50114921)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 幼児期 / 談話能力 / 発達評価 / 談話の組織化 / ナラティブ |
Outline of Annual Research Achievements |
幼児期後半から学童期にかけて発達する談話能力の発達プロセス、評価の方法について検討するために、作成した課題をもとに、4歳から6歳児を対象に調査を実施し、課題ごとの分析を行なってきた。標準的な発達基準値の確定には、さらに幼児期のノーマルデータの集積が必要であると考え、2019年度調査に続き、追加調査の計画を立てていたが、2020年度、そして2021年度も、新型コロナ感染の拡大の影響を受けて、追加調査は実施することができなかった。 分析については、これまでの調査データをもとに、3つの課題について分析した。1)「事象系列の語り」について:初期は子どもによって経験の中での事象の切り取り方が多様であったが、次第に、個別性の高い事象についての語りを含みながらも、一般的な事象系列を中心とした語りへと発達することが示された。2)「状況絵の語り」について:出来事をどのように組織化し意味づけるのかという構成側面と、他者にどう伝えるのかという行為側面を、状況の「セッティング」、人物の「言動」、人物の言動と心的状態との「因果関係」の言及から得点化した。その結果、語りの組織化は6歳以降上昇したが、特に3課題のうち2課題が、年齢による語りの組織化についての識別性が高いことが示された。3)文の復唱能力について:文復唱の12課題は課題によって難易度が異なり、文復唱能力の識別性が高いことが示された。また、文復唱得点は、PVT-R語い発達検査、KABC-Ⅱの語彙尺度の検査結果と暦年齢の影響を除いても弱い相関があることが示され、別の言語発達指標として利用可能であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2019年度に調査に引き続き、追加調査を実施し、データを集積する予定であったが、2020年度、そして2021年度も、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、幼稚園での調査を実施することができなかったことで、研究が遅れている。2021年度は、これまでの基礎調査をもとに、日本心理学会第85回大会と日本発達心理学会第33回大会で発表した。2022年度、可能であれば、追加調査を実施して研究を遂行したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
1.談話能力の発達過程の分析:引き続きこれまでに集積したデータをもとに分析を進める。談話能力評価のための4種の課題に関して、課題ごとの評価視点、全課題を通した統一の評価視点を明確化し、談話の組織化と言語知識(語や統語の複雑さ等)に関する分析を行う。そして、年齢群ごとの発達様相を明らかにしながら、談話能力の評価指標作成に向けて、評価に使用する課題の選定、それぞれの課題において有効な発達評価指標を確定し、課題間の発達の相互関係についても分析する。また、聞き手から引き出される力動的な談話能力について把握するため、これまで収集されたデータの中から、聞き手の反応によって引き出された語りを事例的に抽出する。 2.言語的知識との関係分析:上記で評価された談話能力と、語彙などの言語能力(PVT-R絵画語い発達検査、K-ABCⅡの語彙尺度課題、文復唱課題の結果)と関係があるかを分析する。 3.追加調査を実施する:新型コロナ感染状況を見て、可能であれば、幼児の追加調査を実施しデータを集積する予定である。また、特別支援ニーズ児にも同様の調査を実施しデータを集積する予定である。しかし、幼児の新型コロナウイルスの感染者数が増加しており、調査実施について施設側の許可が得られるか、現状としては不明である。調査が難しい場合には、これまで収集したデータをもとに分析を進める。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、予定していた調査ができなかったために、調査関連の費用(調査のための旅費、人件費、謝金、印刷費、会議費)、研究交流のための旅費等の未使用額が生じた。 今年度の研究費の使用計画は以下のとおりである。 物品費約35万:資料分析、編集作業のためPC関連・周辺物品の購入、書籍の購入予定。旅費約15万:調査のための旅費、および研究成果公開、および関連する研究情報収集のための学会出席のための旅費として使用予定。人件費・謝金約35万:調査の補助、調査の録音録画記録の文字化と調査資料の入力・整理の補助を行う研究補助者への謝金として使用予定。研究成果報告書作成費約40万。談話能力評価用キット作成費約20万使用予定。その他約10万:会議費、調査や報告書のための印刷費と通信費(切手類)等に使用予定。
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